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第55話 正体判明

「レイメイ! 大丈夫か!?」


 柊さんが僕への一撃を防いでくれたのとほぼ同時に、時雨さんと鬼灯さんが僕に駆け寄って安全な場所まで避難させてくれた。


「はい、何とか……。でも僕以外は全員やられました……」

「そうか……、ここまでよく頑張ったな。でも、社長が来たからにはもう安心だ。あの人はな……、滅茶苦茶強いんだよ」


 時雨さんが安堵に満ちた表情で言った。それだけ柊さんの事を信用しているのだろう。

 でも、今回ばかりは相手が悪すぎる。いくら柊さんとはいえ、あの化物に勝てるとは思えなかった。


「その顔、まだ疑ってるな。そうか、レイメイ君はまだあの人が戦う所を見たことが無かったか。実際に見てみれば分かるけど、あの人の強さは異次元だ」


 時雨さんがそう言ったタイミングで、周囲の木々が一斉に倒れる音が聞こえた。何事かと振り返ると、柊さんが真剣を一閃している所だった。その一閃で、これほどの量の木々をなぎ倒したようだ。


「噂通り、とんでもない強さだね。でも、私の大事な社員たちを傷つけた以上、容赦することはできないね」


 驚くべきことに、柊さんはあのSと互角以上に渡り合っていた。流れるような攻撃も、一つ一つ迅速かつ丁寧に受け流していた。


「こちらもそろそろ攻撃に移らせてもらおう。素戔嗚型『草薙一閃』!」


 柊さんが使ったのは、時雨さんが使っていたものと同じ「神剣流」の技だった。

 だがその規模は桁違いで、その一閃だけで目の前にある木々を何本もなぎ倒していた。

 Sも柊さんの圧倒的な強さを検知したようで、目の色を変えて彼を潰しにかかる。


「月夜見型『月下暗目』!」


 高速で接近して頭を潰そうとしたSに対し、柊さんは目で追えない程の速度で移動し、視界から消えてしまっていた。


「隙あり」


 だが、瞬き一つした次の瞬間には姿を現しており、Sは肩を斬られて血を流していた。


「今のに反応して被害を最小限に抑えたか……。やっぱり化物だね」


 なんと、これでも被害を抑えられた方らしい。柊さんも恐ろしいが、アレに反応できるSもやっぱり異次元の強さだ。

 そしてここで、Sの動向が変化した。すぐ近くにあった木を抜き取り、それを柊さんの方へとぶん投げた。


「はぁ!? 木を投げた!? アイツの力どうなってるんだ!?」


 鬼灯さんもその怪力に尋常ではない驚き方をしていた。その声があまりに大きすぎて僕も少しびっくりした。

 Sが木をぶん投げた先にいる柊さんは、少しも動じていなかった。それどころか、目を閉じて集中力を高めていた。


「柊さん! 避けて!」

「待てレイメイ君。あの構えは多分……!」


 柊さんに叫ぼうとした僕を、時雨さんが止めた。どうやら、彼にしか分からない何かをやっているようだ。

 そしてついに、木が柊さんに衝突した。そのあまりの力に、地面が大きくへこんでいた。

 ———だが次の瞬間、その木は真っ二つに斬られていて、その中から無傷の柊さんが姿を現した。


「天宇受売型『天岩戸舞』」


 柊さんは舞でも踊るように、その木を両断していた。その恐ろしい速さは、最早視認することすらできなかった。


「やられっぱなしでは敵わない! こちらからも攻めなくては!」


 木を切り捨てた柊さんはそう吐き捨てると、次の瞬間にはSの目の前まで移動していた。そして、激しい刀と拳のぶつかり合いになる。

 あまりにも高速すぎて、二人の周囲には風が発生していた。その風の中に、時折互いの血が混ざっているのが見えた。

 互角の接近戦が続いたが、剣技の合間に柊さんがSの腹に放った蹴りだ決め手となり、Sは遠くまで吹っ飛ばされた。


「すごい……、本当にSと互角以上に渡り合ってる……!」

「だから言っただろ? 社長は馬鹿強いって」


 柊さんの強さを存分に理解した僕を見て、何故か時雨さんが満足したような表情で頷いていた。師匠の力が認められたのが嬉しいのだろうか。


「……でも待て、Sの様子が変だぞ」


