王都へ行くメンバー
サンア達と別れた俺達は色々な所を食べ歩いた。
その他にも部活での出し物で魔法の的当てがあったんだが、俺とニノが的の中央に当てまくるとどんどん部員の人達の顔が青くなっていたので途中で辞めておいた。
そんな感じで学校祭を楽しみ、夕暮れになり始めた頃。俺は王都に行く事をニノに話そうと思った。
「ニノ、少し話しが有るんだがいいか?」
「何?」
話そうと思ったが周りには人が大勢いる。話すなら場所を移した方がいいだろう。
「ここじゃ、何だから場所を移そう。」
「?分かった。」
そうして、俺達は校舎裏に来た。
だが、俺はここでチキンハートが発動してしまい、黙ってしまう。
「話って?」
不思議そうにしながら聞いてくるニノ。話しがあるって言われたのに何も無かったら、まぁ不思議に思うな。
俺よ!漢を見せろ!
「ニノ、俺さぁ、2年になったら王都に行くんだぁ。」
だが、俺の声は漢らしさのかけらもない、か細い声しか出なかった。
そして、俺がそう言った瞬間空気が変わった。ニノから圧が漏れているんだ。
「…どのくらい。」
ニノの顔が"無"だ。表情が一切読み取れない。
「え、えっーと、に、2、3ヶ月くらい?」
「駄目。」
「い、いや、これはニノと冒険者をするためには仕方がないんだ。」
「…どういうこと。」
少しニノの圧が和らいだ。どうやら話は聞いてくれるらしい。
そこから俺は校長と話した事をニノに説明した。
「と、いうわけで何とか王都の学園に行かないようにしたんだ。まあ、その交換条件が王都に行くことなんだが。」
俺が説明し終わるとニノは何か考え事をしているようだ。
そして、考えがまとまったのかニノは俺を見て言う。
「なら、私も王都に行く。」
「え?」
「だから、私も王都に行く。」
ニノは何を言っているんだと思った。王都に行く?学校はどうするんだよ。それに、行くとしても校長の許可も必要だ。
「ニノ、すまんが無理だと思う。行くとしてもまずは校長から許可を貰わないといけない。」
「なら、許可を貰ってくる。」
そう言って歩き出そうとしたニノの手を掴み止める。
「待て待て、今は学校祭だから校長も忙しいだろう。だから許可を得るなら学校祭が終わってからにしろ。」
「…分かった。」
一応ニノは理解してくれたようだ。
「それに、お前はどういう名目で王都に行くんだよ。ニノは古代魔法学部じゃ無いだろう。」
「アレクの、妻として?」
そうニノは言ったが自分で言っていてとても照れている。恥ずかしいなら言わなければいいのに。
ニノが冗談を言えるようになったのを喜ぶべきか、それともこんな時に何を言っているんだと怒るべきか、とても迷う。
「確かに貴族とかが王都の集まりに行く時は妻を連れていくって聞いた事はあるが、俺達はまず貴族じゃ無いし、王都に行く目的が違うからな。」
「…アレク、恥ずかしがって無い。」
「いや、お前がただ自爆しただけだろ。」
ニノはさっき俺が言っていた話を聞いていたんだろうか。
「…アレクと王都に行きたい。」
そうニノは悲しそうに言う。
「ハァ〜、分かった、分かった。ニノが連れて行ってもらえるように俺も頭を下げるよ。」
「本当!」
「本当だ。」
「嬉しい。」
はあ、色々と予定は狂ったが、ニノが笑顔ならそれでいいか。それに先輩達なら快く承諾してくれるだろう。
問題は校長先生だが、まあ何とかなるだろう。
こうして、俺の目的は無事に達成(?)されたのである。
そして、学校祭が終わった。俺達のクレープ屋は在庫の品切れでの完売という。とてもいい成果で終えることができた。
そして、後日ラーヤにも王都に行く事を伝えたら何故か褒められた。本当に何故?
