機嫌
俺は物音が聴こえて目が覚めた。物音がする方向を見るとサンアが本を読んでいる。
「サンア?」
俺の呼び声にサンアは本を読むのを止めて振り返った。
「起こしてしまったかい?疲れているなら寝ているといいよ。」
「あ、ああ。別に疲れてはいない。」
俺はそう言い時計を確認すると時刻が21時を回っていた。
「そうかい、それにしても驚いたよ。帰ったら布団でアレクが寝ているんだから。それと学校に行く時は覚悟しといた方がいい。」
サンアにそう言われて俺はニノ達の事を思い出してしまった。
「なあ、サンア。ニノ達って怒ってた?」
「初日は機嫌が悪そうにしていたけど、今は怒ってはいなかったよ。ただ…」
「ただ?」
俺はゴクリと喉を鳴らす。
「ただ、ニノちゃんは縄を持ち歩くようになった。」
サンアはそう言いながら笑い出した。だけど俺にとっては笑いごとじゃない。
「それ、絶対に俺を捕まえるための縄だよな!」
「そうだろうね。でも仕方がないんじゃないかな?今回の事は黙って出て行ったアレクが悪いんだし。」
俺はサンアの正論に黙ってしまった。だけど俺は諦めない。どうにかしてニノに縄を持たせるのを止めさせないと。
「なあ、サンア。どうしたらニノは縄を持たないようになる?」
だから俺はサンアに頼る事にした。すると、サンアは考え出してニヤッと笑って言う。
「ニノちゃんをどこかに誘えばいいんじゃないかな。」
どこかってどこだ。いつもと同じように冒険者ギルドとかか?そこで俺は思い出した。
「なら、ニノを鍛錬に誘うか。」
「えっ?」
俺がそう言うとサンアが何を言ってるんだコイツみたいな目で見られた。
場所の心配か?
「そうだよな流石に場所を考えないとな。だからサンア、どこか周りに人がいないところを知ってないか?」
俺がそう聴くとサンアがコイツはもうダメだとでも言うような目をする。
「はぁ、ならこの街の離れにある丘の上とかならどうかな。そこなら魔物の心配もないし、景色もいいからおすすめだよ。」
何故ため息を吐かれたのか分からなかったがサンアのおかげでなんとかなりそうだ。
それに明日学校に行けばその次の日は休みだからちょうどいいしな。
そうして俺はニノに縄を持たせるのを止めさせる大作戦をシミュレートしながら眠りについた。
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次の日になり俺が教室に入るとニノがいた。だけど何も起きる事がなくそのまま昼食の時間になる。
因みに俺は教室に登校するとクラスメイトに囲まれた。王都の事を聞かれたのだ。
校長先生により俺のことはこのクラスには伝わっているようだ。
何故俺が貴族達のクラスメイトと仲がいいのか?
それはこのクラスに入る生徒は基本的に人格がしっかりとしているからだ。
それもそうだ。頭が良くないとこのクラスには入れないのだから。だからフーバンのような貴族はこのクラスにはいない。
いるとしても個性が強いような人達ばかりだ。
そんな事があり昼食の時間になると俺は食堂でニノに拘束されていた。
午前中がおとなしかったから油断した。そして、いつもは俺の隣にはサンアが座っているが、今はニノが俺の隣の席に座っている。
俺は前に座っているラーヤに視線を送るが、無視して昼食を食べている。
ラーヤも怒っているらしい。俺はサンアに視線を送るが笑顔で返されただけだった。
どうやらこの状況は自分で解決しないといけないようだ。まずはニノにこの縄による拘束を解いてもらおう。
「あー、ニノ、その無断で王都に向かってすまなかった。だからこの拘束を解いてくれないか?」
俺の言葉にニノが反応して俺の目を真っ直ぐに見て少し微笑み一言。
「嫌。」
それだけだった。それから何度話しかけても無視され続け、俺はもう一回考えなおす事にした。
そこでチラッとサンアからサインが送られているのが見えた。どうやら昨日の事を言えとのことらしい。
「ニノ、明日って休みだろう。だからその日は冒険者の仕事を休みにして一緒にいようぜ。」
「…分かった。」
俺のその一言にニノはピクッと反応して言った。そうしてニノは俺の拘束を解いてくれた。
それからは普通に皆んなで話せるようになった。そして、ラーヤだがラーヤはニノに便乗して怒っていただけのようでニノの怒りがおさまればよかったそうだ。
だけどラーヤから一言。『私も少しはムカついていたから』と言われた。
その言葉に俺は貸し1つにしてと言うと了解してもらえた。
そうして俺達はいつものように解散して俺は部室に向かう。
そこでは授業をして、終わったら部室にて先生を混ぜた反省会をした。
そうして、なんとか俺はニノの機嫌をなおす事に成功して1日が終わった。




