2回目の決闘戦1
ニノが特訓に参加するようになってから、時が経つのは早いもので、決闘戦の日になった。
そして、俺は今、決闘戦の審判の服を着て、生徒たちの審判をしている。
「では、始め!」
これを説明するには時を少し遡る必要がある。
決闘戦前夜、俺は校長先生に用があると呼び出されていた。
「呼ばれて来ましたアレクです。どのようなご用件ですか?」
「来てくれてありがとうのぉアレク。お主に頼みたい事は決闘戦での審判じゃよ。」
「自分がですか?他の人とかでいいんじゃ?」
人が足りないとかだろうか?でも、1つの組に1人の先生がいるから足りないって事は無いと思うんだがな。
「アレクの疑問も最もじゃ。理由じゃが、アレクが審判なら怪我人を減らせると思ってのぉ。お主なら寸でのところで止めに入れるじゃろ?」
「止めれますけど、まさかそれを俺がやれと?それこそ先生達がやるべき事じゃ。」
無力化させるには相手よりも上の実力が必要だ。それを生徒の俺に頼むとはな。
俺が不思議に思っていると校長先生はため息を吐いて言った。
「アレク、お主は自分で思っているよりも強いのじゃ。それこそ、この学校にいる大半の教師よりものぉ。」
「えっ!」
そんなわけ…いや、確かにそうか。今の俺は父さんと同程度の強さはあると思うが、そうしたらこの学校の教師全てがSランク程の強さがある事になるな。
「理解してもらえたかのぉ?」
「はい。」
「なら、頼んじゃぞ。」
「…分かりました。俺も怪我人は出てほしく無いですから。」
と言う経緯で俺は審判をやっている。
そのように昨日の事を思い出していると、出場者の決着が着きそうになる。
今までの決闘戦ではどうしても血を流す事があった。身体強化で守られているとはいえ、その身体強化よりも強い身体強化の攻撃を受けると生身に攻撃を受けてしまう。
そこで、俺の出番だ。俺の古代の身体強化を付与して、丁度身体強化が無くなるように調整する。
すると、俺の古代魔法を付与された出場者は身体強化が割れるだけに収まった。
「勝者、1年23組バナリ!」
俺は勝者側の方の腕を上げて、勝者の証をバナリに渡そうとすると、他の所で勝負が着きそうになったので、古代の身体強化を付与する。
今ので分かる通り、俺は去年よりも4ブロックも増えた16ブロックの内、1つのブロックを1人で全て担当している。
校長先生からの信頼が重い。
俺は決着がついたもう1つの出場者の勝者の名前を言い、勝者の証を渡した。
はぁ、大変だなぁ。
そう思いながらも俺は順調に審判をやっていき、予選の審判を全て終わらせた。
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決闘戦の本戦当日、俺は専用の控え室でベテラン審判の人と話していた。
「アレク君、今回はよろしくお願いします。」
「あっ、こちらこそよろしくお願いします。」
そう言い俺達は互いに握手をする。
「では早速、アレク君がやる事を話します。」
そう言ってベテラン審判の人は話し始めた。
内容はこのようなものだ。
・ベテラン審判の人が審判をして、俺は選手たちの怪我の防止に集中して欲しい事。
・何か異常があったら報告して欲しい事。
この2点だけだった。流石に俺に決勝戦の審判はやらせないわな。校長先生が常識を思っていて良かった。
そうして、ベテラン審判からの話しは終わり、始まるまで待機となった。
俺は決勝戦の対戦表を見ると、知っている名前が結構あった。
ニノは勿論、ミミの名前もある。
ミミは決勝戦まで行けたか、いけるとは思っていたが不安だったからな。これで一安心だ。
他にも、朝一緒に鍛練をしている三年生や同じ組の人の名前もある。知っている名前があると嬉しいもんだな。
そんな事を思っていると、外から歓声が聞こえて来る。多分、校長先生が登場したのだろう。
それから校長の話と選手たちの紹介が始まり、俺はベテラン審判の人に声をかけられた。
「アレク君、準備は大丈夫?」
「大丈夫です。」
「なら、いくよ。」
俺は審判の人について行き、選手たちが入場する入り口で紹介が終わるまで待機している。
それから選手たちの紹介が終わり、俺と審判が入場する。すると観客席が騒めき出した。
気になるが、俺は審判としての仕事を真っ当するため集中する。
真ん中まで行き、赤線がちゃんとあるか、そしてフィールドに何か仕込まれていないかを確認する。
確認し終えると俺は真ん中に向かい審判に異常がない事を報告しあった。
ベテランなだけあって仕事が早い。
報告し終えると俺は入り口に戻り待機する。
それから少し経つと選手が見えて来る。その選手たちはどちらも知っている人だ。
「マーク先輩、ノート先輩決勝戦進出おめでとうございます。」
「ありがとう。それにしてもアレク君が審判をしていると話には聞いていたけど本当だったんだね。」
「自分も驚きです。」
「まあ、校長先生にお願いされましたから。それに出場できなくて暇だったんで。」
そう話していると、案内役の人が言う。
「早く来てください。」
