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第31話 追走&襲撃

「…え? 時雨さん、本当ですか!?」


 あまりに衝撃的な発言に、僕は窓に首を突っ込んで時雨さんを見ていた。


「とにかく、今はアイツらを追わないといけない。二人も乗ってくれ。詳しくはそれからだ」


 僕たちは急いで車に乗り込んで、さっきの車を追い始めた。


「…あれ? そういえばそこの運転してる人は誰ですか?」


 さっきまではそれどころじゃなかったが、そういえば運転席にいる人に見覚えが無かったので聞いてみた。


「あー、君が東雲レイメイ君か。俺は岡田。刑事だ。柊から君のことは聞いている。よろしく」

「というか、何で岡田さんが車を…?」


 どうやら黄昏さんも、岡田さんとは知り合いのようだった。

 時雨さんによると、今日は朝から鬼灯さんと、皆の捜索のために福島に行っていたらしい。そこで殺人事件が起きて、犯人を追っていたところ、偶然休みで福島に来ていた岡田さんと合流して、今にいたるらしい。


「それでねレイメイ君、君に見てもらいたい物があるんだ」


 時雨さんがポケットから何かを取り出した。それはミサンガだった。

 忘れもしない。魔王討伐に行く前に、皆で作ったミサンガだ。この黄色と青のミサンガは、ジョンとカルザの物で間違いなかった。


「…間違いありません。ジョンとカルザのミサンガです」

「それが殺人事件の現場に置いてあったんだ。それで、俺なりに仮説を立ててみたんだけど…」


 時雨さんの仮説はこうだった。


 ジョンとカルザは、自分たちが何者かに追われている事に気が付いて、身を隠して生き延びていた。

 そしてそこを、殺されたというお爺さんに拾ってもらい、山奥の家でひっそりと暮らしていた。

 だがそこに何者かが侵入。お爺さんを殺害し、ジョンとカルザを誘拐した。


「…成程。大体は分かった。だが、仮にロールを殺した奴らと、二人をさらった奴らが同じだとすると、何故ロールは殺したのに、ジョンとカルザは誘拐なんだ? そもそも、二人は本当に誘拐されたのか? 人二人を抱えながらお前と追いかけっこなんて、すぐ捕まるに決まってるだろ?」


 仮説を聞いた黄昏さんが疑問点を言った。確かに、船長は殺されてしまったのに、二人は誘拐なのが少し変ではある。でも、今回はまだ希望が残っている。それは僕を突き動かす原動力になった。


「ジョン君もカルザ君も結構強いんでしょ? でもその割に、そこまで抵抗した痕跡が無かったから、犯人は二人を麻酔か何かで眠らせてからお爺さんを殺したんだと思う。おそらく犯人は複数、多分三人くらいだ。二人は先にジョンとカルザをつれて山を下りて、残りの一人が死体の処理をしてたんだと思う。そこに俺たちが来て、逃げて行ったんじゃないかな?」


 そうこう話しているうちに、ようやく前の車の姿を捉えることができた。

 この辺りも革命軍の被害にあったのか、酷い有様だった。だがその分、他の車はほとんど走っておらず、前の車だけに集中できた。

 …が、突然何かが弾けるような音がして、僕たちの車は停まってしまった。


「え!? 何が起きた!? パンクか?」

「いや違う、これは…!」


 僕は急いで車の外に出た。また狙撃されるかもしれなかったが、車の中で銃弾を防げる防弾チョッキを着たので、多分大丈夫だろう。

 『ソイツ』は、僕の気配を察知したようで、ビルの上から一気に地上まで降りてきた。


「…やっぱりお前か。よくも、よくも船長を殺してくれたな!」


 薄汚れた白いローブに、深くフードを被った、女性らしい体つきをした人物。

 …間違いない。船長を殺したアイツだ。

 僕は叫びながら彼女に接近した。そのまま全力の拳を振るったが、正面から受け止められてしまった。


「なっ――」


 そして反撃しようとした瞬間、そのまま僕は投げ飛ばされていた。


「レイメイ君! 大丈夫か!?」


 時雨さん達がこちらに来る。でも、それを許さない存在がいた。


「…!? また爆破!?」


 二百メートルほど先だろうか、ビルが燃えていた。また革命軍がテロを起こしたのだろう。


「アイツら、一体何がしたいんだ…!」

「皆さん! コイツは僕が絶対倒します! だから皆さんは車とテロを―――」


 僕が話している途中にも関わらず、女は殴り掛かってきた。その柔らかい体から勢いをつけて放たれる拳の威力はすさまじかった。


「東雲!」

「いいから早く行っ――」


 女が追撃しようとしたが、それを止める存在がいた。

 黄昏さんが女に向けて銃を撃った。彼女はそれをギリギリで察知して、驚異の反射速度で回避した。


「コイツは俺と東雲で引き受ける。三人は車の追跡とテロ平定を頼む!」


 黄昏さんが素早く指示を出す。その気迫に押されて、全員すぐに動き出した。


「黄昏さん…!」

「油断するな! 相手は馬鹿みたいに強い!」


 黄昏さんが警告した。女はすぐに動き出した。

 女の拳が再び襲い掛かる。かなりの速さだったが、僕は何故かそれを避けることができた。

 僕が攻撃を避けたところに、黄昏さんのカウンターキックが決まった。女はよろめいて、数歩後ろに後退した。

 女はローブのポケットの中から二本のナイフを取り出し、それを両手に持って構えを取った。


「こっからが本番って事か…!」

「許さない…、お前だけは絶対に許さないぞ!」


 因縁の戦いが、始まった。


設定こぼれ話

カルザ・ヴィクトリア

レイメイの仲間の一人。非常に頭脳明晰で、戦士でありながら島の技術発展にも貢献していた。その姿は正に、島民にとっての英雄であった。


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