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第29話 大戦の狼煙

 シェルターに辿り着いてから三時間が経ち、一時半という昼食には少し遅い時間になった。でも、シェルターには少量の食料と水しかなく、食料のほとんどは乾燥したような物でお世辞にも美味しいとは言えなかった。

 …これでも、島にいた頃よりは遥かに美味しい物を食べているのだと思う。でも何故か、今ではこの世界で美味しい物を普通に食べられることが「当たり前」になってきてしまっていた。

 何やってるんだろう。僕はそう思ってしまった。

 アマテラスに入ったのは、元の世界に戻る方法を探すためだ。柊さんとの約束があったから、僕はアマテラスに入って戦うことを決めた。

 最初は、元の世界に帰るまでの一時的な生活場所としか思っていなかった。

 でも、その考えは変わってしまった。さっきも、黄昏さん達が死の危険にさらされて、怖いと思ってしまった。その感覚は、見ず知らずの人を助けたいという感じの物よりも、もっと重く、もっと大切な人に対して向けられるものだった。

 段々と、この世界を心地よく感じてきてしまっている。多分それは悪い事ではないのだけれど、島の皆のことが頭をよぎり、何とも言えない罪悪感に見舞われる。


「…おい、皆やべぇぞ!」


 それまでの静寂を破るように、ビリーさんが叫んだ。


「どうした、ビリー!? まさか追っ手にここが気づかれたのか!?」

「…いや、違う。もっとヤバい事だ。革命軍を名乗る奴らが都内の投票所三カ所と環境エネルギー党の事務所で爆破テロを起こした!」


 ビリーさんの口から発せられた衝撃の情報に、その場にいた全員が驚愕した。


「ビリー! それは本当なのか!?」 


 シュトラウスさんが緊迫した様子で聞いた。


「ああ。現場はもう大パニックだ! 犯人たちが現場周辺で暴れていて、救急隊も迂闊に近づけない状態らしい! 爆破で相当な被害者が出ている。早く何とかしないとヤバいぞ!」

「幸い今この周辺に追っ手はいない。ただ、どうやら犯人たちは神宮さんを求めているみたいだ。本当なら今すぐ加勢に加わりたいところだが、奴らが神宮さんを求めている以上、迂闊には離れられない…!」


 革命軍は、テロをやめてほしければ神宮さんを渡せと言っている。でも、渡してしまえば今度は神宮さんが殺されてしまうだろう。

 大勢の一般市民の命を取るか、神宮さん一人の命を取るか。

 正にそんな禁断の二択だった。


「そんなの…、そんなの許せる訳ないじゃないですか!」


 気付けば僕は感情に任せて叫んでいた。


「恐怖で相手を跪かせて、大勢か一人かの選択を押し付けるなんて、極悪でしかない! 今すぐ革命軍の元に向かいましょう! 革命軍を倒せば、そんな理不尽な二択を迫られることもない!」

「だが…、いつ革命軍が神宮さんを襲うか分からない。テロを起こすことでこちらをおびき寄せる作戦かもしれないし…」


 黄昏さんが不安そうに言った。確かに、このテロそのものが罠の可能性はある。でも、だからといってこれを無視することは僕にはできなかった。


「だったらお前ら二人で行ってこい。神宮さんは俺たちでお守りする」


 名乗りを上げたのはビリーさんとシュトラウスさんだった。


「我々はここに残り、神宮さんを必ず守り抜く。お前たちはテロの平定を頼む! 今ならば外に誰もいない。ここを出るなら今しか無いぞ!」


 シュトラウスさんがそう言い、シェルターの扉を開けてくれた。


「二人とも…、ありがとうございます! アイツら絶対ぶっ倒してきます!」


 僕は二人と神宮さんにそう誓い、シェルターを飛び出した。その後に黄昏さんも続いて来てくれた。


「ここから一番近いのは環境エネルギー党事務所だな、そこに向かうぞ!」


 車は無かったので、僕たちは走ってそこに向かった。

 現場に近づくにつれて、その被害の惨状が見えてきた。遠くの方から、鼻の奥を刺激する焦げたような匂いがしてきた。走っていくうちに、周囲には爆破の被害が見え始めた。建物の一部が崩れ、黒に変色している部分もあった。

 倒れている人も現れ始めた。多くの人が、助けを必要としていた。

 ごめん。僕たちは皆を直接治すような事はできない。でも、必ずこの元凶を倒してみせる。

 心の中で詫びながら、僕らは走り続けた。


「東雲、アイツらだ」


 黄昏さんが目の前を指して言う。

 爆発の中心地にかなり近いのだろう。地面が大きく抉られ(えぐ)ているだけでなく、火事も起こっていた。

 環境エネルギー党の事務所は、辛うじてその形を残していた。爆発はあくまで事務所の近くで行われたようだ。

 そして、その事務所の前に佇む黒い車が三台。そこに数人が乗っていた。


「…サツ、ではねぇか。ならアマテラスだな。こんな所に何の用だ?」


 そこにいたリーダーと思しき男が言った。


「お前らを倒しに来たに決まってるだろ。こんなことしておいて、許されると思うなよ?」


 僕はできる限りの憎悪を込めて言い放った。だが、相手は一切恐れる様子は見せない。


「ホント、お前ら来るタイミング最悪だよ。あの人が戻るまで耐えなきゃじゃねぇか」


 どうやらその男は本当のリーダーではなく、他に誰かいるらしい。とにかく、さらに人数が増えたら厄介だ。僕らのやることは一つ。

 最速でこいつ等を潰すことだ。


設定こぼれ話

神宮ヤマトを襲撃し、失敗した後はテロを起こし神宮を要求した革命軍。彼らの真の目的とは一体…。


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