「おっと、僕達はもう行かないとね。」
「2人とも応援しています。どちらも全力で戦ってください。怪我はさせませんから。」
俺はそう言い、古代魔法を見せる。
2人は短く返事を返し、揃って会場に繰り出した。2人の装備はマーク先輩は剣で、ノート先輩は剣と盾だ。
それから2人の戦いが開始されて、勝者はマーク先輩だった。その後2人は硬い握手を交わし、2人の強い友情が表れている。
2人の戦いはどちらもレベルが高くどちらが勝つか分からない、興奮冷めやまない戦いで観客達の心を鷲掴みしていた。
そして、どちらも限界と言うところで2人が激突し、マーク先輩が左腕の身体強化を解除し、左腕を盾の代わりとする事でノート先輩の攻撃を防ぎ、マーク先輩が攻撃して決着がついた。
こういう事があるから、致命的な攻撃以外は古代魔法を使わないようにしている。使ってしまうとせっかくの策が台無しになるからな。
それから第2、3と終わり、4試合は朝の鍛練にいる先輩と俺のクラスメイトとの戦いがあり、先輩が勝利した。
クラスメイトは後で慰めよう。
そして、5試合目ニノの番だ。俺は奥から対戦者と一緒に来るニノが見える。
ニノが俺に軽く手を振ってきたため、俺も軽く手を振りかえす。そしてニノが出場すると時小さく言う。
「頑張れ。」
「うん。」
ニノはそう返事を返し、会場に繰り出す。そして、ニノのことを観客達が見ると、観客達が一斉に騒ぎ出す。
それだけ、ニノの注目度が高いのだろう。ニノは人気だな。
そして、ニノとその対戦者との勝負が始まり、一瞬で決着がついた。ニノが対戦者の首に剣を当てていたからだ。
多分だが、大体の人が気づいた時にはニノが後ろにいたと思っただろう。
ニノの奴、最初から全力を出しやがった。古代の身体強化もギリギリだ。
そして、審判の人が宣言をして、ニノが勝者となり、歓声が湧き上がる。対戦者はまだ放心状態のようだ。
ニノは退場するため俺の前を通ると、隠しているが褒めてと言わんばかりの雰囲気が出ている。
俺は何をやっているんだと思ったが、ニノに並んで歩き、頭に手を置きながら「おめでとう」と言う。
ニノは“ピクッ“と反応すると、スタスタとそのまま控え室に去ってしまった。
それから、6試合と進んでいき、7試合目は朝の鍛練を一緒にする三年の先輩が勝利し、ミミが登場する8試合目になる。
「ミミ、頑張れよ。」
「先輩にあれだけ特訓に付き合ってもらったんです!絶対に勝ちます!」
そう言ったミミからはやる気が満ち溢れている。ミミがこんなにも張り切っているのに、俺が不安そうにしていたら格好悪いな。
「なら、絶対に勝て!」
「はい!」
そう話していると、ミミの対戦者が声をかけてくる。
「ミミさん、今日はよろしくお願いします。」
「よろしくねロレント君!」
ロレントとミミに呼ばれた生徒はミミと同じ1年生の男子生徒で、騎士爵の子だ。
ロレント君は俺がミミと特訓をしている時に現れ、俺に勝負を仕掛けて来たのが出会いのきっかけだった。
だが、俺は何故かこの子に嫌われているようで、ロレント君がミミと会話をすると、俺を見て自慢げ?にするんだ。
だけど、ロレント君はしっかりとしていて、敗北を認め、より強くなるために努力するような子だから、俺としては仲良くしたいと思っている。
「お二人共、早く来てください。」
少し、長く話しすぎたな。案内役の先生に呼ばれ2人は急いで向かった。
そうして、2人の勝負が始まり、激戦の末ミミが勝利したが、俺はそれよりも驚いたことがある。
それは、決闘戦1週間前から来なくなったロレント君が荒削りだけど、ミミと良い勝負をするほどの力をつけていたからだ。
だが、ロレント君と俺は同じく剣を使うため、ミミに戦い方を知られてしまっていた。
そのせいで、ロレント君は負けてしまったと言っても過言じゃないだろう。内心はとても悔しい筈だ。
それでも、ロレント君はしっかりとミミに対戦してくれた礼をし、少し何かを話すとミミと一緒に退場した。
俺はなんと声をかければいいか迷ったが、ロレント君の顔を見ると、あまり悔しそうにしていなかった。
そのまま俺の前を通ってロレント君は去って行き、ミミが残る。
俺はミミが事情を知っていると思い質問する。
「ミミ、ロレント君は大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思いますよ、ロレント君は先輩を超えると話していましたから。だから挫折なんて事はないと思います。」
「そうか、教えてくれてありがとうな。」
そうして、ミミが去って行き、俺は審判としての仕事を再開するのだった。
騎士爵とは1代限りの爵位で王家は無制限で、男爵から公爵の者が限られた数の中で与える事ができる。
基本的な従事騎士の人数
王都の騎士団は500000
公爵家の騎士団は30000
伯爵の騎士団は10000
例外として、辺境伯の騎士団は100000
子爵の騎士団は5000
男爵家の騎士団は1000
王都の騎士団の半数以上は任務や国境警備などで王都には居ないが、最高指揮権は王家にある。




