ふくらみ左折をする理由を推理してみた【交通事故撲滅エッセイ】
最近、車を走らせていて、危ない場面を何度か見ました。
どれもすべて同じことが理由で、車と車がぶつかりかけたり、車が自転車を轢きかけたりしていました。幸い事故にはなりませんでしたが──
どれも『膨らみ左折』が理由でした。
以前、どれかのエッセイで『ショートカット右折』について書きました。
最短距離で右折をして来た車に、私は轢かれそうになりました。
幸い、何事もありませんでしたが、気が急いでいた私が歩いていると、乗用車がいきなり角から現れ、私のギリギリ前を通って行ったのです。
私が足を止めていなければ、タイヤは私の足の甲の上を通っていたことでしょう。
そのことがあった直後に、『ショートカット右折は危険だよ』というエッセイを書いたように思います。
『右折は大回り、左折は小回りでお願いします』と書きました。
日本では、自動車や自転車は、左側通行です。
右折で最短距離を通ると、陰から出てきた対向車の直前を通ることになります。
タイミングが悪ければぶつかります。相手が自動車でなく、そのままの勢いで横道から出てきた自転車だったら、殺してしまうこともあり得ます。
だから右折は見通しがよくなるように、また右折先から何が飛び出してきても大丈夫なように距離をとって、大回りするのが安全です。
右後ろから追い越そうとしているバイクもあるかもしれません。右折でショートカットをすると、バイクから見るといきなり自動車が自分に体当たりをしてくるような形になります。
そして日頃見ていると、ほぼ100%の車がショートカット気味の右折をしてしまっています。
程度の差はありますが、右折した先のセンターラインや通行帯を踏んでいる車がほぼすべてです。
『なるべく』でいいですので、右折先のセンターラインを踏まないように意識することをお勧めします。
さて、膨らみ左折とはどういうものか?
ショートカット右折の反対です。
左折する時に大回りをすることを、そう呼びます。
これをすると、ショートカット右折と同じように、対向車とわざわざ接近することになります。対向車は自分から向かって右から来るのに、そっちに向かって一度大きく頭を振るわけですから、当然ぶつかりそうになります。また、右後ろから追い越して行く車にもぶつかることになります。
また、左からすり抜けようとするバイクや自転車を引っ掛けることになります。そういう危険が入り込まないよう、左折の時には左側へ寄るのが安全なのです。
ショートカット右折をする車と比べると、膨らみ左折をする車はまだ少ないように思います。
ただ、程度はこちらのほうがひどいです。
ショートカット右折は『心持ちショートカット』が多いのに比べて、膨らみ左折をする人は大抵『ひどいほどの膨らみ左折』をするのです。
なぜ、膨らみ左折をするのか?
私には不思議でなりませんでした。
右折は最短距離を通るのに、左折ではなぜ、わざわざ遠い距離を走るのか?
ちなみに私は初心者だった頃から膨らみ左折をしたことはありませんでした。教習所で習う『左折をする時はまずウィンカーを出し、左側へ車体を寄せてから、初めて左折を行う』を守っていたからです。
なぜ膨らみ左折をするのか……。
簡単に思いつくのは、左側の車体感覚が右側よりもわかりにくいからでしょう。
運転席は右側にあるので、左側は運転手から遠くなります。
わかりにくいので、何かにぶつからないように、距離を開けるのでしょう。
実際、膨らまないと曲がれないような鋭角カーブはありますし、大型トラックなどが狭い入口に進入する時には膨らまないと左側をクラッシュしてしまいます。
でも、大型トラックでも膨らまないで曲がれるようなカーブを、ほぼ対向車線にはみ出す勢いで膨らんで左折する軽自動車なんかもたまによく見ます。
まぁ、何が何でも左側をぶつけたくないから、また怖いからという理由で、オーバーにそれだけ左側を空けるのでしょう。
ただ、それだけでは納得できません。
右折ではショートカットをするということは、できるだけ短い距離を走りたくはあるはずです。
それを左折ではあれほど大袈裟なぐらいに遠回りするというのは、その心理に矛盾を感じます。
ここで思い出した出来事があります。
あれは私がパチンカスをやっていた頃のことです。
当時の私は硝子瓶会社に務めており、外回りの仕事をやっていました。よく仕事をサボってパチンコ屋へ、パチスロを打ちに行っていたものです。
私があっという間に3万円負け、駐車場に停めた車の中で途方に暮れていた時、それは起こりました。
立体駐車場でした。
入って来た乗用車が、停める場所を探してゆっくりと走っていました。
左のほうに空いている枠を見つけたのでしょう。その車が左折をはじめました。運転手のおじさんの顔がはっきりと私から見えていました。
『あ……』
