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二人で目指す世界最強  作者: カラス
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指輪

 翌朝、サンアと朝食を食べていると周りから視線を向けられているのを感じた。


 とても食べにくいが、決闘戦で優勝したから注目されるのは必然か。


「アレク、周りから凄く見られているね。」


「まあ、優勝したからな。数日後にはなくなっているだろう。」


「それだけじゃ無いと思うんだけどね。」


 サンアが何か言っていたように思えたが、周りの視線を意識しないように食べていたせいで上手く聞き取れなかった。


 まあ、話の流れてきに重要なことでも無いだろう。


 それから俺達は朝食を食べ終えると、サンアは図書館に、俺は学校長室に向かった。


 学校長には、俺が向かう事をサンアがいつのにか報告していたそうだ。


 だから、いきなりの訪問にならずに済んだ。


 学校長室の前に着くと、俺は扉を2回ノックすると中から、「入ってよいぞ。」と返答が帰ってくる。


 俺は言われた通りに扉に入ると、中では書類仕事をしている校長がいた。教室での校長先生しか知らないから少し新鮮だ。


「大変そうですね。」


「そうじゃな、だけどこれは嬉しいことでもあるんじゃ。ここにある書類はのぉ、全てこの学校に入りたいと言ってくれた者達なのじゃ。」


「へ〜。」


 書類を見てみると、確かに全てこの学校への出願書だった。


 この世界の学校はいつでも出願書を出せるので、前世と全く違う。まあ、そもそもこの世界に義務教育なんてないから前世と違うのは当たり前だが。


「アレクよ、ここにあるものは全て、お主達の戦いを見たから届いたものなんじゃよ。」


「えっ!」


 俺が驚くと校長は嬉しそうに笑う。


 だけど、本当に驚きだ。俺とニノの戦いがこんなに子供達に影響を及ぼすなんて。


「さて、決闘戦の優勝者には褒賞を与えんとな。」


 そう言って、書類整理を止める校長先生。


「えーと、それは嬉しいんですが、その願書の対応はいいんですか?」


「大丈夫じゃよ、お主に褒賞を与えてからまたやるからのぉ。」


「そ、そうですか。」


 そうは言ってもスケジュールとかあると思うんだが。


 まあ、ここは校長の好意に甘えるとしよう。


 すると、校長が校長室の本棚の前に向かい本を傾けると、本棚が動き出し道が出てきた。


 驚いた固まっている俺に校長に話しかけられる。


「着いて来なさい。」


「…分かりました。」


 少しのワクワクと恐怖を抱いて校長に着いて行くと、下へと続く階段が出てくる。


 校長が生活魔法で周りを明るくし、階段を進んで行くと、とても大きな扉があった。


「ここが、この学校を作る時に秘密裏に作られた緊急避難所じゃ。」


「凄いですね。でも避難所なら秘密にする意味が無いのでは?」


「確かにそうじゃが、避難所の場所を敵が知っておったら意味が無いじゃろ。」


「そのための緊急ですか。」


「そうじゃ、まあ今は金庫にしか使われていなのじゃがな。」


 そう言って、笑いながら扉らに近づいて行く校長。そして校長が扉に触れると扉に魔力の線が走り、巨大な扉が開いた。


 扉が開かれると先から金の煌めきが輝く。


「さぁ、これを持ってこの先の好きな物を取りなさい。」


 俺がまたもや固まっていると校長が俺に何かを渡して来た。それは一見するとモノクルのように見えるが何かに使えるのか?


