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二人で目指す世界最強  作者: カラス
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冒険者登録

 俺達は寮に向かっている途中で決闘戦について話していた。


「アレクとニノさんは決闘戦で優勝が目標と言っていたけど、勝つ自信はあるのかい?」


 そうサンアに質問された。俺は考えてみたが絶対と言える確証が無かった。俺が知らないだけでラーヤみたいな人がいるかもしれないからだ。


「絶対とは言えないな。でも、負ける気はないけどな。」


「私も。」


「貴方達でも絶対と言えないのね。私が戦った中で貴方達が1番強かったのに。」


「そうだな、でもニノと当たらなければ上位には絶対に入れるな。」


「私もそう。」


 ラーヤはふーんと言っていた。そこで、ふとラーヤは決闘戦に出ないのかと思った。


「ラーヤは決闘戦には出ないのか?」


「出ないわよ。というよりは出れないのよ。」


 ラーヤの言葉に俺とニノは顔を見合わせて首を傾けあった。その反応を見てサンアが説明してくれた。


「僕達、上位の貴族は公式の場所で負けが許されないんだよ。だから決闘戦に出ないだられないんだ。だけど、騎士爵と男爵なら出れるよ。」


 なるほど、貴族のメンツと言うやつか、確かに負けたら侮られるな。それに相手が上位貴族だと萎縮してしまって戦えない事も考えられるのか。


「なら仕方ないか。」


 そうこう話しているうちに男子寮と女子寮にわかれる分岐点に来てしまった。そこで、俺はニノに用があったのを思い出して、わかれる直前に言った。


「ニノ、着替えたらすぐこの場所に来てくれない。それと、入学式の説明にあったとおり、制服じゃないと駄目らしいから制服でな。」


「分かった。」


 そうして俺達はわかれた。


 俺とサンアは寮部屋に帰ってくると荷物を置いた。そして、俺とサンアは制服に着替える。俺はニノとの用事で、サンアは図書室に行くためである。


 俺は着替えをそのまま放置してベルトにアイテムボックスと剣をつけた。そして、サンアより先に部屋を出て待ち合わせの場所に向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺が待ち合わせの場所に来て10分ほど経つとニノが来た。


