第39話 奇跡の再会
シオンを打ち倒し、戦場に一人立っていた僕は、すぐにジョンとカルザが乗る車の方へと向かった。
でも、走り出した瞬間に、僕を包んでいた炎が消えた。
「———!」
炎が消えた瞬間、僕の体は圧倒的な疲労感に襲われた。体中に力が入らない。歩くことも立つこともできない。体が爆発しそうだ。
それでも、僕は止まれなかった。あの時、届かなかった手。それを今は、彼らに伸ばすことができる。
僕は重い体に鞭打って、地を這って彼らの乗る車の方へ進んでいった。
腕を一回前に出すだけで、そのまま腕が千切れそうだった。
伸ばした腕で地を掴み、体を進めるたびに、体中が地面で擦れて血が出た。
あまりにも進むのが遅かった。早く二人の顔が見たいのに、体が思い通りに動いてくれない。
そしてついに、手を前に出すことさえできなくなってしまった。
もう目の前なのに。どうして動いてくれないんだ。
僕は自分の貧弱さを呪った。
まだ諦めるわけにはいかないと、必死でもがく。
———突然、僕の体が誰かに持ち上げられた。
「これくらいでへばってんじゃねーよ。仲間が待ってるんだろ?」
シュウさんが、僕を抱えて車の所まで運んでくれていた。
「シュウさん、無理しないでくださいよ…。さっきまで倒れてたじゃないですか」
「あんなに血を流しながら無理をして進み続けるバディを見て、無理せずにいられる訳ないだろ」
シュウさんはそう言いながら、苦し紛れに笑って見せた。
「よし…、着いたぞ!」
僕を車の前まで運ぶと、シュウさんは力尽きたかのようにその場に倒れてしまった。
「シュウさん!」
「……気にすんな。疲れたから横になっただけだ。それより、早く二人に会ってやれよ。ずっと、会いたかったんだろ?」
そう言って、腕で僕の足を叩いた。
黄昏さんが運んでくれたお陰で、立てるくらいには回復した。僕は震える足で何とか立ち上がり、車のドアを開けた。
「ジョン…カルザ…!」
そこにいたのは、確かに二人だった。
僕は二人の姿を見た途端、涙が溢れて止まらなかった。二人は縛られていて、怪我もしているから早く何とかしないといけないのに、僕は泣くのをやめられなかった。
「……ん? レイメイ、か…?」
僕が大声で泣きじゃくるから、ジョンが目を覚ましたようだった。彼の頼りがいのある声を久々に聞けて、僕はとても安心した。
「ジョン…! カルザも! 二人とも生きてて良かった…!」
僕は心の奥の大きな思いをそのまま伝えたくて、できる限りの大声でそう叫んだ。
「俺もだよ! レイメイ、無事で良かったぜ!」
ジョンも、笑みを返しながらそう叫んでくれた。
「うぅ…。ジョン、うるさいですよ…。って、レイメイ!? 無事だったんですね! うっ…、良かったよぉ!」
カルザも目を覚ますなり、泣きながら喜んでくれた。
「カルザ、お前が一番うるさいよ!」
「だってぇ、レイメイが生きてたんですよぉ! 泣くに決まってるじゃないですか!」
ここまで感情的になったカルザは初めて見たかもしれない。僕と再会できた事をここまで喜んでくれた事が嬉しくて、僕は気が付けば二人に抱きついていた。
「ちょっ、レイメイ!?」
「二人とも、本当に無事で良かったよ!」
僕は止まらない涙を流しながら、二人に満面の笑みを浮かべてやった。
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「レイメイ君、二人と再会できたのか! 良かったね!」
柊さんが僕に笑いながらそう言ってくれた。
あれからしばらくして、現場に警察と柊さんたちが到着した。
シオンたち革命軍は警察に逮捕された。各所で起きたテロもすべて鎮圧され、革命軍の本部にも警察が入っているようだった。
神宮さんたちも無事警察に保護されて、事なきを得たようだった。神宮さんたちが無事だったなら、僕たちの本来の任務も全うできたというものだろう。
革命軍との戦いで傷ついたシュウさんたちは、九十九さんたちの応急処置を受けた上で、近くの病院へと搬送された。
ジョンとカルザも、検査のために病院に搬送されていた。ただ九十九さんによると、ほとんど命に別状はないらしい。
そして今は、僕と柊さん、九十九さんの三人で椅子に座って話していた。
「それにしても、不思議な事もあるものだね。炎に包まれて、逆に傷が回復するなんて」
柊さんはとても不思議そうに僕を見ながら言った。
僕は炎の中で傷が回復していたので、激しい疲労を除けば他の皆よりも軽傷だった。地を這っていた時に擦りむいた傷も、九十九さんが処置してくれたお陰で問題ないようだった。
「やっぱり君の肌は特殊だったか。私の目は間違えてなかったみたいだね!」
九十九さんが誇らしげに言った。自分でも今まで気が付かなかったことを気付けるあたり、九十九さんは本当に優秀な医者なんだろう。
「革命軍も逮捕されて、レイメイ君の仲間も戻って来た! ついでに二人を運んでた奴らも逮捕できたから、上々ってもんでしょ!」
柊さんは嬉しそうに叫んだ。
「でもさぁジン、もっと早くお前が着いてれば、もっと被害も少なく済んでたんじゃないのか?」
九十九さんがそう言うと、柊さんは顔を引きつらせてそっぽを向いた。
「あー…、確かにそれはそうなんだよねー…。でもやっぱり横浜から東京ってそれなりに時間がかかるし、私も私で他の調べごとをしてたら遅くなっちゃって…。ごめん!」
柊さんは物凄い勢いで頭を下げた。が、膝に頭をぶつけたようで悶絶していた。
「まあでも、結果は全然オーライだったんじゃないの? ここまで大きな戦いを、誰も死なずに乗り越えられたんだからさ」
痛がる柊さんを笑いながら、九十九さんはそう呟いた。
僕は改めて東京の甚大な被害を見て、本当にみんなで生きてこの戦いに勝てて良かったと思った。
僕もゆっくり体を休めて、みんなに会いに行こう。
みんなとまた話せることが、僕はとにかく嬉しかった。
設定こぼれ話
各地で行われていたテロは、岡田たち警察が中心となって鎮圧された。ちなみに岡田は後日ジンから大量の報酬を受け取った。




