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第47話 捜索とジンの思い


「先輩、好きっていうのはどんな感情なんでしょうか?」

「おまっ……、人を好きになった事ないのか?」

「今までの人生、ずっと剣道一筋だったので。でも、俺がこんなに他人の為に熱心になれたこと、今回が初めてです。これが、そういう事なんですか?」


 ジンはこれまで、剣道の事しか考えずに生きてきた。

 剣道の為に、遊ぶ時間も、余計な思考も、全て削って生きていた。

 そんな彼が、初めて感じたこの思い。


「……ああ。それがお前にとっての、初恋って奴なんだろうよ」


 豆次郎はどこか遠くを見ながら呟いた。


「……正直まだ、よく分かんないです。でも俺は、あの時見せてくれたソレイユさんの笑顔が頭から離れない。またあの笑顔を見たいって思ってます。その為なら、何でも協力する覚悟です」

「お前、ちゃんとソレイユちゃんの事好きじゃん。そこまで言ったらもう好きだって自覚してるでしょ」


 ジンはひどく鈍感で純粋な男だった。自身の本心が恋心だという事に全く気が付いていなかった。


「……まあでも、お前がソレイユちゃんの幸せを願うんだったら、全力を尽くしてやれよ。初めてなんだろ、剣道以外でこんなに熱が入ったこと。だったらそれを燃やし尽くすのが、青春ってもんだろ」


 豆次郎の格言を、ジンは驚いた様子で聞いていた。


「ん? ジン、俺の格言に感化されちまったか?」

「いや、先輩でもそんな事言えるんだなーって。意外すぎて」

「失礼な後輩だな!」


 二人でそんな事を話している間に、夕食の準備ができたようだった。四人で食堂に移動し、各々で食べたい物を注文する。


「私このかき揚げそば!」

「俺はカツ丼にするか!」

「私は……マイさんと同じ奴で!」

「俺は勿論豆腐グラタンだぁ!」


 そしてしばらくして、それぞれに美味しそうな料理が運ばれてくる。


「んー! 美味しい!」

「すごいすごい! ホテルの料理ってこんなに美味しいんですね!」

「そうだよ~。しかも、全部先輩のおごりだから私たちは何の気兼ねもなく食べられる!」

「おい、流石に少しは加減してくれよな……?」


 じゃんじゃん食べまくる三人に対し、財布の中身を恐る恐る確認しながら豆次郎が細々とした声で言った。


「ああ、俺の金がぁ……。————ん? おい皆、朗報だぞ!」


 うなだれていた豆次郎だったが、とある通知を見て興奮した様子で立ち上がった。


「どうしました? 財布の中身が尽きたんですか?」

「いや違う。実は、例の写真を投稿した人に直接会えないかって連絡を取ってたんだけど、明日の朝に会えるって!」

「———え!? ホントですか!?」


 これには、思わず三人も驚きの余り立ち上がってしまった。


「ああ。明日の八時に写真の撮影場所で待ち合わせになってる。寝坊するなよ~?」

「当たり前ですよ先輩。流石に舐めないでください!」


 豆次郎の吉報で場の雰囲気は一気に良くなり、マイが追加のピザまで注文するほどになった。

 ちなみに、この後の会計で豆次郎は地獄を見た。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 翌日、朝八時。

 写真が撮影された場所で、四人は撮影者と会っていた。


「貴方がこの写真の撮影者さんですか。早速ですが、この赤髪の少年について何か知っている事を教えてくれませんか?」

「うーん、珍しい恰好をしてたから、コスプレイヤーかと思って写真を撮ったんだけど……。その後向こうの山の方に行っちゃって、その後は見てないな」


 山の方に向かった、という新たな情報を得た一行は、迷うことなく山付近の捜索を始めた。だが、どんなに探しても彼を見つけることはできなかった。


「また駄目だったか……、一体どこにいるんだ!」

「やっぱり、地道に探すしかないよ。俺も、何とか警察の力を借りられないか試してみる。お前らは学校もあるだろうから、そっちに集中しろ」


 こうして、千葉での捜索は成果が得られないまま終わってしまったのだった。

 その後も休日などで調査を続けたが、目ぼしい情報は得られなかった。

 そして月日は流れ、ソレイユが転移してきてから六年が経った……。


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