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第13話 VS覇道

 僕と黄昏さん、時雨さんは覇道を正面から睨みつけて対峙していた。先に動いたのは覇道だった。


「やれお前ら」


 覇道が言うとさらに五人ほど武器を持った集団が現れ、僕たちに襲い掛かって来た。


「手数だけは多いな半グレ共が!」

「ま、数だけなんだけどね」


 でも、いまさら五人でどうすることもできるはずもなく、黄昏さんと時雨さんに一瞬でやられた。


「ま、これで準備運動は済んだっしょ」


 覇道は指の骨をポキポキと鳴らすと、近くにいた男から鉄の棒を受け取り、腕をぶんぶん回した。


「お前らぶち殺して、東雲レイメイだけ連れ帰ったる。それが俺の仕事だからな」


 覇道の動きは速かった。相変わらずのらりくらりとしているのだが、緩急がすごいのだろうか、その腹立たしい動きで高速で接近してきた。


月夜見型(つくよみかた)月下暗目(げっかあんもく)』!」


 急接近した覇道に対して、時雨さんは一瞬で姿を消した。と思ったら、いつの間にか覇道の背後に移動していた。覇道は時雨さんを見失うと同時に、口から血を吐いた。時雨さんは移動と同時に覇道に攻撃を入れていたようだ。


「速いな、こりゃちと本気出さねーといかさなそうだ」


 覇道の目にこれまでとは違う明確な意思が宿った。その意志とは恐らく、僕たちへの殺意だ。

 早く決着をつけないと危険だ。僕は覇道の元へ駆け寄り蹴りを入れようとしたが、


「お前はあっち行ってろ!」


 覇道が振った鉄の棒に当たり、遠くへ吹っ飛ばされてしまう。体の奥底から血が上ってくるのを感じた。物凄い腕力だ。


「お前は殺すつもりはないから下がってな、東雲レイメイ。…いや、殺してもいいって言われてたっけ? まあいいや」


 覇道が僕に話しかけている隙に、黄昏さんが後ろから接近していた。僕は覇道の気を引かねばと思い、咄嗟に変顔を作った。


「何だお前、この唐突な状況に気でも狂った——」


 覇道は黄昏さんに気付くこともなく、彼の一撃を顔面にもろに受けた。その巨体が大きく揺れた。が、倒れることはなかった。


「残念!」


 お返しとばかりに放たれた鉄の棒の一撃は、黄昏さんの頭を強打した。黄昏さんは何とか耐えていたが、道場の床がへこむ程の一撃だ。無事ではないだろう。


「黄昏さん!」

「シュウ!」


 僕と時雨さんは同時に覇道へと向かっていく。覇道は鉄の棒を大きく振り回して、僕たちは簡単にいなされてしまった。


「まずはお前から殺してやるよ!」


 覇道が黄昏さんの胸ぐらをつかみ、鉄の棒を構える。頭を叩き割るつもりだろう。


「…おい、その人は不愛想だけど僕の大事なバディなんだよ。ふざけた真似してんじゃねぇ」


 僕の体は信じられないほど早く動いていた。ほぼ一瞬で覇道の元まで移動し、彼の顔を下から突き上げた。


「はぁ!? お前、速すぎっ——」


 僕は構わず攻撃を続ける。敵の武器を奪うのが得策と考え、鉄の棒を持っている右手を中心に奴を殴りまくった。


「お前っ…、やってくれんじゃねーかよ!」


 覇道の表情が怒りで歪む。一瞬、彼の左手が持つ何かが光ったような気がした。


「レイメイ君! 下!」


 時雨さんが叫んだ。僕は下を見ると、覇道の左手にはナイフが握られていて、それが僕の腹に迫っていた。

 反応できないと絶望しかけた時、その手を握って止める者がいた。


「お前…、まだ動くのかよ」


 黄昏さんが僕への攻撃をギリギリで止めてくれたようだ。震えるその体で覇道の左腕を必死に握りしめている。


「もう…バディが死ぬのは御免なんだよ!」


 黄昏さんは右手で拳を作り、覇道の顔をぶん殴った。その威力に覇道は大きくのけぞった。


武御雷型(たけみかづちかた)武勝雷裂(ぶしょうらいれつ)』!」


 そこに間髪入れずに時雨さんの刀が覇道の頭に直撃し、床まで叩き落した。


「レイメイ君! とどめ!」

「了解です!」


 僕は跳びあがり、自分の体重も乗せた全力の蹴りを覇道の頭にぶつけた。

 ゴキッと鈍い音が鳴り、覇道は白目を向いた。ようやく気絶したみたいだ。


「リーダー覇道の気絶を確認、他メンバーも全員撃沈。プランダーズ撃墜完了!」


 時雨さんが勝どきをあげた。それを聞いて僕は安心してへなへなとその場に座り込んだ。


「みんな!? 大丈夫!?」


 柊さんが慌ただしく道場の中へと入って来た。見たところ目立った傷はなさそうだ。


「はい…、なんとか片づけました。社長も無事でよかったです」


 どうやら柊さんはコンビニの前にいたプランダーズをすべて一人でやっつけてきたらしい。しかもほとんど無傷で。とんでもない強さなのだろうなと、考えるだけで恐ろしい。


『ナギ! 社の方も何とか片付いたぞ! そっちも無事か!?』

「ああ。全員倒した。三人とも無事だよ」


 鬼灯さんたちの方も無事に片付いたようで、どうやらプランダーズの襲撃は全て失敗に終わったらしい。


「とりあえず、そろそろ県警が来てくれるはずだから、それまでここで待とう。でも、今回も無事、襲撃を乗り越えたぞー! ヤッター!」


 柊さんが嬉しそうにガッツポーズをする。それに乗じて僕たちも勝利を喜んだ。

 みんな無事でよかった。僕は心の底からそう思った。


設定こぼれ話

アマテラスが一年間に受ける襲撃の平均回数は三~四回程度。アマテラスはよく半グレや暴力団の行動を妨害しているが、ここまで大々的に襲撃されることが少ないのは、アマテラスを襲撃した組織は例外なく完膚なきまでに壊滅させられているから。


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