新しい技術
ミミとの特訓を開始する前に俺はニノと身体強化無し、魔法無しの模擬戦をする。
俺は模擬戦前にミミにニノの動きに注目しておけと話しておいた。少しでもニノと戦えるようにと思ったからだ。
まあ、ミミにそんな心配はいらなかったようだがな。
俺はニノに剣を構えながら横目でミミを見ると真剣な空気が溢れ出している。
するとよそ見をするなとニノに圧をかけられた。
それに対して俺も圧を返す。ここからはもうニノしか見ない。
「それじゃあ、始めるか。」
「ん。」
俺が緩くそう言った次の瞬間俺とニノの剣がぶつかり合い、それから何撃か打ち合いが起こる。
俺は間髪入れずに体術も入れていく。それに対し、ニノも合わせるように体術を使い俺の攻撃を防ぐ。
だが、俺がいくら攻めてもニノの防御を崩せない。これは単純に剣術の練度の差だ。
だから、俺が勝つにはニノに攻撃をさせないで俺が攻撃をし続けるしか無い。
俺は集中する。少しでも隙が見えてしまった瞬間、ニノに主導権を奪われる。
そして、ニノに攻撃をしようとした次の瞬間ニノの剣が目の前にある。咄嗟に身体を逸らして避けよとしたが、避けきれずに当たってしまった。
「…なんだ、今の。剣が通り抜けたように感じたんだが。」
「秘密。それに教えてもアレクにはできない。」
ニノができないと言うなら俺にはできないのだろう。ニノは強くなることに関しては俺に嘘をつかないからな。
「そうか、無理なのか。まあ、それにしても驚いたな。あんな剣技があるなんて。」
俺がそう言うと、ニノが話そうとするのを遮るようにミミが近寄って来る。
「アレク先輩!大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。かっこ悪いところを見せたな。」
「そんなことありません!先輩はとても格好よかったです!」
「そうか?ありがとうな。」
真っ直ぐな瞳で褒めてくるミミに少し照れて視線を横に向けるとニノが不機嫌そうに俺を見ていた。
「あっ、すまんすまん。ニノは何を話そうとしていたんだ?」
「…これはラーヤが考えた技で私の技じゃないと話そうとしてた。でも邪魔が入った。」
そう言うとニノはミミを睨む。だけどミミは臆することも無く笑顔で言う。
「ニノ先輩、もう模擬戦が終わったので帰ってください。後は私とアレク先輩で特訓をしていますから。」
「生意気。」
俺には2人の間に何故か火花が見える。初対面なのに仲悪すぎじゃね?
「はいはい、そこまで。ニノも条件なんだから帰りな、部活もあるだろ。」
「でも。」
「でも、じゃない。条件は条件だ。約束を守らないと信用されなくなるぞ。」
「そうですよ!」
ミミが野次馬みたいな事を言うが、俺がそう言うとニノはショボンとする。罪悪感が湧くがこれも冒険者になる時に必要なことだ。
「…分かった。そして、アレクも約束を守る。」
「休みの日だろ。分かってるって。」
「ん。じゃあね。」
そう言ってニノは去って行った。
「やっと、行きましたね。」
「まあ、俺の幼馴染をそう嫌わないでくれ、無表情だが、いい奴なんだ。」
「別に嫌って無いですよ、ただ不満なだけです。折角の先輩との特訓を邪魔されましたから。」
「でも、ニノの動きを知れただろう?」
すると、ミミは今思い出したかのようにハッとする。
「それですよそれ!先輩達の動きやばすぎですよ!本当に人間なのか疑いました!」
「そうか?まあ成長期だからな。そのせいだろう。」
「絶対成長期のせいじゃ無いと思いますが、まあいいです!アレク先輩特訓をお願いします。」
「おう。」
こうして、ミミとの特訓にニノがお邪魔をするようになった。