 もしかして、金の反射に目がやられ無いようにとかか?それなら片方だけの意味が分からないしな。


「あの、これは何ですか?」


 俺は渡された物を見せながら校長に聞く。


「これは、鑑定モノクルと言ってのお、これを通して物を見るとその物の名前がわかるんじゃよ。」


「そうなんですか、これって魔道具ですか?」


「これは、迷宮から取れるアーティファクトじゃよ。名前はエルフの冒険者と人間の冒険者が見つけたから両方の言葉を使われて付けられたそうじゃ。」


 いつか、ニノとダンジョンに向かう時に入手したいな。


「ありがとうございます。なら使わせて貰いますね。」


 俺はそう言って、避難所(金庫)の中を見てみると、なんか凄いものが沢山あった。


 魔剣とかドラゴンの防具とかエリクサーとかそう言うものがあった。


 でも、正直に言ってこれらを入手しても、逆に弱くなりそうなんだよな。これが無いと戦えない事になりそうだ。


 そうして、他に何かないか見ていると、二つの指輪があったため鑑定してみる。


 鑑定結果はこんなものだった。


『状態異常無効の指輪(青)』魔力0


『状態異常無効の指輪(赤)』魔力0


「これは!めっちゃ優秀な指輪じゃん。」


 指輪なら、これが無いと勝てないとかの事態にはならないだろうしこれがいいだろう。


 それにニノにこの指輪は似合いそうだ。後で2つお願いしてみるか。無理なら、ニノのための指輪を持っていこう。


 すると、後ろから校長に声をかけられた。


「それはやめておいたほうがよいぞ。」


「どうしてですか?」


「鑑定結果に魔力0と書かれておったじゃろ。」


 確かに書いてあった。


「そうですね。」


「それは魔力を込めないと使え無い指輪なんじゃ。」


「なら、魔力を込めれはいいだけでは?」


 俺が不思議に思っていると校長が説明してくれた。


「そうじゃが、消費する魔力が多いんじゃよ。しかも、どんなに弱い状態異常でも回数を消費してしまうんじゃ。そして、状態異常を治せるのは魔力を送った本人だけということも分かっていてのぉ。だから使える人間が限られるのじゃ。他にも魔力が常時吸われ続ける呪いまである。だから誰も装備できないんじゃよ。」


「そうなんですか。」


 俺は試しに、魔力を指輪に込めてみると、魔力を3分の1ほど消費して0が1になった。


 俺が古代魔法を初めて使用した時くらいの魔力消費だな。


 俺はもう一度魔力を込めてみると、数字が2になる。


 もしかしてこれは無限に魔力を込められるのか?まあ、試してみないと分からないか、それにもし、本当に無限に魔力を込められるならこれは魔力の増幅にはもってこいだ。


「アレクよ、魔力をそんなに込めて大丈夫…」


「はい?」


「…のようじゃのお。」


 考え事をしていたせいで校長の話を聞き逃してしまった。さすがに失礼か。


「すみません、聞き逃してしまいました。もう一度お願いします。」


「聞き逃してもらって構わんよ。そんなに大事な話しではないからのぉ。」


「そうですか、それで1つ相談したいことがあるのですが。」


「なんじゃね?」


「これと同じ指輪がもう一つあったのですがそれももらってもいいですか?」


「別によいが、本当にその指輪にするのかのぉ。他の物でもいいと思うんじゃが。」


「別にいいんです。なら二つ貰いますね。」


 俺はそそくさともう一個の指輪を取って来た。


「なら、優勝商品はこれってことでいいですか。」


「良いぞ、それと決闘戦の時に見せた報酬の金貨も渡そう。」


「あっ、それなら冒険者ギルドの方にお願いします。」


 冒険者ギルドはお金の預かりもやっている。大金になると持ち歩くだけで大変だから導入されたそうだ。


「分かったぞい。ならこれにて、終わりじゃ。」


 そう言って、校長は巨大な扉を閉めた。この扉の仕掛けは多分光魔法だな。


 結界に近いものだろう。


「では、戻るとしよう。」


 そうして、俺と校長は校長室に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 校長室に戻って終わりかと思ったが、校長によるとまだ話しがあるらしい。


