守る理由
まただ。また助けてしまった。
ヒーローだのなんだのは人を助けることを目標とする善人である。そこにいらない思考は持ち合わせてはいないだろう。
だが俺は違うのだ。人を助けること自体はどうでもいい。そこら辺の知らない奴が死んだって俺は泣かない。
だが助けてしまうのだ...俺は。
恐らくそれは助けたことによって得られる優越感のようなものが俺は大好きだから。だから俺はそんな自分が嫌いだ。
今だって理由もなく人を助けてしまった。
俺なら俺が庇った奴が本当は受けるはずの攻撃を防ぐことは簡単だ。
先程俺が奴の触手を切った際にわかった事がある。
触手を再生する時には動きが鈍くなってしまうという致命的な弱点の存在に。
俺は奴の触手を先程と同様に切り倒して電柱の狭い足場を伝い、奴のいる建物へと飛び移る。
まだ再生は完了しておらず、そのまま俺のスピードが上回り、俺自身の能力を行使して奴に致命傷...つまりは心臓を左手で潰そうとした時だった。
奴が咆哮を上げたと同時に奴の体が青く、冷たく、氷にほとんどが覆われて行ってしまった。
「っ!」
一瞬の事なので俺はこの上なく驚きを隠せない様子で数歩後ろに下がる。
「ガ、ガガっ!」
━━━━━━━パリンっ!
そんな音を放ち、怪物は露として砕け散った。
その横から青い猿...?が姿を現す。
あぁ...分かる。こいつはクソ強いんだって。
俺は多分勝てないこともわかってる。
でも俺はやつに刃を向けた。
「急に出てきやがって。次から次へと...。」
猿...いやゴリラに近しい怪物なのだと即座に理解し、俺はダッシュする。
首元に右から左へと刃をふるう。
青い猿はそれを華麗に避け、建物の屋根をどんどん飛びはねながら俺に向かって氷の柱のようなものをよこして攻撃し、伝って行った。
「待ちやがれくそざる!」
それに続いて俺も追う。
怪物は真っ直ぐ...また真っ直ぐダッシュをし続け。
いきなりこちらへ振り向き拳をよこして来た。
俺は左拳と奴の右拳がガコン!と合わさる。
そして俺は奴がその勢いを殺すより前に体勢を低くし、やつを手前に転ばせることに成功した。
俺は左足で奴の顎を上に蹴りあげ、ゴキッィっという音を鳴らす。
そして俺は刀を奴の心臓に突き立て、刺した。
そのまま予備のナイフで脳を掻っ切ろうとする...が。
奴がバカでかい口を開け、その喉の奥に青い光を見た。
...はは。見誤ったんだ。俺は。
奴の能力の発信源は口だ。口から氷の力を発していたのだ。
ただ俺は。
奴の青い光が俺に届くまでじっと待つことくらいしかできなかった。




