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二人で目指す世界最強  作者: カラス
80/100

優勝した影響

 校長室を出た俺は、早速王都に行く件を先輩たちと話し合うため部室に向かった。


「おはようございます!」


「外が騒がしいと思ったら、優勝したアレクじゃねえか。」


「おはようございます、アレクくん。」


 俺は2年の先輩達が見えないので、気配を探ってみたがこの近くにはどこにもいなかった。


「2人だけですけど、メレス先輩とモノス先輩は?」


 俺がそう聞くとディナ先輩が微笑みながら言った。


「2人は部活届の処理を先生と一緒にやっています。本当は私とディアンがするものなんですけどね。」


「俺達に気を遣って、やってるんだろうぜ、気にしなくてもいいんだがなぁ。」


 俺はすっかり忘れていたがこの2人は三年生だ。普通なら王都の学園に入るために勉強するところだ。


「えっと、それなら俺も手伝いに向かった方がいいですかね。多分、その部活届って俺のせいでしょうし。」


「そうだな、それとアレクも俺達に気を遣っう必要はねぇぜ。何故なら…」


「何故なら、私達2人は王都の学園への推薦状を貰っているからです。」


 ディアン先輩の言葉に被せるようにディナ先輩が言った。


 そのせいか、ディアン先輩が複雑そうだ。まあ、ディアン先輩のドヤ顔を見るよりは良かったが。


「そうなんですか、なら王都に行く話しも知っていますか?」


「知っています。先生からアレクくんは来るかどうかは分からないと言われていましたが、その様子なら来れるようですね。」


「その認識であってます。」


「なら、あいつらが来る前に、ある程度は決めちまおうぜ。」


 ディアン先輩の言う通り、先輩達が来る前にある程度決めてしまった方がスムーズに進むか。


「私はそれでいいと思いますが、アレクくんもいいですか?」


 俺は特に異論が無かったので頷いた。


 それから、王都での日程とやる事を話し合って、最後にまとめるたことを紙に書く。


「ひと段落ついたな。」


「そうですね。丁度お昼時ですし、食堂に向かいましょう。」


「そうですね。ついでにモノス先輩とメレス先輩達も拾って行きましょう。」


「そうと決まれば早速行こうぜ。」


 そうして俺達は部室から出て、途中で先輩達を拾い食堂に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 各自昼食を取ると全員で座れる席に座ると、モノス先輩とメレス先輩が大きな息を吐く。