 だが、そこで鬼灯さんが何かの異変に気付いたようだ。Sを凝視して、怖気づいた表情をしている。

 Sは拳を大きく振り上げて、それで地面を思いっきり殴りつけた。

 次の瞬間、なんと地面が割れていた。紙を破くように地面が割れていき、すぐに柊さんの方まで届いていた。


「マジか……!」


 これには流石の柊さんも驚いたようで、僅かに顔を引きつらせていた。

 しかも、これで終わりじゃなかった。

 Sは割れた地面の間を蹴るようにして移動し、飛び上がった柊さんの真下まで移動すると、そこから垂直に飛びあがって空中で柊さんと対峙した。


「これは想定外だ……!」


 そして、滞空したまま柊さんに強烈な蹴りを喰らわせた。柊さんは何とか刀の持ち手で受け止めていたが、それでも威力を抑えきれず、地割れギリギリの所に落下した。


「柊さん!」

「これは……、そろそろ俺達も行った方が良いか?」

「……いや待て。二人とも、柊さんを見ろ」


 助けに行こうとした僕と時雨さんだったが、それを鬼灯さんが止めた。何事かと思って柊さんを見てみると、驚くべきことに彼は笑みを浮かべていた。


「柊さんはこの戦いを楽しんでいる……のかもしれない。割って入るのは後でも良いんじゃないか?」


 柊さんのあれほどの強さ、恐らく大抵の者は抗うことすらできずに負けてしまうだろう。でも彼は今、対等に戦うことができる相手と対峙している。それ故の笑顔、という事なのだろうか。

 でも僕には、あの笑顔は希望の笑顔のように見えた。この戦いに勝てば、愛する人にまた会えるという希望を見据えた笑顔だ。


「やっぱりやるじゃないか、S。私も、君程の手練れと戦えるのは久しぶりだ! 君が敵じゃなかったら、ウチに勧誘したかったんだけどね! でも敵である以上、本気で潰させてもらうよ」


 そう言った次の瞬間には、物凄い衝撃だけを残して柊さんはその場から消えていた。


「君を倒せば、私は愛する人にまた会えるんだ! だから、私は負けられない! 天照型『神明頂光』!」

「あれって……、神剣流の奥義!?」


 柊さんの放った剣技を見た時雨さんが驚愕の声を上げる。

 実際、柊さんの動きは驚愕の一言でしか表せなかった。大地を抉りながら高速で進んでいき、その勢いのままSに突進したのだ。

 Sに最接近した柊さんは、ここまでで抉り取った地面の岩をまとめてSにぶつけた。彼女は徹底的にそれらを叩き割っていたが、その隙に柊さんの刀が彼女を襲う。

 Sは胴を大きく斜めに斬りつけられていた。防弾チョッキの類を装備して防御力は上げていたハズだが、それでも勢いよく血があふれ出るほどの切れ味だった。

 その一撃にSは初めて苦しそうなうなり声を上げたが、同時に柊さんを蹴飛ばして遥か遠くまで吹っ飛ばしてしまった。


「レイメイ君! 君がとどめを刺すんだ!」


 柊さんが飛ばされながらも、僕に最後の指示をくれる。

 僕を助けてくれた柊さんの為にも、ここでしくじる訳にはいかない!

 僕は再び火をつけたマッチを飲み込み、身体能力を底上げした。そしてそのまま、Sに突貫する。

 Sは先程の柊さんの一撃でかなり動きが鈍っているようで、先程よりかはまだ勝負になりそうだった。

 かといって、攻撃されたら終わりだ。その前に決める!

 僕はSの一撃を何とか回避して、彼女の仮面目掛けて回転蹴りを喰らわせた。

 その衝撃で、彼女の体が大きくグラつく。そして、その仮面に大きくヒビが入り、割れて地に落ちた。


「…………え?」


 それしか言葉が出なかった。

 どうして? 何が起きている? これは夢か?

 そう疑いたくなるくらい最悪な光景が、目の前には広がっていた。

 Sの顔を隠していた仮面が割れ、その素顔が明かされた。


「………スザンナ?」


 全ての表情を失った死人のような表情で、スザンナは立ち尽くしていた。


設定こぼれ話

ローリエ、またの名を月桂樹の花言葉は勝利や栄光という意味がある。

が、その花には裏切りという意味があるとされている。

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