出会い
特訓を始めてから2年たち俺は5歳になっていた。
そして今では父から戦闘に関する事を教えてもらっている。最初の一年ちょっとは基礎体力などをつけていたが突然父から戦闘訓練をやると言われ、今では体力作りと並行して戦闘訓練も行っている。
だが一度も戦闘訓練で父に勝った事が無いそれどころか手を抜かれている状態だ。とても悔しいが今の自分でも父に敵わない事は分かっている。それでも感情は別である。
そして母の魔法学は比較的簡単だった。分からない事は全て母が上手に教えてくれるからだ。その他にも役にたつ知識やモンスターの事など様々な事を教えてもらった。
そして母の特訓で毎日魔法を使っていたおかげで魔力量が劇的に増えた。そのおかげか魔法を沢山使えるようになり魔法の練度がかなりのものになった。
こうして過ごしていたある日の夜。ご飯を食べ終えて自分の部屋に戻ろうとした時、父に呼び止められた。
「アレク、席に座りなさい。」
隣の席には母が座っている。
「何、父さん?新しい訓練でもやるの?」
呼び止められた理由は父との特訓でのメニューに追加があるからだと思った。そう言ったら父は黙り込んでしまった。
「アレクちゃん、お友達はいる?」
「いや、いないよ。それに俺は特訓で忙しいから。それに接点が無いし。」
何を言うかと思えば友達の確認かよ。そんなのできるわけ無いじゃん。
「なら、接点が有れば友達は作れるのね!?」
母はとても良い笑顔で言った。その笑顔に面倒くささを感じた俺はすぐさま言い返した。
「いや、別に友達は要らないからね。それに俺は特訓で忙しいし。」
「それなら、特訓を辞めにします。」
「は!?えっ!?ちょ、意味意味分からないんだけど。俺は特訓を続けたいんだけど。」
いきなり意味不明な事を言われ俺は素っ頓狂な声を上げた。
「特訓は辞めだ。」
そうしたら今まで黙っていた父が口を開いた。
「と、父さんまでどうしたんだよ。」
俺が混乱していると母さんがその理由を話し始めた。
「最近ね、村の人と話したのよ。それで子供の話しになったのよ。その時に出てきた話題が子供同士の間で流行っている遊びの話だったのよ。それで私は思ったのよこのままアレクちゃんに特訓だけをさせてもいいのかと。それにお友達がいないと精神教育にも悪いらしいしね。だから父さんと話しあったのよ。その結果特訓は辞めてアレクちゃんも友達と遊んだ方がいいんじゃ無いのかなって。」
そう言い母さんは話し終わった。確かに特訓だらけで友達もいないけど、正直言って精神年齢が子供達と違いすぎて絶対に遊んでもつまらない事が分かる。それなら俺は特訓をしていた方がいい。
「話しは分かったよ母さん。でも正直言って俺は特訓をしたい。それに友達もそこまで必要じゃ無いし。」
「だめよ、友達を必要じゃないって言っちゃ。それに友達は多い方が良いわよ。父さんと母さんは色んな人と友達になってたおかげで助けてもらった事もあったの。だから友達を作りなさい。それにいざとなったら相談事にものってくれるのよ。そのおかげで私は父さんに求婚されたのよ。」
「お、おいその話は辞めろよ。恥ずかしいだろ。」
「ふふ、貴方の情熱的な結婚の申し出はとても良かったわ。」
そうして二人は自分達の世界に入り込んでしまった。
まあ、俺としては両親の中が良いのはいい事だからね。それでも流石に目の前でいちゃつかれるとムカつくが。
「ごほん!」
わざとらしく咳き込む俺。
「「あっ!」」
両親は俺の前でいちゃついていた恥ずかしさからか顔が真っ赤になった。
「ま、まあとにかく友達を作るまで特訓は無しよ。」
「いや、無理やり話しを終わらせても駄目だからね。それに俺は特訓をしたいだけだから。別に友達は要らない。」
「また、そう言う事を言う。いいから友達を作りなさい。作ったら特訓してもいいから。」
そう母は言い今度こそ話しを終わらせた。
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次の日
俺は、いつものように朝早く起きてしまった。そうして窓から外を覗くといつも朝からいる父がいなかった。
「本当に特訓やらないのかよ。だけど、朝の体力作りはするか。」