「先輩達大丈夫ですか?」


「これが大丈夫に見えるかい?」


「大丈夫な訳無いだろ。」


 2人とも疲れているようだ。まあ、俺達が見に行った時、机の上に1メートルくらいの紙の束が積まれていたからな。


 俺が他人事のようにして見ているとモノス先輩が言った。


「アレクも手伝え。」


「そうだよ〜、手伝って。」


 2人を疲れさせたのは俺だが、頑張って欲しい。


「嫌ですよー、それと僕はまだ一年生だから分かんない。」


 わざと可愛子ぶり、断ると先輩たちは少しイラついたようだが少し息を吐く。


「嘘をつけ、お前の噂は聞いているからな。」


「噂?」


 俺が知っている噂と言ったら剣術部でのものくらいしか無いと思うんだがな。


「そうだよ、例えば試験で全教科満点とか、1組の全員に勉強を教えているとか。」


「1組を支配しているとかだ。他にも色々ある。」


「全て初耳なんですが?」


 なんだ、1組を支配しているって、1組で勉強会をした事はあったが、あれは皆んなが互いに教えあっていただけのものだし。


 それに、全教科満点は俺以外にもいるしな。


「まあ、アレクは噂とかそう言いもんに疎いからな、知らなくても仕方ねぇんじゃないか?」


「確かにそうかも知れません。」


 そう言って、楽しそうに俺の話しをする先輩達。この話は部が悪いな。話題を変えるか。


「ディナ先輩達、あの話しはしないんですか?」


「ああ、忘れていました。モノスくんとメレスくんに話しがあります。」


 そうして、2人に先輩達に推薦状があることを知り、2人は何のためにこんな面倒な事をと言っていた。


 まあ、引き受けたからには責任を持ってやってもらおう。そして、ついでに王都のことも話しておいた。


 2人はどちらもこの計画で大丈夫だそうだ。そして昼食を食べ終わった俺達は部室に戻って、いつものように研究や実験をやり、解散する。


 寮に戻った俺は、魔力切れで布団に倒れこむ。いつものように古代魔法を発動させるために魔力を使ったのと、この指輪に2回も魔力を送ったせいで魔力がすっからかんだ。


「はぁ、やる事も特にないし、サンアが来るまで本でも読んでおくか。」


 魔力切れで身体の怠さと頭痛を感じながら本を読んでいるとサンアがとても疲れた顔をして帰ってきたためびっくりした。


「どうしたんだ?顔の表情が死んでるぞ。」


「ああ、実は…」


 なんでも、図書館に行ったらラーヤに捕まって仕事をさせられたらしい。


 サンアを捕まえたラーヤ本人はニノと買い物に向かったようだ。


「なんて言うか…お疲れ。」


 俺はサンアの背中を軽く叩いた。


 そして、いつものように一緒に夕食を食べて長く風呂に浸かり眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌朝、俺はいつものように朝の鍛錬をすると決闘戦で戦った先輩達が近くにきた。


「久しぶりだねアレクくん。決闘戦、凄かったよ。」


「自分も、凄く興奮する試合でした!」


「お久しぶりです。」


 俺は頭を軽く下げた。そこで俺は2人の名前を知らない事を思い出した。


「いきなりですみませんが、先輩達の名前ってなんですか?」


 2人とも、キョトンとした顔になり、笑いながら答えてくれた。


「すまないね。僕の名前はマーク。で、隣が」


「ノートです。」


「どちらも2年生だよ。」


「ありがとうございます。それで、マーク先輩とノート先輩は何か俺に用があるんですか?」


 俺がそう聞くと2人は顔を見合ってマーク先輩が言った。


「えっと、最初に言うけど邪魔なら断ってくれてもいいんだ。」


「自分達が言いたいのは一緒に鍛錬をしてもいいかってことです。」


 そんな事か、少し身構えて損したな。


「全然いいですよ。でも俺の鍛錬もお二人とそう変わらないと思いますが、大丈夫ですか?」


「全然構わないよ。僕達はアレクくんと鍛錬をする事で何か掴めるんじゃ無いかと思っただけだからね。」


「そうですか、なら一緒にやりましょう。」


 そうして、先輩達と朝の鍛錬を一緒にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 部屋に戻ると、サンアがまだ眠っていた。俺は起こさないようにそーっと扉を閉めると部屋にある風呂に入る。


 風呂から上がった俺はサンアを起こす事にした。疲れているんだろうが、今日は学校だからな。


「サンア、起きろー。」


 俺がそう言うと、サンアは薄く目を開けて上体だけを起こした。


「アレクかい?」


「ああ、お前の大親友のアレク様だ。」


「…今何時だい?」


 俺のボケはサンアに華麗にスルーされた。俺はなんだか恥ずかしくなってきた。


「大親友のアレク、今何時かな?」


「弄るのはやめてくれ、それと時間だが、いつもより少し遅いくらいだ。」


「なら、朝食を食べて直で教室に向かおうか。その時間帯なら指定されている学年もないしね。」


「そうだな。」


 そうして、いつものように準備し、朝食を食べに行って、教室に向かった。


 教室に向かうといつもより、騒がしく感じられる。


 それはサンアも思ったようで、俺達は互いに顔を見合った。


 俺達が教室に入ると、時が止まったかのように教室が静まり帰った。


「えっと、おはよう?」


 俺がそう言うと、さっきまでの静寂が嘘のように騒がしくなった。


「おおー、決闘戦優勝者が来たぞ!」


「よっ、俺達1組の誇り!」


 と、騒ぎまくるので俺もこの空気に乗ることにした。


「俺が、優勝者だ!」


「「「わー!」」」


 俺が誰でも知っている有名な物語の主人公の決めポーズをとると、さらに教室が騒がしくなった。


 まあ、そう騒いでいると教室の外まで聞こえてしまうのは当たり前で、入ってきた校長に俺達は怒られた。


 それから、授業を受けていると、ふと思い出す。


(ニノに指輪を渡してねぇ!)