あぶない、と呟く間もありませんでした。
おじさんの車の左側に聳えていた鉄の柱に、おじさんが車の左側をめり込ませたのです。
ぐっしゃ……
鉄の折り紙を折るような音がしました。
おじさんはショックを受けたような顔をして車を一時停止させ、ゆっくりバックして鉄の柱から離れると、そのまま車を停めずに、駐車場の外へと逃げるように出ていきました。
その後ろ姿を見送りながら、私は呟いていました。
「おじさん……。早いよ、ハンドルを切りはじめるのが早い」
そう。
最短距離を走りたがるということは、即ちハンドルを切りはじめるのが早すぎるのです。
乗用車のほとんどに採用されているFF(前輪駆動車)なら、車のボディーが半分に差し掛かるぐらいで切りはじめ、半分を越えたあたりで戻しはじめるぐらいにすれば、大体左側のインギリギリを車は通ります。
おじさんが乗っていたのはFR(後輪駆動)のセダンでした。挙動に違いがあるのか知りませんが、FRのほうがハンドルがよく切れるとは聞いたことがあります。現在私が乗務している大型トラックは8✕4軸の後輪駆動ですが、大型トラックが前輪駆動だったら小回りが効かないと聞いたことがあります。
おじさんの乗っていたセダンが特別小回りの効く車だったとして、普段FFに乗り慣れていたから、思ったよりハンドルが切れすぎて、鉄柱にぶつけてしまったとも考えられますが、それにしてもハンドルを切るのが早すぎました。
早く曲がりたいから、早くハンドルを切る。
でもハンドルを切るのが早いから、左側に寄っていたのでは車体の左側をぶつけてしまう。
だから、左折の時には、大きく膨らむのか?
ハンドルを切るタイミングをもう少し遅くすれば済むだけなのに?
ここに『左側の車体感覚がわかりにくい』ことを絡めれば、なんとなく納得できるような気はしてきました。
でも、ここでまた、私には思い出してしまった出来事があります。
あれは私がバイクに乗っていた時のことでした。
片側一車線、広くはないけどそれほど狭いともいえない道でした。
私の前を、カップルが乗ったトヨタBbが走っていました。
その後ろを走っていると、ふいにスーッとBbが、右折専用車線へ移動したのです。
『え……? ウィンカー出してないけど、右折するのかな?』
それならその左側を通って直進しようかと考えた私は、いや待て待てと用心しました。
『嫌な予感がする。もしかしたら……』
私が予感した通りでした。
Bbはいきなり左ウィンカーを出すと同時に、左側にあったホームセンターへ、物凄い勢いで左折したのです。
私がその左側を通って行こうとしていたら、ギロチンを落とされるように、巻き込まれていたでしょう。死んでいたかもしれません。
こういう、何の意思表示もせずにゆっくり右に寄ってから、いきなり物凄い勢いで左折する車というのは、意外に多いものです。
どうか、お気をつけください。
そして、ここにおいて、私の推理は完結しました。
膨らみ左折をする車は、なぜ、そんなことをするのか?
1、左側の車体感覚がわかりにくいから
2、ハンドルを早く切りたいから
そして……
3、速いスピードで左折したいから
この3つの組み合わせで間違いない。
ゆっくりゆっくり膨らみ左折をする人もいらっしゃいますが、あれはきっと意味もなく、膨らみ左折をするオッサンの真似をしているだけなのでしょう。単に癖になっているだけと思われます。
わっ……。長くなってしまった。
ここまでで3,300文字もかかるとは。
とりあえず、ショートカット右折にしても、膨らみ左折にしても、『早く曲がりたい』『速く曲がりたい』という気持ちが原因なのだと思われます。でも車体感覚には自信がないから、大きく膨らむ……。
ゆっくり曲がりさえすればいいことですよ。
交差点など右左折する場所は事故のもっとも起こりやすいところ。
曲がる時は焦らず、ゆっくりとを心がけましょう。
あまりゆっくりすぎると後続車にブーイングされるでしょうけど、自分のペースでいいのです。
ただ、ウィンカーは早めに出してください。
ブレーキランプを先に点けてからウィンカーを出される方が意外に多いですが、それでは後続車はあなたが何をしたいのかがわかりません。
後続車がビタづけしていて怖いなら、かなり早くからでもウィンカーを出してください。それで後続車も合わせて事前に車間距離を空けることができます。
それでも離れて行かないなら無視して構いません。焦らず、平常心で、お願いします。
とりあえず、『右折は大回り』、『左折は左側を詰めて』が安全だということを忘れないでください。
もちろん最初のほうに書いた通り、『なるべく』で構いません。
私もこの間、暗い夜の道で左側に縁石があることに気がつかず、大型トラックの後ろのバンパーを擦ったばっかりです(恥)
左側を詰めるといっても、やりすぎると実際、ぶつけます。
私も気をつけます。