そうして朝早くから家を出て中庭で走った。中庭は端から端まで25メートルあるから少し長いシャトルラン感覚で走っていた。それから3時間後母が起きてきた。
「アレクちゃん!ご飯よ!」
「分かった!今行くよ!」
そう言い走るのを辞めて家に向かった。そして家に入るとそこには肌がツヤツヤの母とは対照的に父が少しげっそりしていた。この2人を見た後、俺は察した。
そうしてご飯を食べていると母が言った。
「さて、アレクちゃん。友達を作る為に中庭の外に出てもいいわよ。でも村の中だけね。」
何と外に出てもいいと言う事だった。ちなみにこの村の大きさは中庭から見ても分かるくらいに巨大だ。ただ、大きい割に人口はそこまで多くない。
「えっ、いいのありがとう。」
それから話した結果、何でも母が村の広場まで連れて行ってくれる事になった。要するにそこで友達を作れって事らしい。
それからご飯を食べ終えた俺は母に連れられ広場にやってきていた。
「それじゃ、母さんは少しお話しをしてくるわね。」
そう言い母は他の人達の所へ行ってしまった。
「さて、どうしようか。」
俺はどうしようかと思って周りを見ていたら端っこの木の下に本を読んでいる少女がいる。
そう、本を読んでいるんだ。この世界では本は全て手書きのためとても高い。だからあの少女が本を持っているのは不思議でたまらなかった。
そう見つめていたのが悪かったのか目があってしまった。流石に無視はどうかと思ったのとついでに友達になってもらおうと思い近づいた。
そうして目の前に来たのに目の前の少女はずっと俺から視線を逸らさない。少女の周りを見ると木剣が木に立てかけてあった。それでも無言で俺を見つめてくるから流石に気まずくなり俺から話しかけた。
「ねえ、何を読んでいるの。」
俺がそう言うと本の題名を見せてくれた。その本は昔母が読んでくれた本と同じだった。
「勇者アトラスの冒険ね。それ俺も読んだ事があるよ。」
「嘘。」
「いや、本当だよ、確か悪いドラゴンに捕まった姫様をアトラスが助けるやつだろ。」
俺がそう言うと目の前の少女は俺の言う事を信じたのか話してくれた。
「本当に知ってた。」
「まあ、読んだ事あったし。有名どころは他にも色々知ってると思うぞ。」
「それなら、猫ろんだ。って言う本は?」
「知ってるぞ。確か猫の視点で猫の日常が書かれたやつだろ。」
「なら、3騎士物語は?」
「3人の主人公がいる変わった話だろ、それで最後は全員揃うやつ。」
「凄い、こんなに話が分かるの初めて。」
「そりゃ、よかった。」
「ならいっぱい本の事話す。」
そうして俺と少女・・・いや、ニノとは沢山話した。
それで分かった事だがニノは表情があまり動かないらしい。話しをしている時も淡々と話しているが俺的にはとても話しやすかった。
そうして夕方に差し掛かるまで話しをした。
「そろそろ時間。帰らないと。」
「もうこんな時間か、俺も帰らないとな。」
「アレクも帰る?」
「ああ。」
「そう、また明日もここにくる?」
「同じ時間にまたここにくるよ。」
「なら、またいっぱい話そう。」
「ああ、ニノもまたな。」
そうして別々の方向に向かった。俺は広場へ。ニノは反対へ。
そうして広場に行くと母さんがいた。ちょうど話し終わったのか俺を見つけるとこちらに向かって来る。
「アレクちゃん。お友達はできたの?」
「まあ、できたよ。」
「本当!よかったわ。私達のせいで友達ができないんじゃ無いかって心配してたのよ。」
「それで明日会いに行くから母さんの特訓減らしてもいいかな?ある程度魔法のことは俺も覚えたし。」
「いいわよ。それに特訓を父さんとする許可もします。それにしてもすぐに仲良くなったのね。私は友達ができないと思っていたから良かったわ。何なら、特訓を無くしてもいいのよ。」
「いや、特訓はやるよ。俺の為でもあるし。」
特訓をサボってしまったらずるずるとサボりそうだしな。
それにしても楽しかったな。何よりニノの淡々とした話し方がとても心地よかった。
そういえばなんでニノはなんで木剣を持っていたんだろうか?まあ、明日聞けば良いか。
こうして母と帰路についた。