学校祭
決闘戦から数ヶ月が経つと俺の周りが落ち着く、…事はなかった。
決闘戦前からの噂もあってか決闘戦後はちょくちょくとサインを貰いたがる人が来ている。
最初はいつかは落ち着いくだろうと思っていたんだが、その考えは甘かったようだ。
日に日に俺の所に来る生徒が増えて大変になって来たんだ。特に三年生が多い。なんでも卒業してしまうから俺と知り合いと言う証が欲しいらしい。
動物園のパンタにでもなった気分だ。もちろん俺にだけでなくニノにも来ているそうだが。
これも有名税と我慢することにした。それに人脈は広い方がいい、もしかするとこの中の生徒が何かで大成功をするかもしれないからな。
そんな日常の中、王都に行く時間が迫って来ていた。因みに俺はまだ王都に行くことをニノに伝えていない。
今朝、試しにサンアにお願いをしたら真顔で断られた。よっぽど嫌らしい。
俺はどうやってニノに伝えようか考えていると朝のホームルームで担任の校長先生が話し出す。
「君達も知っておると思うのじゃが、もうすぐ三年生が卒業してしまう。じゃから三年生にこの学校生活を最後は楽しんでもらうため1、2年生合同で学校祭を開催して貰おうとおもってのぉ。そのため、5、6時間目の選択授業は無しじゃ。」
その言葉にクラスは少しざわつくが比較的落ち着いている。
それもそのはず、この話は部活の先輩達から聞いているからだ。
だから早い所はもう学校祭の準備を進めている。
俺の部活は出店とかをやらない。理由は圧倒的に部員の人数が少ないからだ。だからモノス先輩とメレス先輩と話し合い、ディナ先輩とディアン先輩に感謝を込めて何かを贈ろうという事に決まった。
「もしかしたら部活動等で知っているかもしれぬが、今年は新しい事をしてみようと話しになってのぉ、2年1組と1年1組、2年2組は1年2組と言うように、1、2年生が同じ組同士で出し物をして貰うんじゃ。」
これには初耳だったようで、全員が驚いている。もちろん俺も初耳だった。
だけど、新しい事ということで全員がワクワクしている。
そして、俺はとてもいい案を思いついた。
それは、楽しい雰囲気でならニノが許してくれんじゃないか大作戦だ!
そのためには全力でことに当たらなければ。
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それからいつものように授業が進み昼食を食べ終わると、1組全員が教室に集まるのを校長先生が確認すると2年生の教室へ移動する。
この学校は一棟、二棟、三棟と学年が分かれていて、2年生は二棟に住んでいる。その他にも実習棟や部活棟など色々いあるが割愛しよう。
2年生の教室に入ると歓迎されて、軽く自己紹介をした。
それから俺達は机を円形に配置して話しあっている。そして、何故か俺が司会進行役として話しを進めることになり、話しを進めていくと、料理系の出し物にしようと言うことになった。
なんでも、一般人が多い学校では屋台などの方がいいと思う、という商人のクラスメイトの言葉により料理系の出し物に決まった。
それからどんな物にするかで俺達は悩んでいた。一応、食べ歩ける物の方がいいと言うことになり、それなりに案が出たのだが、どれも見たことあるような物で、商人の生徒から他の組も自分達と同じような事を考える筈だから同じようなものばかりになってしまう、といわれて振り出しに戻った。
俺は前世で何があったかなと遡るとクレープを思い出した。クレープなら作り方が簡単だから店としても出しやすい筈だ。
俺は手を上げると隣同士で話していた生徒達全員の視線が向いた。この、発言にはしっかりと耳を傾けるのは流石1組だと思う。
「クレープなんてどうでしょうか?食べ歩きにはもってこいと思うんですが?」
俺がそう言うと、生徒全員が困惑しているのが伝わって来た。
その反応で分かった。この世界にはクレープが無いんだと。ケーキとかがあったからあると思ったが無かったか。
ケーキという職人が作った画期的なデザートという事でこの世界ではケーキの形をしたデザートは○○ケーキと呼ばれている。
そこで、サンアから質問があった。
「アレク、そのクレープ?とやらはどのような物なんだい?」
「う〜ん、簡単に言えば歩きながら食べられる甘味?ケーキ?まあそんなものだ。」
「なるほ『それにしましょう!』…。」
俺がそう言うと、女子全員が話しているサンアの会話を遮ってそう言った。
一応サンアは上級貴族なんだが、甘味を前にした女子達には関係ないようだ。
まあ、サンアは特に気にしていないようだが。
それから、色々と話しあったが多数決の結果クレープに決まった。
と言うより、発言した男子達が女生徒達に睨まれてもはや変わる余地など無かった。
発案者の俺はそのクレープの作り方を明日、料理室で教える事になった。
料理室の使用許可は校長先生がとってくれるようだ。学園祭は生徒達が主体的に取り組むらしく教師達はそのサポートに徹するようだ。
俺は校長先生に必要な物を話すと学校側が用意してくれるらしい。
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次の日の5、6時間目に俺達は2年生の教室に向かい合流すると料理室に向かった。
