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第38話 炎神戦地を駆ける

 燃え滾る炎の中で、撃たれた足はほぼ完全に回復した。しっかりと足に力が入る。

 これなら、行ける。

 僕は覚悟して炎の中を飛び出した。


「———!」


 目の前には凄惨な状況が広がっていた。

 何人もの人が銃で撃たれて倒れていた。僕が火の中にいる間に、かなり激しい戦闘があったみたいだ。

 倒れていたのは敵だけではない。時雨さん、鬼灯さん、ビリーさん、シュトラウスさん、みんな足を撃たれたようで、血を流しながら気絶していた。

 そして、最も僕の目に衝撃的に映ったのは。

 黄昏さんが力尽きたように倒れ、彼の頭にシオンが銃を突き付けていた。


「さあ、死ね!」


 僕は気が付けば走り出していた。炎に包まれ、以前の感覚が戻って来たのか、この世界に来てから一番早く体が動いた気がする。


「黄昏さん!」


 僕はシオンを、炎をまとった拳で殴り飛ばした。彼は予想外の攻撃に、全く反応できずに吹っ飛んだ。


「黄昏さん! 大丈夫ですか!?」

「お前…、生きてたのか」


 黄昏さんはそう言うと、わずかにほほ笑んだ気がした。


「…俺はもう動けない。他の奴らも全員やられた。あとはお前しかいないんだ。……頼んだぞ、()()()()


 そう言って、僕にこの戦いの行く末を託した。


「……任せてくださいよ。誰のバディだと思ってるんですか、()()()()()!」


 僕は黄昏さんの―――シュウさんの、皆の思いを受け取り、力強く宣言した。


「火だるまになって何故動けるんだ!? いやとにかく、やってしまえ!」


 シオンはいまだにビルの上にいた眼鏡のスナイパーに声をかけた。

 さっきやられた事もある。まずはアイツから潰す。


「お前ら、ここまで好き勝手やっといて、覚悟はできてるんだよな?」


 僕は大声で二人に言ってやり、足に力を込めた。

 僕はシオンとスナイパーの銃撃を避けながら、勢いよく走り出した。


「どうした、逃げてばかりでは勝てないぞ!」

「お前らこそ、ただ撃ってるだけで勝った気になってんじゃねーよ」


 僕は十分な距離を取ったことを確認し、方向転換して一気にシオンの方へと駆けだした。


「馬鹿が! 蜂の巣にしてやる!」


 シオンが僕に銃を乱射する。でも不思議と痛くはなかった。血もちゃんと出ていたが、炎の中で一瞬で消えていった。


「な、何で止まらないんだ? 人間じゃないのか!?」


 シオンが恐怖で引きつった表情で叫んだ。


「おい、叫んでる余裕あるのか?」


 僕は一言言ってやった後、大地を踏む足に力を込めた。

 助走は十分だ。これなら届くはず。

 僕は地面にめり込んだ足を、全力で踏みしめた。


「……!」


 シオンが声にならない声をこぼしながら僕を見ていた。

 僕の体は宙を浮いた。そして勢いそのままに、ビルにいたスナイパーの元へと飛び掛かる。


「う、嘘だろ!?」

「よくも、仲間をやってくれたな!」


 炎をまといながら飛び込んできた僕に驚きを隠せないでいるスナイパーをこの目で捉えて、僕は容赦なく炎の拳を振り下ろした。

 ジリジリと焦げ付いたような感覚を残しながら、スナイパーは気絶した。

 残るはシオンだけだ。

 僕はビルの屋上に出て、そこから次々と隣のビルの屋上へ跳んでいく形でシオンの上を移動していった。


「クソッ…、銃が当たらん! いやだが、火だるまの奴は銃が撃てない。いずれは下に降りてくる…!」


 シオンが何か言っているのが聞こえた。多分、僕が下に降りてくるのを待っているのだろう。


「そんなに降りてほしいなら降りてやるよ!」


 僕はシオンに言うと、彼がいる方とは反対側に降りた。


「そっちかよ! …で、どこいった!」


 シオンはビルの裏に隠れた僕を見失っているみたいだった。

 狙い通りだ。僕は三度走り出しの姿勢を取った。

 そして、ビルを突き破って強襲する。


「…! そこか!」


 流石にビルを突き破ってくるのは予想外だったようで、シオンの反応が一瞬遅れた。

 銃を構えるのが遅れた彼に、僕は回収していたガラスの破片を投げつける。

 僕は手が切れてもすぐに回復する。でも奴はそうはいかない。


「くッ…! 地味に痛い事しやがって!」


 想像していなかった痛みに、シオンの銃を構える手が若干鈍くなる。

 そしてその隙に、僕はシオンの目の前まで接近した。


「僕たちの、勝ちだ!」


 シオンの目の前でそう宣言し、僕は彼に拳を乱打しまくった。

 一発一発に、革命軍のテロで傷ついた人達や、アマテラスの仲間たちの思いを込めた。

 そしてその思いの力が込められた拳はついに、シオンを打ち破った。

 シオンはついに、立ったまま気絶した。

 それを僕が蹴り倒し、戦場に立っているのは僕一人になった。


「みんな…! 勝ちましたよ!」


 僕は共に戦って倒れた仲間たちにも聞こえるように、大声でそう言った。


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