異能の責任
「おい涼風ぇ。見ろぉ。ここに科学者さん達が3人いるだろ?」
ほとんど固まって動かずの俺に向かって鉄くず野郎はそこら辺から逃げ惑う人々の中から異能団に関連のある科学者をとっ捕まえて俺の前に持ってきた。
「ほんでぇ〜。こうだな!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!あぁぁ!」
苦痛の叫びとはこのことを言うのだろう。3人の科学者の内、ひとりが腕を切り落とされてしまったのだ。
「ッッ!てめっ!ングッ!」
俺は咄嗟に奴に殴りかかろうとした。そう。しただけで俺は俺の後ろにあった壁に思いっきり吹き飛ばされ、直後に手と足、そして口を塞がられてしまった。
そして俺の前には腕のない人がひとり。そして無傷の2人が奴の支配下にあるのだ。
「ふふ...!いいねぇ!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!あっ...あ。」
腹へと鉄をねじ込められそのまま腹を真っ二つに裂けられてしまい、頭が下にガクリと落ち込んだ。
(し、死んじまったの...か?)
「次行くよー?えい!」
次の人は一瞬で頭を割られ、声を出す間もなく終わってしまった。
この辺りから俺は「んんんんん!!!!!!!!」などと声に出せずにもがき叫ぶことしか出来ず、俺の目からは大量の涙がこぼれ出していた。
「次はぁ。これだな!」
「や、やめ!ング!ごごごぼ...!」
「んんんんんー!」
鉄くず野郎はそう、最後の人の口から鉄を触手のように曲げて体内にねじ込み、そのまま程なくして本人からの声は発せられなくなった。
そして...。
その科学者の体よ至る所から先端の尖った鉄の針が無数に飛び出して先端からはぽたぽたと血が垂れていた。
「ふーーー...ふーーー...」
目からは大粒の涙を流し、その血まみれの光景をただ眺めることしかできない俺。
そして鉄くず野郎は次の標的を探すため、俺に背を向けた。
(そう...か。このクズは...俺の精神を壊す気なんだ。)
1片の鉄の欠片が道路に思いっきり転がり落ちた。
多少の瓦礫と共に。
それは本当の開戦の狼煙でもあると思われる。
「あん?なんだぁ...ガッ!」
「はーー...。はーーー...。」
鉄くず野郎は俺に頬を殴られ、ズサーと後ろに足をつきながら下がる。
「流石にあの拘束抜けるとは思ってなかったなぁ。」
「さっきの人達にやったよう...に!やり返してやる...」
異能が発動してるのか...。凛月とかいう勘のいい奴と同じ様な身体能力してんなら割とキツめ...かな。
なら...!
俺はある建物のその根元へ向けて鉄で建物に引っ掛けて移動しだす。
「あ?どこ...行きやが...」
あ...あぁ!やべぇ!あのタワーの根元には...避難民の人達が!
「はは!そう来なくっちゃなぁ?!」
「てめぇ!!それだけはやめろ!!!!!」
はは...馬鹿でけぇ声...。さっきまでのガキとは大違いだなこりゃ...。
やばい...間に合わねぇ...。だ、ダメだ。また俺のせいで死ぬのだけは嫌だ...!
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「ど、どうなのかしらねぇ。異能団の皆さん...ここにいろって言ってたけど...ってあれなに?!」
大通りから鉄を建物に引っ掛け、移動する俺の姿があの愚民どもにはやはり見えていたようだ。
「う、上に...?」
俺はそんな奴らに挨拶なんてのもせず、ただ上に行き、
無数の棘を作り上げたのだ。
そう...串刺しだ!
「あんたら!!逃げてくれ!!」
間に...合え!
「おせぇじゃねぇか涼風ぇ!」
俺は躊躇なんて糞なものを感じずただ下に向かって棘を飛ばしただけ...
そして...。
そのタワーの根元は真っ赤に変色していた。
目の前にいた...お父さんらしき人やお母さんらしき人。またその子供。
その全てが今俺のあと数センチというところで間に合わず...。
血しぶきをあげるというより散らせながら死んで行った。
「あ...あぁ...。ざっけん...な。なんで...。」
その返り血が俺の頬に、髪に、ベッタリと付いてしまっていた。




