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第35話 暗い夜:黄昏シュウ 前編

 レイメイが撃たれ、火の海に落とされた。

 それを見たシュウの脳内に、過去の記憶がフラッシュバックする。

 また、何もできずに目の前でバディを失うのか。

 シュウの頭に浮かんできたのは、彼がアマテラスに入社した時のことであった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 今から約三年前。黄昏シュウはアマテラスに入社した。


「これからよろしくね、二人とも」


 社長、柊ジンがシュウともう一人の肩をたたく。

 彼は黄昏ハルト、シュウの弟だった。


「君たちは今日からバディだ。実の兄弟だし、互いの事もよく分かってるでしょ。これから頑張ろう!」


 兄弟はジンからバディとして動くように命じられた。それは、同じ目的を持つ二人にとって、とても嬉しい事だった。


「はい! 頑張ります!」


 シュウとハルトは笑って答えた。

 ジンは二人を気づかって、社宅で余っていた二人用の部屋を兄弟に与えた。ハルトはその部屋を見て、興奮した様子で言った。


「すげぇ! こんなちゃんとした部屋、初めて見たよ!」

「ハルト、あんまり騒ぐと他の人達に迷惑だろ。…でも、やっと普通の部屋で暮らせるんだな」


 シュウは感慨深く言った。その時、玄関が開いて誰かがやって来た。


「お、君たちが兄弟バディの新人かー! 同じ社員として、社宅の部屋お隣さんとしてよろしく!」


 入って来たのは、青みがかかった長髪をなびかせた人物だった。その手に持つビニール袋にはお酒が入っていた。


「この部屋に住むのは君たちが初めてなんだ。だから君たちは初めてのお隣さん! 仲良くしよう!」


 その人はハルトの手を握って腕をぶんぶん振って握手した。


「あっえっと…」


 ハルトは突然美人に握手されて困惑しているようだった。何か言おうとするも気恥ずかしさで口の外に出る前に消滅してしまう。


「おいナギ! 人の部屋で何してるんだ! まだ書類の整理が終わってないだろ!」


 喝を入れながらまた新しい人がやって来た。この職場は随分和気あいあいとしているとシュウは感じた。


「まあまあまあ、新人くんたちが来たからご挨拶だよ!」


 ナギと呼ばれた人は笑って答えた。どうやら仕事を途中で投げ出した事に関してはあまり反省していないようだ。


「というか、自己紹介はしたのかよ。これじゃただの不審者だぞ?」

「あ、ごめんまだだった。俺は時雨ナギ! こっちは俺のバディの鬼灯ケンタ! よろしくね!」


 ナギの自己紹介を聞いて、ハルトは目が点になっていた。


「あれ…、今『俺』って…?」

「ああ、コイツ男だぞ」


 ケンタから衝撃の事実が明かされる。それを聞いてシュウまでも驚いてしまった。


「あ、男だったんですね…。なんかごめんなさい」

「いやいや、良いよ別に」


 ハルトはナギに謝ったが、ナギは『よくある事だ』と言った様子であまり気にしていない様子だった。


「とりあえず俺たちも自己紹介を。俺は黄昏シュウです。よろしくお願いします」

「黄昏ハルトです! シュウの弟でバディになりました! よろしくです!」


 二人も自己紹介をした後、ナギの提案で親睦会という名目の鍋パーティーをすることになった。


「二人は兄弟でアマテラスに入ったんだな。ちなみに何歳差?」

「実は僕達年子なんですよね。あんまり似てないですけど」

「年齢は?」

「俺が二十でハルトが十九です」

「お、シュウ俺と同い年じゃん! 親近感湧いちゃうなー」


 鍋の具材をつつきながら、いくつか質問の受け答えをする。そして、鬼灯があることを聞いた。


「ところで、なんで兄弟そろってアマテラスに入って来たんだ?」

「…実は俺たち、ついこの前までヤクザに追われてたんです。父親がヤクザに借金作って、返しきれないまま病気で倒れて。母親もハルトが生まれてすぐに死んじゃったので、俺たちで返すしかなくて。でもついに返しきれなくなっちゃって、ヤクザの奴らに殺されそうになったところを、柊さんに助けてもらったんです」


「父さんは悪い人じゃないんです。でも、事業に失敗して、生きていくためにヤクザからお金を借りるしかなかったみたいなんです。僕らはあのヤクザたちが許せない。父さんから散々搾取して、僕たちも殺されそうになった。柊さんに助けてもらったとはいえ、アイツらはまだどこかで活動を続けてます。だから、アマテラスに入って奴らに復讐したかったんです」


 兄弟によって語られた、彼らの壮絶な過去。ケンタも、兄弟でアマテラスに来るなど、相当な訳アリだとは分かっていた。だが、ここまでだとは思わなかった。

 何とも言えない気まずい空気になってしまい、沈黙が訪れた。


「…すいません、こんな事言っちゃって。この場で言うべきじゃないとは思ったんですけど、僕たちが本気だってこと、知ってもらいたくて」


 ハルトは申し訳なさそうに言った。


「…いや、むしろ正直に答えてくれてありがとう。辛かったよな。俺たちも協力するからさ、頑張ってそのヤクザぶっ潰そうぜ!」


 その場の空気を変えるように、ケンタが言った。それを聞いて、ハルトの表情に明るさが戻る。


「…そうですね! よし、絶対ぶっ潰すぞ!」

「よく言った! よしビールだ! 飲め飲め!」


 再び室内が明るい空気に満たされる。ナギはようやくビールを取り出してふるまった。


「あ、すいません僕未成年です」

「じゃあ俺が二つ飲んじゃおっと!」

「失礼します」

「だからさぁナギ、俺は酒弱いって言ってるだろ?」


 借金だらけの生活で、ちゃんとした食事さえとれなかったシュウとハルト。二人は初めて、友人と食べる食事の美味しさと楽しさを知った。

 だが、この楽しい時間は長くは続かなかった。


設定こぼれ話

シュウとハルトは借金による極貧生活を送っていたので、まともな環境で育つことができなかった。そのため、彼らが社宅に初めて訪れた時の反応はレイメイに近いものがあった。

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