 朝に渡すつもりだったが、あの騒ぎのせいで忘れていた。


 後少しで昼食の時間だから、その時にでも渡せばいいか。


 それから授業が終わり、いつもの4人で俺達は食堂に移動した。


 食堂で席を確保した俺達は、男と女2人に分かれて交代で、昼食を取りにいくがニノに用があったため、ラーヤとサンアで先に取りに行って貰った。


「アレク、用って?」


「ああ、右手を出して目を瞑ってくれ。」


「?分かった。」


 ニノは何が行われるか全く分かっていないようだ。俺はニノを驚かせるために、指に指輪を嵌める事を計画したんだ。


 それと、ただで渡すのは面白く無いからな。それと間違っても左手の薬指には入れない。そんな事をしたら、リガルドさんに俺が殺される。


 もちろん俺は自分の指輪を懐に入れている。俺がつけているのを見られたら絶対質問されるからな。そのせいでバレるのはちょっとな。それにニノは俺の嘘が分かるし。


 俺はニノの右手を優しくとる。


「んっ。」


「すまん、くすぐったかったか?」


「大丈夫。」


 俺は続けてニノの人差し指に指輪を入れた。


「目を開けて大丈夫だ。」


「分かった。」


 そう言って、ニノは目を開けたがニノの右手はまだ、俺の手で隠してある。


 そのせいでニノは困惑している。この指輪は誰の指でも入れられるように大きく設計されていて、魔力を込めると嵌めた人の指のサイズになる。


 これは、最初に魔力を送った時に分かっていた事だ。


「アレク、何をしたの?」


 ニノは今、自分の指が何かされているとしか感じていないだろう。さて、種明かしといくか。


「ニノ、魔力を乗っている物に込めてみてくれて。結構必要だからな。」


「分かった。」


 そうして、ニノが魔力を込めていった。


「何か締め付けられる。」


「おっ、込められたか、なら手をどかすな。」


 そうして、俺は手をどかした。ニノは俺が手をどかした先を見る。すると。


「えっ。」


 ニノが言い。


「「えっ。」」


 背後にいたサンアとラーヤが言い。


「「「えっーーー!」」」


 そして、俺に視線を向けていた周りの人達が叫んだ。


「えっ、何?」


 俺は周りから叫び声が聞こえてきたせいで何事かと思った。


 すると、背後にいたラーヤが言う。


「な、何って、ニノにした事よ。」


「なんだ、そんな事か。指輪をつけただけだろ。」


 俺はそう言って、懐から指輪を取り出し、俺も人差し指につけて続けて言った。


「それに、これは決闘戦を優勝したから貰ったものでな、かっこいいだろ。」


 俺はそう言って自慢した。すると、ラーヤは黙ってしまい、周りから、特に女子からキャーキャー聞こえてきた。


 すると、ニノが俺に聞いてきた。


「アレク…これって。」


「ああ、その指輪の名前な。その指輪は状態異常無効の指輪って言ってな。一定量の魔力を込めると込めた回数分だけ、全ての状態異常を防いでくれるんだ。役に立つだろう!」


 俺がニノに指輪の名前と効果を話すと、周りが困惑に包まれる。


 周りの女子達が「きっと、安全を思ってのことよ。」とか言っているのが聞こえた。


 そんな中、サンアが俺に聞く。


「アレク、それは婚約指輪なのかい?」


 コイツは何バカな事を言ってるんだ?


「お前は何を言ってるんだ?この指輪は冒険者としてやっていくなら役に立つと思って、俺が選んだ物だ。」


 俺がそう言うと、周りが静まりかえった。


「えっ、何?」


 そんな中、ニノが俺にお礼を言う。


「…そう、ありがとう、アレク。」


 ニノのその表情は笑顔に見えるが、泣くのを堪えているように見えた。そのため少し本音が漏れる。


「…いや、1つ言い忘れていた。選んだ理由がもう一つある。それは…」


「?」


 俺は少し泣きそうになりながらも俺を見ているニノを見て、とても恥ずかしくなったが、何故か言わないといけない気がしたため言った。


「それは、ニノと何かお揃いを持っていたかった、からだ。」


 俺がそう言うと、ニノが惚けた顔して俺の事を見てくる。居た堪れ無くなった俺は顔を逸らして横を見ると、サンアが生暖かい目で俺を見てきた。


「なんだよ。」


「別に、なんでもないよ。」


 すると、周りからも生暖かい視線が飛んできているのが分かり、俺は物凄く恥ずかしくなった。


「っ!俺は、もう行く!」


「ご飯がまだだよ。」


「要らねぇ。じゃあな。」


 俺はそう言って、食堂を急いで出て行く。背中に生暖かい視線を感じながら。


アレクの前世では左手の薬指が婚約の証ですけどこの世界では右手の人差し指がそれに該当するんですよね。

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