第34話 東京大決戦・最終局面
革命軍のリーダー、シオンとその仲間十人を見据えながら、僕は改めてこの状況を考えていた。
あちらは十一人、僕たちは六人と、二倍近い人数差があった。革命軍側は、当然のように全員銃を装備していた。その他にも、何か仕込んでいそうな様子だった。
それよりも気になったのは、ジョンとカルザを連れ去った奴ら――革命軍が言う所の『イングズ』が爆発に巻き込まれ倒れたことに対し、革命軍は狙い通りとでも言うように笑っていたことだ。
どうやらこの戦いは、アマテラスと革命軍、そしてイングズの三つ巴の戦いだったようだ。
だが、さっきのSと男が言っていたように、イングズはこの件から手を引いた。ジョンとカルザを乗せていたこの車が一番最後だったのだろう。
この大混乱は、目の前にいる革命軍のリーダーたちを倒せば終わる。僕だけじゃなく全員がそう確信し、奴らとの命をかけた勝負に挑んだ。
「かかれ」
シオンがそう告げると、六人は僕たちを迎え撃ち、四人は彼の周囲に待機した。
「おいおい、四人も自分の護衛に使っちまって大丈夫なのか? オレたちは強いぜ!」
ビリーさんが強気に叫ぶ。ほぼ同時に彼は、向かってきていた一人に対し、素早く銃を三発撃ち込んだ。
一発目は避けられたが、それを予測して撃たれた二、三発目は命中し、ビリーさんへと走るその男の足が止まる。
そこに間髪入れずにシュトラウスさんが男に組み付いて、そのまま地面に叩きつけた。
「言っただろ、『オレたち』は強いってな!」
男を叩きつけて隙ができたシュトラウスさんを別の男が狙っていたが、それを黄昏さんが横から撃って止めた。
「素戔嗚型『草薙一閃』!」
撃たれた男にすかさず時雨さんが追撃して、その男もまたあっさりと倒れた。
やはり皆とてつもなく強い。僕もこうしてはいられない。
僕は僕のことを狙っていた帽子をかぶった男に狙いを定めた。
「お前、さっきの奴か。よくあそこから逃げられたな。助けでも来たのか?」
「ああ、お前らがちゃんと俺を捕縛しなかったからなぁ。お陰で簡単に助けてもらえたよ!」
帽子の男は嬉しそうに語った。
「でも、一回助けられただけで何も変わらないでしょ。今からお前らは僕達に負けて、牢屋行になるんだからさ」
僕はあえて、帽子の男を煽るような口調で言ってやった。彼は少し怒ったようで、鋭い目つきで僕を睨みつけていた。
「お前らは本当に何にも分かってないよ! 俺たちとお前らは本当の目的は同じハズだ。お前らもイングズを追ってるんだろ? 奴らは共通の敵だ。何故理解できない?」
「正直お前の話はすごく気になるけどさ、ムカつくからその話、牢屋の中で聞いていい?」
僕はたくさんの人を傷つけておきながら、嬉々として話し続ける彼が許せず、全力で潰しに行った。
帽子の男に接近し、かがみこんで下から彼の腕目掛けて銃を撃つ。でも、微妙に狙いがずれてしまい、僅かに腕をかすって服の一部を破く程度にしかならなかった。
男はにんまりとして僕を見下ろす。僕はかがんだ体勢から元に戻るのに時間がかかる。その間に彼の攻撃を受けてしまうだろう。
そう思った僕はかがんだ状態のまま地面を蹴り、バク転という奴をして後方に下がった。
彼は僕の動きを追い切れていないようで、銃を外し焦っていた。
そこに、鬼灯さんの渾身の拳が放たれた。男の顔は醜く歪んで、それ以降起きてこなかった。
「鬼灯さん、ありがとうございます!」
「敵はまだまだ残ってる! 油断せず行こう!」
僕は鬼灯さんと一瞬だけ拳を交えてから、シオンの方へと向かった。
気が付けば最初の六人はもう片付いていたようで、全員で彼の方へと向かうことができた。
「やっぱり強いね、アマテラスは。でも、こっちも負けてないよ」
シオンはそう言うと、自身も銃を取り出した。僕たちが持っているものよりも一回りほど大きな物だ。
「全員撃て!」
シオンの一言で、周りにいた四人が一斉に銃を取り出し、僕たち目掛けて撃ち始めた。そのあまりの勢いに、僕たちは一度車の影に隠れるしかなかった。
「クッソ、どうする?」
「いずれ弾切れを起こすはずだ。それまでここに隠れるか?」
「いや、ここは…!」
僕は小声で皆に作戦を伝えた。それを聞いた皆は案外あっさりと承諾してくれた。
皆に信頼されたのが嬉しくて、僕はより一層力が入った。
近くにあった爆発で吹き飛んだ瓦礫を掴む。僕の身長の半分くらいはありそうな大きなものだ。
それを僕は、さっきのSがやったように、わずかな銃撃の隙をついて、奴ら目掛けてぶん投げた。
「…は?」
先ほどまで完璧だった四人の統制が崩れた。予想外の方向からの予想外の攻撃に混乱しているようだった。
「今だ! 攻め込め!」
ビリーさんの指示で、全員が一斉に攻勢に出る。
形成逆転。その言葉が僕の頭に浮かんだ。
「東雲! コイツをやるぞ!」
僕は黄昏さんと合流し、目の前の大男を相手にした。周辺が爆発の影響で燃えており、熱さを感じたが、最早そんな事は気にならなかった。
「行くぞ東雲!」
「はい!」
黄昏さんと同時に攻め込もうとした、その時だった。
どこからか戦場の騒音を裂くように銃声が聞こえた。
僕は右足を撃たれていた。傷口から川の源流のように血が細く垂れてきていた。
唐突な攻撃とその痛みで、僕は歩みを止めてしまった。
上を見ると、ビルの窓から眼鏡をかけた男がこちらを見ていた。どうやらシオンは、伏兵を一人忍ばせていたようだ。
「東雲! 大丈夫か!?」
「僕は大丈夫です! だから奴を――」
そこまで言ったところだった。目の前の大男が僕に突進してきた。
撃たれてちゃんと動かない足では避けることも耐えることもできず、僕はその圧倒的な質量に押し飛ばされてしまった。
「東雲!」
黄昏さんが悲痛な表情で叫ぶ。僕は恐る恐る後ろを見た。
燃えていた。火の海だ。
抵抗する術なく、僕は燃え滾る火の海に落ちていった。




