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第14話 警察と尋問ととうふや風斗

 会社、道場、柊さんの三か所で同時に行われたプランダーズの襲撃は、すべてアマテラスの勝利という形で終わった。


「よし、これで全員だな」


 僕たちは黄昏さん、時雨さんと三人で襲撃者たちを縄で拘束していた。柊さんは一度コンビニに戻って、そちらの襲撃者たちを片付けてからこちらに戻るらしい。


「いいか東雲。今から『警察』というやつらが来る。この襲撃者どもはその警察に引き渡す。いいな?」


 黄昏さんと時雨さんの説明によると、警察はいわば社会の平和を守る組織であり、アマテラスが犯罪者に対する『攻撃』だとしたら、警察は市民の『防衛』に近い存在らしい。

 しばらくして、赤い物体を上に乗せた白黒の車がやってきて、そこから沢山の青い服を着た人たちがあふれ出てくる。


「あっ! あの人達!」


 その特徴的な服を見て、僕はこの世界に迷い込んだ初日に、これと同じ服装の人達に追いかけられたのを思い出した。あれが警察だったようだ。


「はい。それで襲撃を受けて…。全員制圧をしましたので、後はそちらでお願いします。あと本社でも襲撃を受けましたのでそちらも…」


 車の一台から、警察の人と話す柊さんが現れた。


「あっ柊さん! 実は僕、この人たちに追われたことがあって…」

「あー、その件は無事解決したから大丈夫だよ。アマテラスは警察にもある程度コネが効くからね」


 それを聞いて僕は安心すると同時に、まだまだ謎の深いアマテラスの大きな力の一端を思い知って恐怖した。


「じゃ、あとは警察の人達に任せて、今日はお開きに…」

「あのーすいません、一応アマテラスの皆さまにも事情聴取を受けてもらいます。まだ帰らないでください」


 スーッと帰ろうとした柊さんの肩に警察の人が手を置いて引き留めた。


「東雲、今日は遅くなるぞ」


 黄昏さんの言った通り、僕たちはこの後長時間警察の人達との面談のような物に巻き込まれて、よく分からない受け答えを長時間にわたって行うことになった…。






 気づけば時間は二十一時になっていた。もう六時間近く警察署にいた。道場の襲撃に対応した僕と黄昏さん、時雨さんの対応は割と遅くに行われ、既に本社の襲撃に対応した人たちは解放されていっていた。


「東雲さん、最後に一つ、お伺いしてもよろしいですか?」


 警察の人のその一言で、僕は改めてその人と向かい合う。


「今回プランダーズは貴方を目的として襲撃を行ったようですが、何か心当たりはありますか?」

「…いや、僕はあんな人達何も知りません。今日初めて会いました」


 今でも、覇道が唐突に僕の名前を言い当てたときの恐怖は鮮明に残っている。僕の知らないところで一体何が行われているのだろう。


「成程。…率直にお聞きしますが、貴方は何者なのですか?」


 その質問に、僕は何と答えれば良いか分からず、何も言えなくなってしまった。その時突然部屋に柊さんが入ってきて、


「すいません、彼も疲れていると思うので、これくらいで解放してやってくれませんかね?」


 と警察の人に僕の解放を求めた。


「…まあ良いでしょう。今日のところはこれで終わりで。ただ柊さん、貴方には明日も聴取を受けて頂きますので、八時に署までお願いしますね」


 警察の人はそう言い、僕はようやく事情聴取から解放された。


「私はまだ後処理があるから帰れない。そろそろシュウ君たちも解放されると思うから、それまでここで待ってるといいよ」


 柊さんはそう言い残し、僕の元を去って行った。

 数分も待たずに、黄昏さんと時雨さんも解放された。僕と合流すると、二人は僕を連れてどこかへと動き出した。


「今日はもう遅いからな、料理を作る気にもならない」

「ケンタからお誘いがあったんだ。今日はそこで食べよう!」


 しばらく歩くと、とある店に着いた。どうやら食べ物を販売している店のようだ。


「とうふや風斗(ふうと)。知る人ぞ知る美味しい店ってところかな」


 時雨さんが店について説明してくれる。この店は、昨日の鍋にも入っていた豆腐という白くて四角い柔らかい食べ物を主とした料理をふるまってくれるお店らしい。アマテラスの祝杯でもよく使われる店で、アマテラスの人達は好意にしているようだ。


「おう、待ってたぞ。座れ!」


 店の中には既に鬼灯さんが待っていた。僕たちもそうなのだが、いたるところに絆創膏や包帯が巻かれており、非常に痛々しい。


「へいらっしゃい! お、時雨と鬼灯に…、黄昏とは珍しい組み合わせだな。そっちの白髪は新入りかい?」


 テーブルを四人で囲む形で座ると、頭にハチマキを巻いた男の人が話しかけてきた。口ぶりから、黄昏さん達とかなり仲が良いことがうかがえる。


「風斗さん、コイツは東雲レイメイ。ウチの新入りだよ。仲良くしてやってね」


 時雨さんが僕を男の人に紹介してくれた。それに合わせて僕もぺこりと頭を下げる。


「俺はこの店の店長で料理人の風斗豆次郎だ。よろしくな!」


 風斗さんも僕に自己紹介し返してくれた。気さくで話しやすそうな人だ。


「じゃあ風斗さん、俺はいつもので」

「俺もいつもの!」

「いつもので頼む」


 三人が一斉に「いつもの」を注文した。いつものって何だろう。

 メニューという物も見せてもらったが、僕はまだ字が読めないのでよく分からなかった。だから僕も「いつもの」とやらを頼んでみることにした。


「おまちィ! いつもの『至高の豆腐グラタン』だぜ!」


 四人の元に同じ料理が運ばれてきた。丸い皿の中は赤い汁のようなもので満たされていて、真ん中には中心が若干茶色に染まっている白い薄い物が乗っていた。メインの豆腐は見当たらない。


「…これ、大丈夫な奴ですか?」

「そう言わずに食べてみなよ! 美味しいからさ!」


 時雨さんが言った。黄昏さんも鬼灯さんも美味しそうに食べている。僕は覚悟を決めて、スプーンという道具で一口分すくって、口の中へと入れた。


「…うまい!」


設定こぼれ話

とうふや風斗の現店主・風斗豆次郎は二代目である。

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