「待った?」


「そんなに待ってないぞ。それと制服、似合っているな、可愛いぞ。」


 俺は服をしっかりと褒めておいた。4年前にニノを泣かせてしまったことから父さんに女心を分かれと言われて教えてもらっていたのだ。


「…ありがとう。」


 ニノはそう言うとそっぽを向かれてしまった。どうやら俺にはまだ女心はわからないようだ。


「ま、まあ、行こうか。」


 俺は声がどもったがなんとか出発することができた。そして、歩きながら少し経つとニノがようやくこちらを向いてくれた。


「ア、アレクも制服、似合ってる。」


 そうニノが恥ずかしがりながらもそう言ってくれたことで、俺はようやくさっきのニノの態度が分かった。ニノは照れていたのだと。


 そう思うとなんだかニノが可愛く見えてきた。まあ、ニノは実際誰よりも可愛いが。


「ありがとうな、ニノにそう言ってもらえて嬉しいわ。」


 そう俺が言うとニノの頬が少し赤くなっているのが分かった。やっぱり感謝を伝えるのは大事だな。


 そして、少し落ち着いたのかニノが聞いてきた。


「どこに向かっているの?」


「冒険者ギルドだ。そこで冒険者登録しようと思ってな。聞いた話によると学生なら成人していなくても登録できるらしいぞ。まあ、街の中でできることだけらしいけど。」


 その話を聞いた瞬間、ニノは俺に抱きついてとても嬉しそうにしている。俺はニノを離そうとしたが止めた。そんな冷めるような行動はとらないほうがいいからな。


 それにニノの気持ちはわからなくもない、街の中だけの事だとは言え憧れの冒険者になれるのだから。


 それから数分感ニノは俺に抱きついていた。ただ、流石に気持ちが落ち着いたのか正気に戻ると俺から離れた。


「ご、ごめん。嬉しくて。」


「気にしなくていいぞ。その気持ちはわかるからな。それに、ニノが喜んでくれてよかったよ。だからさっさと行こうぜ。」


 そう言って俺はニノの手を掴んだ。このままだとニノが動かないような気がしたからだ。だから多少強引でもいいだろう。


 俺はニノと手を握りながら寮の事務室まで歩いていた。学園の外に出るためには許可証が必要だからだ。そして、その許可証は寮の事務室て貰えるのだ。


 事務室に着くと俺はニノと一緒に受付まで向かった。そこで、許可証をもらうために名前を言うのだがニノがさっきのことを引きずっているようなので俺が変わりに言った。


 そして、俺達2人分の許可証を貰う。許可証はカードになっていてこれを門番の人に見せればいいだけだ。


 俺は門に向かおうとしたがニノがこのままだといけないと思い話し合うことにした。


 そのために俺は置いてあった椅子にニノを座らせた。


「ニノ、さっきも言ったが気にしなくていいんだぞ。」


 俺はそう言いながらニノとしっかり話すために手を離した。


「あっ。」


「どうした?」


「…なんでもない。」


「なんでもないような表情じゃないんだか。」


 なんでもないとニノは言ったが、表情が少し暗かった。せっかくの冒険者登録なんだだからニノには笑顔でいてもらいたい。どうすればいいのか。


 俺は少し考えたが、俺の頭ではこれしか思いつかなかった。俺もニノを抱けばいいと。正直に言って、俺が女の子を泣き止ませる言葉が思いつく筈もない。


 多分だが、ニノは俺に抱きついてしまった恥ずかしさと、迷惑をかけてしまったって言う罪悪感があるのだろう。だから俺もニノを抱けばどちらも一緒になるわけだ。


 俺は覚悟を決めた。少し恥ずかしいがニノにとって初めての冒険者登録なんだ、だからニノがちゃんと喜べるようにしないとな。


 俺はゆっくりと少し落ち込んでいるニノを抱きしめた。


「えっ?」


 ニノは混乱しているようだったが、少しして抱きしめ返してきた。


 これなら大丈夫だろう。俺は抱きしめるのをやめてニノの顔を見たがもう暗い表情はしていなかった。


 抱き合うのは精神的に落ち着くという論文を見たことがあったが本当のようだな。


「よし、いつものニノになったようだな。なら、さっさと冒険者登録しに行くぞ。」


 俺はニノに手を差し出した。


「うん、分かった。」


 そう言うとニノは俺の手を取り、立ち上がった。


それから俺はニノに許可証を渡して一緒に門を通った。門番のおじさんの話では門限が6時までらしい。だからそれまでに帰ってこいと言われた。


「さて、冒険者ギルドに向かうか。」


「うん。」


 そう、笑顔で言うニノ。まあ、笑顔と言っても微笑みくらいの笑顔だが。だけど昔と比べると凄い違いだ。


 昔のニノの笑顔はこんなわかりやすくてなかったからな。これはいい変化だろう。


「ニノってさ。」


「何?」


「表情が豊かになったよな。」


「そう?」


「ああ、昔と比べるとな。」


「昔の私の方が良かった?」


「いや、そう言っているんじゃない。それに俺はどちらのニノも良いと思っているからな。」


 ニノが勘違いをするから、俺は慌ててそう言う事じゃないと言った。それに、昔より今の方がいいとかそんなことは微塵も思ってない。昔のニノも今のニノもどちらもニノだからな。


「そう。」


 そう言ってまた微笑むニノ。


「まあ、いい変化だと俺は思うぞ。そうそう、冒険者登録したら飯を食べに行こうぜ。」


「分かった。」


「おう。それで、明日にでも依頼を受けみるか。」


 そんな話をしながら俺達は冒険者ギルドに向かっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 冒険者ギルドに着いた俺達は早速ギルド内に入ると、中では数人の冒険者が受付に並んでいた。ギルドは案外綺麗にされていて、ギルドの奥から戦闘音が聞こえてくる。


 俺達は冒険者登録をするために空いている受付に向かった。


 受付の人は背が高くマッチョで髪の毛がなかった。俺はその人に冒険者登録をしたいと聞いてみた。


「すみません。冒険者登録したいんですけど。」


「おう、冒険者登録だな。それにしても物好きな兄ちゃんもいたものだな、俺のところにくるなんて。それに学生だろ、よく俺にビビらなかったな。」


 話しかけてみるととても気さくないい人だった。確かに見た目は怖いがそれだけで判断するのは良くないからな。


「いえ、話してみないとその人の人間性は分からないものですから。」


「よく分かってんじゃねぇか。それで冒険者登録だったな。なら、学校からもらっている許可証を出してくれるか。」


 そう言われて俺達は許可証を出す。


「確認できたぞ。兄ちゃんがアレクで、そっちの嬢ちゃんがニノか?」


「そうです。」


「そう。」


「分かった。なら冒険者カードを作るから少し待っていてくれ。暇ならどんな依頼があるか見ておいた方がいいぞ。」


 そう言うと気さくな受付の人は学生依頼書と書いてあるファイルを俺達に渡してくれた。そして、俺達に渡すとカードを作りに奥に行ってしまった。


「ニノ、俺達学生ができる依頼書だ。中を見てみようぜ。」


「うん。」


 そして、俺達は中を見ながらこれはどうだ、これは面白そうなどと話し合った。


 そして、学生依頼書の中身は本当に学生でもできるようなことばかりであった。


 例えば、ペットの散歩や、手紙の配達、掃除などだ。前世で言うアルバイトに近い感じだ。


 そんなふうに俺とニノが楽しんで見ていると気さくな受付の人が戻ってきた。


「お二人さんともできたぞ。」


 そう言って俺達に冒険者カードを渡してくれた。冒険者カードにはアルファベットのFと書かれていた。


 俺はニノを見るととても嬉しそうにしている。これでニノは憧れの冒険者になれたのだ。


「あっ、この依頼書返しますね。」


 俺は冒険者カードに気を取られて依頼書を返すのを忘れていた。


「お、ありがとさん。それで、冒険者についての説明は必要か?」


「大丈夫です。自分の両者はどちらも冒険者なのでよく分かってます。それにニノは冒険者についてはよく知っているので。」


 そう俺がまだカードを見ているニノに指を差しながら言うと、気さくな受付の人が苦笑いを浮かべた。


「そうか、依頼を受けたい時は俺のところにきな、いつでも空いてるからな。」


「それはどうなんですか。あっ、それと名前を聞いてもいいですか?」


「言ってなかったか、俺の名前はビゲルだ。よろしくなアレク。」


「よろしくお願いします。」


 こうして俺とニノは冒険者になったのだった。


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