ニノとの戦い2
相手は剣でこちらは拳、リーチの差で正面から戦えば絶対に負ける。だから俺はカウンターを狙っての攻撃か隙が出来たら攻撃する事しか勝ち筋が無い。
その為最初は相手の攻撃を避けながら反撃できるタイミングを待つ。
「来ないの。なら私から行く。」
俺が攻撃する気がないのが分かったのかニノから仕掛けて来た。そのスピードは目でギリギリ追う事が出来る速さだ。
そしてニノが剣を上に持ちあげようとしている事を見て次の行動を予測して避ける。そのままニノは俺にめがけて連撃を繰り出した。俺はその斬撃をなんとかギリギリで避ける。
ニノは俺に避けられるとは思っていなかったようで隙だらけだ。だが俺のリーチではニノまで攻撃が届かない為、俺は剣にめがけて蹴りを入れる。
それによりニノは持っていた剣を落とした。そこに俺は追撃を入れようとしたがニノは即座に下がった為、一本取れなかった。
「どうするニノ、剣を取られたぞ。」
そう俺は落ちている剣を差しながら言った。
「なら、素手で戦う。私の憧れた物語の冒険者は最後まで諦めないから。」
そう言いニノは構えた。
「剣が無い今、リーチは互角。それとニノは体術を使え無いだろ。」
俺は暗に諦めろと言ったがニノには意味がなかったようだ。
「それでも、諦め無い。」
俺はニノを見てとても意思が硬い事が分かった。
「分かった。なら勝負!」
そう言い俺は構える。
そしてニノが突っ込んで来た。俺はそれをギリギリで避ける事でそのまま、ニノの足に自分の足をかけて隙だらけになったニノを掴み背負い投げの要領でニノを地面に投げつけた。
投げないでそのまま顔を地面に押し付けるだけでも良かったが流石に女の子だから顔から行くのは良くないと思い、俺は投げ飛ばしたのだ。
「ニノ、俺の勝ちでいいか。」
「うん。負けた。」
ニノはあっさりと負けを認めた。子供らしく癇癪を起こすと思ったが案外大人な対応だった。
「そうか、それにしてもニノの剣技はすごかったな、ニノが油断しなきゃ、俺が負けていたかも知れない。」
ニノは油断していたのだと思う。俺はニノは同年代で負けた事が無いと聞いた時から、無意識でも油断していると思い、そこにつけ込み一発で決めるつもりでいた。その為に俺の反撃が決まったわけだ。
「私は油断してない。アレは、アレクの実力。それと私に体術を教えて欲しい。私は剣が無ければまともに戦えない。だけど私の憧れた冒険者はそんな事があっても負けなかった。だから、教えて欲しい。」
本人は油断してないと思っているらしいが、無意識で油断していたのだろう。連撃の後に動きが止まったのが証拠だ。
それにしても、体術を教えて欲しいときたか。それならと俺はニノに条件を出した。
「いいぞ、ただし、条件がある。俺に剣技を教えてくれ。偶々剣を取れたけど、もし取れなかったら負けていたのは俺だっただろうしな。だから俺に剣技を教えてくれ。お互い教え合う関係なら損が無いだろ。」
「分かった。」
「ありがとな。」
するとニノは立ち上がって聞いてきた。
「それで、この後どうするの?剣技を教える?」
そうニノが首を少し曲げて聞いてくる。
「いや、今日はなんか疲れた。教えあうのは明日からにしよう。だから本のことでも話そうぜ。」
「分かった。」
そうしてニノと俺は夕方まで本のことを語りあった。
「おっ、もうこんな時間か。俺は帰るけどニノも帰るだろ。」
空を見上げると夕焼けだった。
「私も帰る。」
「そうか、じゃ広場に戻ろうぜ。」
「うん。」
そうして広場に着いた俺たちはお別れをして家に帰った。
「ただいま。」
そして、家に着くと俺は靴を脱ぎそのままリビングに向かった。
「おかえりなさいアレクちゃん。ちゃんと暗くなる前に帰って来て偉いわ。」
そう言い母は俺の頭を撫でた。
「まあ、約束だからね。」
俺は照れ臭くなってぶっきら棒に言う。
「さて、アレクちゃんご飯にするから手を洗ってきなさい。」
「分かった。」
そうして洗面所に行くと手を洗っている父がいた。
「ただいま父さん。」
「おかえりアレク。少し待っててな。」
そう言い父は手をタオルで拭き俺に場所を譲ってくれた。
「ありがとう父さん。」
「おう。先に行ってる。」
そうして家族3人でご飯を食べている時、母さんが聞いて来た。
「それでアレクちゃん、今日は友達と遊んだのよね。何をしたの?」
「ん?そうだね、遊んだりはしてないよ。本の話しをしただけ。」
「本?そのお友達は本を持っているの?」
「そうだよ。だがら自分が読んだ本の感想を言い合ったりこの話しが面白いって話したりしてる。」
「そうなのね。良かったわアレクちゃんにちゃんと友達がいて。」
その母の顔は本当に安心している顔だった。
「ところでアレクその友達の名前は何て言うんだ。」
「ニノ、って言う。」
「ニノ、ニノ、どこかで聞いたな。」
「そうなの?父さん。」
「ああ、どこかで聞いた覚えがある。」
そう俺が父と話していると母が聞いて来た。
「それでそのニノ君はどんな子なの?」
「ん?ニノは男じゃなくて女だよ。」
俺がそう言うと母は驚き、父はどこで聞いたか思い出したようだ。
「ああ!思い出した。リガルドの娘か。狩りの時、よく可愛いとか天使とか言ってたな。」
「えっ、アレクちゃんのお友達は女の子なの。」
「そうだけど。駄目なの?」
「えっと、駄目じゃ無いわ。ただ、驚いただけよ。」
すると、父さんが俺に質問をする。
「アレク、ニノちゃんが強いのは知ってるか。」
「知ってるよ。」
「そうか、じゃあ何で強いかは?」
「知らない。」
そういえば何であんなに強いんだろ。多分教えてくれる人がいると思うんだけど。
「なら教えてやる。リガルドは結構有名な騎士だったんだ。だけど、怪我をして前線に復帰できなくなったらしい、それで結婚してこの村に来たって事だ。」
俺はそれを聞いて納得した。ニノのあの剣術は騎士のリガルドさん仕込みってことか。
「それで小さい頃から剣を教え込まれたから強くなったって事?」
「そう言う事、アレクも小さいころから特訓しているが何かを突き詰めてやって無いだろう。俺が満遍なく特訓しているからな。だけど、リガルドのとこの娘さんは自分から剣を振ってたらしい。それを見たリガルドは娘に剣技を教えていたら剣の天才だった事に気付いて剣を本気で教えた。その結果、同年代で敵無しと言うくらいには強くなったらしい。俺はニノちゃんを見て無いからどのくらい強いのかは分からないがあのリガルドが本気で教えたんだ多分とても強いぞ。」
「そうなのね。いつか挨拶でもしようかしら。」
「そうだな。」
ニノは小さい頃から憧れに近づく為に常に努力していたんだな。俺も頑張らないと、より強くそう思った。