学校長
俺とサンアはいい感じの時間になったため、教室へと移動し始めた。1組の教室は1階にあるため、移動は楽である。
俺とサンアは教室に着くと扉を開け、教室の中を見ると俺達以外の全員がしっかりと座っていた。座っている生徒達は全員とも身なりがしっかりとしていて金持ちだとわかる。
教室の全員がこちらを一瞬だけ見たがすぐに視線を外していた。俺に向けてくる視線が少し長かったため、自分たちの記憶リストに載っているかどうかを確認していたのだろう。この学校はコネ作りにもってこいだからな。
そして、席は名前順なのが分かった。席は横が5縦が6の30席で、俺は1番最初の席でその隣にサンア、そしてその隣がニノだった。ラーヤは俺とは反対の対角線上に座っている。
俺はラーヤに軽く頭を下げて口パクでおはようと言った。ラーヤは俺の口パクに気づいてラーヤもお返しでおはようと口パクで言ってくれた。
そして、本を読んでいたニノも俺とサンアの気配に気がついていたようで、本を読むのを辞めていた。俺はニノの前で少し止まり小声でおはようと言うと、ニノもおはようと小声で返してくれた。
サンアも俺と同じようにニノに挨拶をするのかと思ったら何もしなかった。俺は不思議に思いながらも席に座る。
時間が余って暇だったため、俺は持って来ていた上級魔法についての本を取り出して読んでいた。
サンアも暇そうにしていたので、俺が前にニノに魔力を回す事を教えた時に読んでいた初級魔法について分かりやすい本を渡した。
サンアは口パクで感謝をすると、読み始めた。俺とニノが持ってきている本は全てカバーがしてあり本のタイトルは読めないようになっている。
だから、サンアに渡した本は気に入ってくれるかと心配になったが、どうやら杞憂だったようだ。サンアはすぐに集中して本を読んでいた。
サンアも魔法使いなんだからこの本は面白いと思うよな。サンアも俺と同類だと分かり嬉しく思いながら本を読んだ。
そして、時が過ぎるのはあっという間で授業開始の時間から少し遅れて先生が来る。流石に授業開始時間になると生徒全員とも何もしないで席で待っていた。
そして、遅れて来た先生を周りの生徒達が見ると少しザワザワしたがすぐに静かになった。
先生の見た目は一言で言うとお爺さんだ。ただ、この先生がとてつもない魔法の使い手だとわかる。もしかしたら母さんよりも強いかもしれない。
「遅れてしまってすまんのぉ、色々と忙しくて遅れてしまったわい。それじゃ、授業を始めるとするかのぉ。とは言え、この後は説明と教科書と制服を渡すのと、全員の自己紹介とわしの自己紹介くらいじゃがな。」
そう優しい声で説明したお爺さん。そして、続けてお爺さんは話し出した。
「では、この後の説明じゃが君たち1組は1年生で最も成績が優秀だと認識してほしいのぉ。だからこの後の入学式では他の生徒と同じように座るのではなくて、舞台裏に待機してもらいたいのじゃ。そして、制服と教科書は君たちが入学式にいる時に皆の机に置かれているのじゃ。」
そこで、このお爺さんは話を区切り、俺達生徒1人1人の顔を見た。そして、うんうんと頷くと言った。
「君たちは皆、才能溢れる者ばかりじゃ。それはこの学校の校長アルベルト•ザルムスが保証しよう。」
そこで、このお爺さんが何者かが判明した。どうやらこの学校の校長だったようだ。だから、このお爺さんが入って来た時にザワついたのか。
俺がへーと思って校長を見ていると校長が話を続けた。
「さて、話はここまでにして自己紹介を始めるかのぉ。名前と生まれ、そしてこの学校での目標を話すのじゃ。そして、まだ目標が決まっていない者もいるかもじゃが、その人は何をしたいかを話すと良いぞ。そうする事で、自分の目標が見えてくるものじゃ。」