「なんですか?」


 俺がそう聞くと、校長がとても真剣な表情で俺に聴いてきた。


「…アレクよ、お主は勇者かのぉ?」


 俺はその言葉にすぐに戦闘体勢に入ったが、ニノのことを聞かれた訳じゃなかったためすぐに戦闘体勢を解いた。


 駄目だな、勇者って言葉に反応しすぎてしまった。


 戦闘体勢をいきなり解いて、不自然かもしれないが、何故そんな事を聞いてきたのか聞かなければ。


「何故、そんな事を。」


「…決闘戦での身体強化じゃよ。わしらは最初、ニノくんが勇者じゃないかと疑っておった。」


 俺は少し動揺したが気付かれてはいないようだ。ここはあえて質問をしよう。


「なら、どうして俺が勇者だと?」


「それは、ニノくんと同年代でありながら同じくらいの身体強化をしていて、ニノくんに勝ったからじゃ。」


 まあ、この世界での勇者は同年代に負ける事なんてまず無いからな、負けるとしても歴戦の猛者くらいだろう。


 だから校長の中ではニノは物凄く強い生徒で俺が勇者という構図になっているのだろう。本当は逆だがな。


 俺が勇者じゃないという言い訳は沢山あるが、もし言い訳を言えば、またニノが勇者かもしれないと疑うかもしれない。


 それなら、俺が勇者だと思わせていた方がいいだろう。幸い、校長は俺の反応のせいで俺を完全に勇者だと思っているようだしな。


 だけど、俺は1つ確認しないといけない事がある。それは校長が勇者を利用するような人かどうかだ。もし、利用しようとする人ならば俺は容赦なく敵対する。


「アルベルト先生、もし俺が勇者なら、先生はどうしますか。」


 剣に手を掛けながらの俺の問いかけに先生は俺の瞳を真っ直ぐに見て言った。


「わしの生徒である以上、どんなことが起きても必ず味方じゃ。」


「…そうですか、それを聞けたなら安心です。」


 俺はそう言って、剣から手を離した。それを見計らって校長がもう一度聴いてきた。


「アレクよ、もう一度聴く、お主は勇者か?」


 俺が勝手にニノの事を話すのはよく無いからな。だけど、嘘をつくのも憚れる。なら、これしか無い。


「明言は避けますよ。」


「そうか、ならばお主をただのアレクとして認識する事にするかのぉ。」


 そう言ってホォホォホォと笑う校長。さっきの怖い感じが消えて、今は優しい感じに戻っている。


「他には、何か用事がありますか?」


「無い、と言いたいところじゃがお主に王都の学校への推薦状があるんじゃ。しかも、この国の王の直筆でのぉ。」


 多分、俺は今までで1番変な顔になっていただろう。


「それ、了承しないといけないんですか?」


「普通は了承しないといけないんじゃが、別に断ってもよいぞ。ただ、その場合は2年生に進級したと同時に王都で数ヶ月間、古代魔法の事を研究してもらう必要があるんじゃがのぉ。」


 王都の学校で3年間学生としているか、それともニノに殺される覚悟で、数ヶ月間王都に行くか。


 どちらも地獄だが、数ヶ月間の方がまだましか。俺が2択を決めた時に1つ聞きたいことができた。


「先生、数ヶ月間の王都生活って部活の先輩達も来るんですか?」


「あたりまえじゃ。全員揃って古代魔法学部なのじゃろ。」


 この時、三年の先輩達が王都の学園に通うことが決まったも同然だったが、俺は分からなかった。このことは後ほど知ることになる。


「おー、それなら安心ですね。なら俺は数ヶ月間、王都で生活します。」


「承った。話はもう通しておるから、部活に行くんじゃぞ。それと話はもう終わりじゃ。」


「分かりました。それじゃあ、失礼します。それと指輪、ありがとうございます。」


 俺はそう言って部活に向かった。




sideアルベルト

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 わしはアレクの気配が遠ざかるのを確認すると、一気に力が抜けた。


「まさか、このわしが恐怖するとはのぉ。歳は取りたく無いものじゃな。」


 あの時のアレクの殺気は物凄かったものじゃ、下の金庫で魔力を指輪に2回も入れておったのにまだあれ程の力があるとはのぉ。


 これから、アレクは有名になるじゃろう。そしてアレクを利用しようとする者が絶対に出てくる筈じゃ。


 ならば、人生の先輩であるわしがそれらから守ってやらねばのぉ。


 そうして、校長はアレクが断った王からの推薦状をどうにかするのだった。


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