ニノとの戦い
俺は今、父さんと戦闘訓練をしている。それは組み手に近いものだがかなり実戦的なものだ。そして今決着がついた。
「痛ッ!」
そう言い地面に倒される俺。そして目の前には拳を俺の顔に寸止めしている父がいる。
「アレクの負けだ。さて、今日の特訓はここまでにしよう。それと俺に一発で倒されなくなったな。」
「それでも直ぐにやられるけどね。」
俺は悔しさから皮肉混じりに言った。
「はは、それは仕方が無い、俺はお前よりも力も強いし経験があるからな。」
「まあ、それはそうだけど、悔しいものは悔しくてさ。」
「悔しがれるのは良い事だぞ、それは成長できると言う事だからな。」
そう言われて父に頭を撫でられた。
「さて、それじゃ家に帰るぞ。それに待たせている友達がいるんだろう?」
「そうだね。なら早めに行った方が良いかな。」
「そうしろ。」
そんな話しをしながら歩いていたら家についた。
「「ただいま。」」
「おかえりなさい。それと体を水で洗い流して来なさい。」
そう母に言われて俺たちは風呂に行き体を洗い流してリビングに戻ると昼ご飯が出ていた。そして家族全員で座り昼食を取っている時、母が聞いてきた。
「アレクちゃん、広場は一人で行けそう?無理そうならついて行くわよ。」
「母さん、心配しなくても大丈夫だよ。広場の場所までは直ぐそこだし。」
「そうだけど心配でね。」
「リリア、アレクなら大丈夫さ。その為に特訓をしているんじゃないか。」
「そうね。だけどアレクちゃん、太陽が沈む前には帰って来なさいね。」
「分かった。」
そうして昼食を食べ終わり俺は広場に行く準備をした。
「それじゃ、行って来ます。」
「気を付つけて行きなさいね。」
「分かった。」
そう言い俺は広場に走って向かった。
そして広場に着きニノと会った場所に行こうとしたら3人の子供がニノを取り囲んでいた。
もしかしたらトラブルかと思い向かったら1人が吹き飛ばされた。
「は?」
いきなり子供が吹き飛ばされているのを見て唖然としているとまた1人飛ばされ最後の1人も吹き飛ばされた。
「お、覚えていろよー。」
リーダー格と思われる子供がそんな捨て台詞を吐くと、仲間諸共、逃げ帰って行った。
そしてその跡には木剣を持ったニノがいた。
「ニノ?」
「アレク?」
ニノは今、俺に気がついたように反応した。
「あ、ああ、アレクだ。それでこれはどうしたんだ?」
そう言い吹き飛ばされた子供達を見ながら言った。
「私が本を読んでいるのを邪魔したから。」
「そ、そうか。それなら俺が前に話しかけたの迷惑だったか?」
俺はニノが読書中に声をかけた事を思い出した。
「鬱陶しかったけど本を奪おうとしなかったから。別に。」
鬱陶しかったのか!少し傷ついたぞ。
「だけどアレクは分かってるから良い。」
本の事か。
「良かった。それで気になっている事があるんだが
いいか?」
「何?」
「ニノってもしかしてめちゃくちゃ強い?」
「強いかは分からない。だけど同年代には負けない。」
「そうなのか。だから昨日木剣を持ってたのね。」
それにしても強いな、子供とはいえあの3人は年上で男だし、それを一瞬で倒すとは。
「だけど、同年代で負けるかもしれないと思う相手ができた。」
「誰だそれ?」
そう俺が聞いたら俺に向けてニノが指を差して来た。
一瞬勘違いかと思ったがここには俺しかいない為、必然的に俺になる。だけど俺はニノと戦って勝てる自信が無い。逆にサンドバッグになりそうだ。
「いや、無い無い、多分と言うか絶対戦ったらニノが勝つだろ?」
「そうかもしれないし、そうじゃ無いかもしれない。」
「いや、絶対そうだから。それに俺、あんなふうに相手を瞬殺なんてできないからな。」
「そう?アレクなら出来る。」
「いや、俺への評価が高いのは嬉しいけど無理だからね。それと俺が使えるのは体術くらいで剣は使えないし。」
そうなのだ父との戦闘訓練と言っても組み手や体術などの事で剣は習っていない。前に剣はやらないのか聞いたけどお前にはまだ早いって言われてやらなかったんだよな。
「そう、意外、体が鍛えられているから剣も使えると思ってた。」
「だから初めて会った時俺を見ていたのか?」
「私と同じくらいの年で鍛えられていたから見てた。」
「そうか。」
そうして静寂が訪れた。
それから何も話さない時間か数秒続き、正直に言って俺は気まずかった。何か話そうにもどうでもいい事が思い浮かぶだけで何も出い。
そうして悩んでいるとニノが喋り始めた。
「アレク、私は世界を冒険する冒険者に憧れた。ワクワクする冒険にダンジョン、そして絶景、色んな所に行きたいと思った。普通の女の子はお姫様に憧れるのかもしれない、だけど私は違った。けれど世界を冒険するには強くなくてはいけない、だから私は強くなりたい。だから聞きたい、アレクが鍛えているのは何のため?何の為に強くなりたいの?」
そうしていきなり話し始めたニノだったがその声には熱が籠りその目は真剣そのものだった。
それに対して俺は直ぐに答える。
「俺は立派な人生を送る為に強くなりたい。」
そう俺の目標はただこれだけ、前世の自分よりもしっかりと生きて、アレクとして立派な人生を送る。だがこの世界で生きていくには強さが必要。だから強さを求める。
「そう、なら私と戦おう。それに強くなるには実戦が一番。」
ニノはそう言った。多分さっきの熱弁も俺と戦うために話したのだろう。…いや、違うな。ただ冒険が好きなだけか。
「気乗りしないけど俺の為にもなるか、分かった。」
俺は父さんに負けが続き弱気になっていたのかもしれない。だけどニノのおかげで俺は強さが必要な事を明確に思い出した。
だから、俺より格上だろうニノと戦うのは自分の為になるとそう思った。
「そう、良かった。なら場所を変える。着いてきて。」
そうしてニノに案内された場所は少し森に入った所だった。そこには円形に木が生えてない場所があり、地面が踏み鳴らしてあることからここでニノは自主的に鍛錬している事が分かる。
「ニノ、ここか?」
「そう。ここで戦う。」
「ならルールはどうする?」
「一本勝負の致命傷になる所は避ける事。」
「了解。」
10メートルくらい離れて拳を前に出し構えた。それはニノも同じようで剣を持ち正眼の構えだ。
「準備はできた?」
「ああ、できたぞ。」
「なら、初め。」
こうしてニノの合図で俺たち2人の戦いが始まった。