料理室に入ると俺が校長先生に伝えている材料が揃っている。
それらは入れ物に入れてあり、悪くならないように冷水庫に入っているようだ。
「揃っているようなんで、早速やりますね。だから見える所にいてください。」
俺はそう言うと早速取り掛かる。俺が作業を開始する頃には周りには女生徒しかいなくて男子生徒は後ろでなんとか見ている状態だった。
可哀想だが男子生徒諸君は耐えてくれ、俺も女生徒を敵にまわしたく無いんだ。
「まず、クレープの生地を作ります。この入れ物に小麦粉、砂糖、塩を入れてこの乳棒でよく混ぜます。」
本当は泡立て器を使った方がいいんだがそんな物は無いからな。探せばあるのかもしれんが今回は無かったからこの乳棒だ。
「そして、いい感じに混ざったら、もう一つ卵と牛乳を混ぜた物を作ります。そして、最初に作ったこの入れ物に卵と牛乳を混ぜた物を少しずつ加えながらまた混ぜます。」
「そして、できた物を鉄板に適量を入れ、傾けて薄く広げます。ここで入れすぎると変な感じになるんで気をつけてください。」
『おお〜。』
男子生徒達が俺のテクニックに声を上げる。女子生徒達は黙って見ているためとても対象的だ。
本当、前世のこういう記憶は残っているのに、自分の名前や友人関係、自分の住んでいた場所などをまったく覚えていないんだよな。
まあ、死んだ時の記憶から俺が駄目な奴だってわかってるから知ったとしても逆に悲しくなるだけだろうがな。
因みに鉄板とは前世で言うフライパンみたいな物だ。
「そして、いい感じに焼けたら反対にし、もう一方も焼いて両面に綺麗な焼き色が出たら完成です。そして、完成した生地を皿の上で広げ、縁の方に生凝乳をかけて、好きな果物を乗せて巻けばクレープの完成です。」
俺が完成させたクレープを女子生徒達はじっと見ている。
俺はその反応を見て分かった。多分食べたいのだろうが、恥ずかしくて手を出せないのだろう。
俺はクレープの上の部分を小さく切ると小皿に乗せた。ざっと15人分だ。
「先輩達、味見をしてください。」
俺はそう言って2年生の女子生徒全員に渡した。2年1組の女子は15人いるのでピッタリだ。
まあ、数が合うように切ったんだから当たり前なんだけどな。
俺が先輩達に渡すとクラスメイトの女子達が俺の事を見て来た。
「お前らの分も作るから少し待っててくれ。」
俺は早速クレープ作りに取り掛かった。最初は見せるために1つだけで作ったが、他の人も食べるから一気に4つを作る。
俺はクレープを作りながら先輩達から売れるかどうかを聞いた。
「先輩達どうですか?売れると思います?」
『絶対!』
「なら良かったです。それじゃ、クレープの作り方を覚えて貰うんで他の机に材料を置いといてください。」
『分かったよ、アレクくん。』
それから少しして、クレープができたので人数分の小皿を取り、クレープを乗せて他の人達に渡す。勿論、女子生徒達を優先的に渡した。そうしないと後が怖いからな。
「先輩達、渡すのが遅くなってすみません。」
俺はそう言って2年生の中心人物であり商人の先輩にそう言った。
「気にしていないさ。逆にありがたいくらいだよ。もし先に僕達にでも渡したら僕達は酷い目にあっただろうからね。」
その先輩の言葉に周りの男子生徒が頷いている。勿論、俺達の組もだ。
「まあ、自分達の組も似たようなものですよ。それで、これは売れると思いますかね?」
「うーん、売れるとは思うけど購入者が女子生徒ばかりになってしまうね。」
「なら、肉とかを入れるのはどうですかね?昨日の案で出ていた焼き鳥とかそういうのを。」
所謂、おかずクレープだ。
「!それなら絶対に売れるよ!あの生地なら肉のタレとも合うと思うし何より、新しい物だから目に止まるだろうしね。アレクくんは発明の才能があるよ。」
「あーはは、ありがとうございます。」
別に俺が考えた訳じゃ無いから褒められてもな。すると、女子の先輩達に準備ができたと呼ばれた。
「あっ、分かりました。なら他の人達も空いている机に向かってください。それと、準備をしてくれてありがとうございます。」
「大丈夫だよ。私達は早くやりたかっただけだからね。」
そう言って優しい言葉をかけてくれる先輩。いや〜癒されるな。
俺がそう思っているとニノに目を塞がれた。
「ニノさんや見えないんですが?」
「デレデレしない。」
「してない、してない。ニノもサンア達の所に向かいな。」
「…分かった。」
納得してくれたようだ。それにデレデレはしてないからな。だから俺の嘘がわかるニノも納得したんだろう。
それから全員でクレープ作りをした。クレープ作りは思いのほか難しいらしく、失敗してしまう所が多かった。
ニノは完璧にできていたが、逆にサンアとラーヤは生地を焦がして失敗してしまっていた。
俺は失敗した人達の所に向かい、やり方を教えながら色々なクレープを作っていった。
幸いな事におかずクレープを作るためのおかずは沢山あったため色々な物を作る事ができる。
その後は作った種類の中から良かった物を何個か男子達で厳選し、逆に女子達はクレープを厳選している。
すると6時間目の終了の鐘が鳴ったため詳しい事は次回に決めようという話しで終わった。




