観光
俺はまだ冒険者カード見ているニノに声をかける。
「ニノ、冒険者ギルドを出るぞ。」
「依頼を受けないの?」
「時間が足りないから無理だろ。行くとしても学校が休みの日だけだな。だから、飯食いに行こうぜ。」
俺は呆れてニノを見たけど、さっきの落ち込んでいる様子は無くなっているのが分かったため、どうでもよくなった。
「分かった。」
そうして俺達はビゲルさんにお礼を言いながら冒険者ギルドを出る。
「どこに行くの?」
「2つ選択肢がある。1つは冒険者がよく利用している飯屋に行くか、もう1つは普通に喫茶店か。」
俺はニノを見るとどちらにするか考えている姿に驚いた。ニノなら即決で冒険者が利用する飯屋を選ぶと思ったからだ。
「私は喫茶店にする。」
「分かった。ただ、意外だな、ニノなら冒険者が利用する飯屋を選ぶと思ったのに。」
「それは、私が一人前の冒険者になってから行こうと思ったから。」
一人前の冒険者ねぇ。俺達は学生だからランクは一人前になれないのに。飯屋に行く時にはもう成人してるだろうな。
学生は街中の依頼しか受けられない関係上、ランクはEまでしかあげられない無い。Dランクになるには魔物の討伐をする必要があるからだ。
「なら、卒業するまでは俺も行かないようにするか。」
「別にアレクが私と同じにする必要はない。」
「いや、ニノが我慢してるなら俺も行かないようにするのは当たり前だろ。」
「…分かった。」
俺はニノを見ると少し顔が赤くなっていた。自分でも今の言葉はカッコつけすぎかと思ったけど、気持ち悪がられてはないようだ。
そうして、俺は事前に調べていた喫茶店にニノと一緒に入った。
中は雰囲気が良く、女性客が多いようだ。そして、俺達は少し遅めの昼食をとった。
昼食をとり、会計を終えた俺達は門限までまだ時間があると分かり、街中を観光する事にする。
「それで、何処か行きたい所はあるか?」
俺達は街中の色々なところに飾ってある地図を見ながらニノに聞く。
「なら、冒険者ギルドに関係のあるところがいい。」
「それなら、道具屋、武器屋、情報屋、買取屋とかそこらへんだな。」
俺達は地図が飾ってある場所にあったパンフレットらしきものを手に取ると一緒に見ながら周り始めた。
道具屋では魔石に魔法を刻み込んで、魔力を流せば誰でも魔法が使用できるような魔道具を見た。
武器屋では冒険者にはどんな武器が人気なのかや、どんな装備がいいのかを聞いた。
情報屋では金を払えばどんな情報でも教えてくれると言われて、試しにと思い金を払ってこの街の観光名所を聞いた。
買取屋では身分証明書を出せばなんでも買い取ると聞いて、この街に来る途中に倒した魔物の牙や爪を売った。
そして、全てを周る頃には太陽が沈みかけており、俺達は門限までに間に合うように走っていた。
「俺達、つい先日にも同じように急いでたよな。」
「うん。でも今は、前よりもギリギリ。」
「なら、もっと速く走るか。」
「分かった。」
俺達は更に加速して学校まで走り、学校が見えてくると門を閉めようとする門番が見えた。
「待ってください!」
俺の声が聞こえて門番さんは門を閉めるのをやめて俺達に言った。
「君達、ギリギリだよ。今度からは気よつけるように。」
「すみませんでした。」
「すみません。」
「宜しい。」
学園を出た時に対応してくれたおじさんではなく若い男の人にそう注意されが、俺たちは学園に無事入る事ができた。
そうして、俺達はなんとか門限に間に合い、それぞれの寮部屋に別れ、寮部屋に着くとサンアが本を読んでいた。
「ただいま。それでサンアは何を読んでいるんだ。」
「おかえりアレク。僕は中級魔法についての本を読んで学んでいるんだ。」
「そうか。それで、今はどのくらいまで読み込んだんだ?飯でもどうかと誘おうと思ったんだが。」
「半分ほどだがら、帰ってからにするよ。だから食堂に向かおうか。それに聞きたいことがあるしね。」
「分かった。それじゃあさっそく向かうか。」
俺とサンアが食堂に向かっている道中、サンアと話しているとサンアが聞いてきた。
「アレクが前に貸してくれた本を覚えているかい?」
「ああ、校長先生を待っている時のやつだろ。覚えているぞ。」
「そう、それなんだがあれの中級魔法用はあるかい?あるなら貸して欲しいんだ。」
そう言って頼み込んできたサンア。だけどあれって初級魔法までしか無いんだよな。俺は申し訳ないと思いながら言った。
「すまんが無いな。母さんなら何か知っているかも知れないけどな。だけど俺もサンアに貸したやつしか見たことないしな。」
俺がそう言うとサンアはとても残念そうにした。
「そうか、それなら仕方がないね。」
「そこまで、欲しかったのか?」
「そうだね。あの本はとても分かり易かったから、もっと中級魔法の事を知ることができると思ったんだよ。」
「なら、サンアの家の力を使って探せばいいんじゃないか?」
「僕もそれを考えたけど、作者の名前がないからね。だから見つけた時にはもう必要にはなっていないだろうと思ったんだ。」
確かにそうだな。作者の名前がないと見つけるのは大変そうだ。そこでふと俺は思った。上級魔法の本ならまだ必要になっているんじゃないかと。
「なあ、それなら上級魔法の本を探せばいいんじゃないか。それならまだ必要になっていると思うんだが。」
俺がそう言うとサンアは言う。
「アレク、上級魔法の本を書くには上級魔法が使えないといけないんだよ。だからこの本を書いた人は上級魔法が使えないといけなくなる。だけど、僕の知っている中で上級魔法が使えて本を出している人は全て、このように書いていないからね。」
そうなのか、まあ、確かにサンアの情報の中でも無いなら中級魔法までしか使えない人なんだろう。
「なら、探すだけ無駄だな。サンアの知らない人で上級魔法を使えて、その上本を書いている人なんていないだろうしな。」
するとサンアは俺の方をじっと見てきて何か考え始めた。
「いや、やっぱり探すことにするよ。」
「なんだいきなり?さっきの意見と真逆なんだが。」
俺が不思議そうに見ているとサンアはやれやれと言うように言った。
「アレクを見ていたら、アレクが言った可能性も全然あると思ってね。」
「はぁ、そうか。」
俺は意味が分からなかったが取り敢えず同意しておいた。
そうして俺達は夕食と風呂をすまして明日に備えて寝ることにした。寝ようとした時にサンアから今日のニノとした事を聞かれたが適当に答えて俺はさっさと寝た。




