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第60話 暗闇より手を伸ばす

 不思議な感覚だった。

 ずっと何かに包まれているような、そんな感覚だった。画面越しに現実の出来事を見ているような感じで、全ての行動に実感がなかった。

 実際に体を動かしている自分が、まるで自分じゃないかのように。自分からは自分の動きに一切干渉できない。まるで自分の体に赤の他人が入り込んだかのようだった。

 それでも、私はこの体を通して見てきた。いや、見てしまった。

 この手で船長を殺した。レイメイにジョン、カルザ、彼らの新しい仲間と思わしき人達も沢山傷つけた。

 私はそんな事したくないのに。もう一人の私は彼らを容赦なく傷つけた。私の意志は全て無視されて、凄惨な景色だけを一方的に押し付けてきた。

 レイメイ達は、私が付けている仮面のせいで正体に気付いてくれない。私がどれだけ叫ぼうと、その声が届くことは無かった。

 そしてついに、私の精神は壊れてしまった。

 足掻くことさえ無駄な事と決めつけて、一切の抵抗をやめた。相変わらず押し付けられる酷い景色も、自分がやった事じゃないと目を背けた。

 次第に私の心は何も感じなくなっていって、涸れはててしまった。

 あぁ、私はこのまま死ぬんだなぁと思った。


 ―――でも、そんな私に光が差した。

 レイメイがやっと私の正体に気付いてくれた。皆は私に必死に声をかけてくれた。

 嬉しかった。でも、私に戻る資格なんてあるのかと疑ってしまった。

 私は抗う事をやめてしまった。レイメイ達が傷つけられることを黙認してしまった。それに、彼らから見たら、船長を殺したのも、街を破壊したのも、彼らを傷つけたのも、全部私。もう一人の私じゃない。

 でも、私は彼の声を聞いて抗わずにはいられなかった。許されなくてもいい。ただ、また皆に会いたい。そんな自分勝手な感情だった。

 暗い水の中で必死にもがいた。外から差し込む一筋の光を掴もうと、必死で手を伸ばした。

 レイメイ達も私を取り戻そうと全力で戦ってくれた。

 もういい加減にしろ。これ以上レイメイ達を傷つけるな。これは私の体だ。

 もう一人の私に語り掛けて抵抗する。それでもやっぱり、私の思う通りに体は動いてくれなかった。

 でも、レイメイ達との戦いで体力が消耗されて、少しずつ私を覆う霧が晴れていくような感じがした。あと少し、あと少しで戻ってこれる。

 そう思っていた。

 でも。


 バンッ!


 突如鳴り響いた銃声。レイメイの腹部を貫いて、赤く染まった弾丸。

 ―――私は気づけば、彼の元に駆けよろうとしていた。

 でも、レイメイが気を失ってこちらに倒れてきて、私の体も麻酔でほぼ動かなくなっていたのもあり、私は海に落ちてしまった。

 ……私がレイメイの方に近寄らなければ、こうはならなかったのかもしれないのに。

 レイメイは責任感が強いから、私の事も自分が悪いと言い出すだろう。でも、それは違う。全部私のせい。レイメイは少しも悪くない。

 後頭部に鈍い衝撃が走る。そして、体が水の中に沈みゆく感覚を覚えた。

 ……最後にまた、レイメイ達と話したかったな。

 私の意識はそんな叶わぬ願いを抱きながら、奈落へと落ちて行った。



















 波の音で目を覚ます。

 そこは小さな島だった。


 東雲時の断罪 第三部 完

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 こんにちは。作者の炭酸おんです。ここまで読んでくださりありがとうございます。

 魔王様配信の執筆も並行して進めていたので週二回の更新でもかなりギリギリになってしまいましたが、何とかペースを遅らせずに完走することができました。第三部が終わってひとまず安心。

 この作品を思いついた時にやりたかった「Sの正体判明」が出来て満足です。いくつか伏線も忍ばせていたのですが、更新が遅かった故にそれをアピールしにくくなってしまったのは反省しています。今後はもう少し更新ペースも早くしたいですね。

 さて、東雲時の断罪ですが、恐らく次の第四部が最終章になると思います。ですが、まだ第四部はほとんど構想ができておりません。申し訳ありません。

 また新しいダンジョン配信やラブコメの案も色々とあるので、第四部はかなり時間がかかってしまうかもしれません。ですが、この作品は必ず完結させると決めているので、最後まで付き合っていただければ嬉しいです。

 では、また会いましょう!


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