それから、少し経ち俺達は2年生への進級試験をやった。
この試験は進級の他に、クラス決めの役割もになっており、成績が高い順から1組、2組となる。
そして、三年生の卒業式が終わり、俺はニノと一緒に古代魔法学の部室に向かう。
因みに、ニノは俺と王都に行く事になった。校長に許可を貰いに行ったら、軽くOKしてくれたからだ。
校長が言うには、成績が良ければ別にいいらしい。俺はよくこんな適当な運営で学校を回せているなと思った。
「こんにちわでーす。先輩達は?」
「先輩達ならまだ来てないよ。多分だけど教室で最後の別れをしているんじゃないかな。それで、後ろの子は誰かな?」
俺は俺の後ろにいるニノを前に出してメレス先輩に紹介するように言った。
「自分と同じ出身地で同じ組のニノです。」
「ニノです。アレクのように強くなるため、古代魔法を学びに来ました。」
俺はニノが言ったことに驚いた。事前の話ではそんなこと一言も言っていなかったからだ。
「ふむ、そうか、なら試してみよう。アレクの友人でも容赦は無いぞ。」
モノス先輩がそう言って、ニノに古代魔法の基礎知識の問題用紙を渡した。
「これを解いてくれ。」
「分かりました。」
そう言ってニノが古代魔法の基礎知識の問題を解いていく。
ニノは古代魔法を知っているんだろうか?
そう思っていると、メレス先輩が俺に近づいて来て小声で質問してくる。
「アレク、あの子って決闘戦でアレクと戦った子でしょ。それでどのくらいできるの?入部は古代魔法の基礎知識が無いと入れないようにしているから、アレクの友人といっても解けなければ流石に入れる事はできないよ。」
「自分も分からないんですよ。ニノがいきなり古代魔法を学びたいって、今聞いたものなので。」
「なら、あの子をどうして連れてきたの?」
「ああそれは、ニノも王都に付いて来るんで紹介しようと思ったんですよ。」
「そうなんだね。なら校長先生からの許可を貰っているってことでいい?」
「いいです。」
それから少し経ち、ニノが問題を解き終わる。その回答用紙をモノス先輩が受け取ると採点をしだした。
俺はニノに近寄り、真意を探ろうとする。
「ニノ、何だってこんな真似をしたんだ?」
「さっき言った。強くなるために学びにきたって。」
「えっ、本当にそれだけなのか?」
「うん。他にあるとしたら古代魔法について学ばないと失礼だと思った。」
「そうか。それで、あれは大丈夫そうなのか?」
俺はそう言って採点をしているモノス先輩を指さす。
「大丈夫だった。」
「ならいいんだが。」
そうしてニノと話しているとモノス先輩が一息ついた。
どうやら採点が終わったようだな。
「ニノ、君を歓迎しよう。」
「ありがとうございます。」
ニノがそう言うと、メレス先輩がモノス先輩に近づいて言った。
「大丈夫だったんだね。僕にも見せてくれない?」
「ああ、メレスにも見てもらいたい。」
「なら、自分も。」
俺がそう言うと、モノス先輩が俺にも見えるように回答用紙を見せてくれた。
「満点じゃないか。凄いね。」
「ああ、俺も驚きだ。」
「ニノって古代魔法の勉強をしてたのか?」
俺がそうニノに聞く。
「うん。学校祭が終わってから勉強を始めた。」
それを聞いた俺達は驚愕を隠せなかった。
何故なら、まだ学校祭が終わってから2週間くらいしか経っていないからだ。
そう驚いていると部室にディナ先輩達が入って来た。そしてディナ先輩がニノを見て言う。
「あなたはアレクくんと戦った子でしたね。何か用事でも?」
それに答えたのはメレス先輩だった。
「王都について来るそうですよ。それで、古代魔法を学びたいそうなので基礎知識を確かめたところ、満点でした。」
そう言ってメレス先輩は回答用紙を先輩2人に見せる。
「すげぇな。」
「確かに凄いですね。アレクくんと同じで入学時に満点を叩き出した頭脳は伊達では無いと言うことですね。」
「確かにそんな事を話していましたね。」
「俺は物凄く強かったことしか覚えてねぇな。」
ディアン先輩の言う通り、ニノは決闘戦の影響か学校では強い人というイメージになっているが本当は頭脳明晰でもある。
そこでディナ先輩が手を叩いて言った。
「話はそこまでにしましょう。ではニノさんに確認ですがニノさんはこの部活に入りたいのでしょうか?それとも、王都に行く期間だけ部員になりますか?」
そう聞かれてニノは迷っているようだ。多分、先輩達に失礼がないようにしたいんだろう、それともラーヤが剣術部だからか?いや、両方だな。
「ニノ、別に王都の期間だけの方を選んでもここの先輩達は歓迎してくれるぞ。両方の部活を掛け持ちするのは大変だからな。」
「なら、そうする。なので、王都の期間だけお願いします。」
「分かりました。では王都の期間だけですが宜しくお願いします。」
こうして、ニノは王都に行くメンバーに加わった。




