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第33話 近くても遠い距離

 目を覚ますと、黄昏さんが僕を抱えて逃げているところだった。

 …あれ、僕たちはビルに押しつぶされたはずじゃ。

 そう思い、上を見上げる。

 ———倒れてきていたビルは破壊され瓦礫となり、炎に包まれながら降ってきていた。


「東雲起きたか! よく分からないが、倒れてきたビルが突然爆発したんだ! 多分、革命軍が元々爆弾を仕掛けていて、それが丁度今のタイミングで起爆した!」


 僕の意識が戻ったことを確認した黄昏さんが事態を説明してくれた。どうやら黄昏さ

んは僕より早く目覚め、僕を助けてくれたらしい。

 何とか瓦礫が降ってこない場所まで逃げ切り、黄昏さんは僕を降ろした。


「黄昏さん、ありがとうございます。今回こそ、助けてくれてなかったら死んでました」

「…気にすんな。もう嫌なんだよ、バディに死なれるのは」


 黄昏さんはそれだけ言うと、三度女を睨みつけた。


「ド派手な真似しやがって。後処理が大変なんだよ! ケリつけるぞ!」


 黄昏さんが女の方へ向かおうとしたその時だった。


「お疲れ『S』。もういいよ」


 どこかから男の声が聞こえてきた。


「あの車…!」


 黄昏さんがやって来た車に反応した。僕もその車には見覚えがあった。船長を殺した女が乗り込んで逃げた車だ。

 Sと呼ばれた女は、反応して車の方へ駆けていった。


「おい待て! 逃がさないぞ!」


 僕は慌てて追いかけようとしたが、黄昏さんがそれを止める。次の瞬間、僕の一寸先に銃が撃たれていた。あのまま進んでいたら撃ち抜かれていただろう。


「こっちこそ、君たちには追わせないよ」


 男の声は車の中からだった。窓を開け、煙が立つ銃を持ちながら男は言った。


「Sは本格的な戦闘での運用は初めてなんだ。それにしては上出来だったけどね。ただ、これ以上Sを君たちと戦わせても何もメリットが無い。我々はジョン君とカルザ君を回収して、この件からは手を引かせてもらうよ」


 Sを車に乗せた男は、それだけ言い残して僕たちの元を去っていった。


「待て! ジョンとカルザに何をする気だ!」


 僕は吠えたが、その程度で奴らが止まる訳が無かった。僕は奴らが去っていく姿を見ている事しかできなかった。


「…東雲、まだ俺たちにはやることがあるだろ?」


 悔しさに打ちひしがれていた僕に黄昏さんが語り掛けた。


「ジョンとカルザはまだあの車の中だ。アレを止めれば、二人は助けられる。早く追うぞ!」


 そうだ。ジョンとカルザはまだ完全に奴らの手に落ちたわけじゃない。まだ取り返せる。

 希望を取り戻し、僕は立ち上がった。


「…行きましょう! 黄昏さん!」


 僕がそう言った時、背後から高速で迫る車があった。


「お前ら! 無事か!?」

「ビリーさん!? それにシュトラウスさんも!」


 ゴツい大きな車に乗って現れたのは、まさかのビリーさんとシュトラウスさんだった。


「二人とも、神宮さんは大丈夫なのか?」

「ああ。実は、各地で起きたテロがほぼ平定されてきているんだ。革命軍たちも次々と捕まっていて、追加の警備も来たから、そいつらに警備を任せてオレたちはここに来た」


 シュトラウスさんがスマホの画面を見せる。そこには、警察やアマテラスの面々からの、

テロ平定の報告があった。


「分かった。単刀直入に言う。レイメイの仲間が車で連れ去られた。早く追いつきたいから乗せてってくれ!」

「了解! さっさと乗れ!」


 僕と黄昏さんは急いで車に乗り込んだ。

 ビリーさんが力強くアクセルを踏む。車は物凄い音を立てて高速で動き出した。


「車はこっちに向かったはず! 途中まで時雨と鬼灯が追っていたから、どこかにいるはずだ!」


黄昏さんの言う通り、しばらく走ったところで時雨さんと鬼灯さんを見つけた。二人も車

に乗せて、情報を聞く。


「流石に車を走りで追うのは無理があるな…! でもアッチに行ったはずだ!」


 時雨さんが指さした方向に、ビリーさんは車を動かした。爆発で建物が崩れているのが逆に効果的に働いて、ビリーさんは崩れかけの建物を強引に突き破って直線で走り抜けるという荒業を見せていた。


「おいビリー! 後処理の事少しは考えろ!」

「レイメイの仲間の命がかかってるんだ! そんなこと言ってられないだろ! それより飛ばすからベロ噛むなよお前ら!」


 ビリーさんが更にアクセルを踏み込んだ。車が限界を超えたような音がして、僕はそのあまりの速さに吐き気さえ覚えてしまった。


「見えたぞ! あの車か?」


 ビリーさんが少し先にある車を指さして言った。その車は何故か停まっていて、数人の男が慌てふためいていた。


「ああ、あれだ! でも何で停まってるんだ?」


 時雨さんが答えたが、やはり車が停まっている理由は分からないようだった。


「…ん? パンクしてるのか?」


 車との距離が近づいてきて、細かい様子が見えるようになってきたところで、シュトラウスさんが言った。

 

「とにかくチャンスだ、急げ!」


 鬼灯さんの合図でビリーさんが速度を上げた、その時だった。

 近くにあったビルが爆発し、車ごと吹っ飛ばされた。

 一瞬、体が浮く感覚を覚え、直後どこかに頭をぶつけた。


「皆! 大丈夫か!?」


 ビリーさんが呼びかける。空気がたくさん詰められた袋のような物が衝撃を受け止めてくれたので、全員大した傷は無かった。

 今の爆発で、車の修理をしていた男たちは全員気絶したようだった。ただ、あっちの車も、僕たちのと同じような袋が出ているように見えたので、中にいるであろうジョンとカルザは無事だろう。


「チッ、流石に仕留めそこなったか」


 唐突なその言葉と共に、爆発の届いていない建物から男とその取り巻きが十人程、現れた。


「お前ら、革命軍か!」

「ああ。そして俺はその筆頭、シオンだ。『イングズ』の連中は仕留めたが、アマテラスは生き延びやがったか。柊が到着すると面倒だ。まずはお前らから処理する」


 革命軍のリーダー、シオンと仲間が十人で襲い掛かって来た。全員が銃を装備しているように見えた。

 こちらも全員銃を装備して、車から出る。


「こんな大惨事起こしといて、見逃す訳ないだろ! 覚悟しろよ革命軍!」


 僕は奴らに開戦の咆哮を上げた。



設定こぼれ話

革命軍の指揮、統括は全てシオンと最高幹部が行っている。今回現れたメンバーのうち四人は革命軍の最高幹部である。


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