この学校での目標か。俺の人生の目標は世界最強だが、この学校での目標はなんだろうか。俺は考えているとふと思い出した。
この学校には1番強い生徒を決める決闘戦がある。その決闘戦では、年齢が関係なく全生徒と混合で戦うのだ。
俺は決闘戦を思い出して、この学校での目標が決まったと同時に校長が話し始める。
「自己紹介の順番じゃが、出席番号1番から始めるとしようかのぉ。だから、アレクくん頼んじゃぞ。」
そして校長の話により、俺から自己紹介をすることになった。
確か、名前、生まれ、学校での目標だったな。俺は生徒全員の方を向き敬語と笑顔を意識して自己紹介を始めた。
「俺の名前はアレクと言います。そして、生まれはスノー男爵領の村です。学校での目標は、『決闘戦での優勝』です。同じ組になれましたので仲良くしてもらえると幸いです。」
俺は周りの視線を見ると、普通に好意的だった。侮蔑の視線とかを向けられると思ったが、杞憂だったようだ。そして、俺が着席すると校長から一言もらった。
「意志の強さを感じられるのぉ。この学校ができて初めて1年生の優勝者がでるかものぉ。」
そして、どんどんと自己紹介が進んでいった。どうやら自己紹介が終わると校長に一言もらえるようだ。
そして、サンアの番なった。
「僕の名前は公爵家が長男サンア•アブソート、生まれはアブソート公爵領が首都アブソート。学校での目標は『魔法を上達させる』ことだよ。よろしく頼むね。」
サンアが着席すると校長からの一言。
「魔法を上達させるのに、この学校はとても良い場所じゃ、楽しみにしておるぞ。」
最初の名前と生まれの言い方がいつものサンアぽっくないと思ったが、最後はいつものサンアだった。多分、貴族は自己紹介の言い方でも決まっているのだろう。
サンアの自己紹介が終わり、また、自己紹介が進んでいくとニノの番になる。
そしてニノが立つと、それだけで教室の雰囲気が変わった。それはニノの姿勢や仕草、全てが皆を惹きつけているからだ。
ニノは異次元の美人、いや、この歳なら美少女か。だからか、今までニノに意識を向けていなかった生徒たちも、自己紹介という形で意識をしてしまったため、目が離せなくなっていた。
「私の名前はニノ、スノー男爵領の村の生まれで、私も『決闘戦での優勝』が目標。よろしく。」
ニノはそう簡潔に話した。ニノも俺と同じく敬語で自己紹介をするのかと思ったが違うようだ。俺の母さんには敬語で話していたのにな。
俺はニノを観察して思った。もしかしてニノは緊張しているだけなんじゃないかと。でも、ニノはサンアやラーヤと話す時は敬語じゃなかったな。
なら、緊張ではないのか?俺は何故なのか考えたが別にニノはニノだからいいかと思い考えを放棄した。
ニノが着席するとみんなと同様、校長から一言。
「ニノくんも決闘戦での優勝が目標じゃな。アレクくんと競いながら頑張るのじゃぞ。」
そして、自己紹介が進んでいき最後の席のラーヤの番になった。
「私の名前は公爵家が長女ラーヤ•アブソート、生まれは公爵領が首都アブソート。学校での目標は『より剣術を高める』ことです。よろしくお願いしますね。」
俺はラーヤの自己紹介を聞いて誰だと思った。だって笑顔で話しており、しかも言葉づかいも荒くないんだから。一見すると清楚なお嬢様って感じだ。
だけど、剣術を高めると言うところはラーヤらしいと思った。ラーヤが着席すると校長からの一言。
「この学校の設備は充実しているからのぉ。それをうまく使うと良いぞ。」
そうして、全員の自己紹介が終わった。そして校長が席から立ち上がって言った。
「皆、この学校でそれぞれの目標に向かって励むのじゃ。わしとその他の先生方全ては君たちの味方じゃ、目標達成のために頼るのじゃぞ。それでは入学式に向かうとするかのぉ。」
そうして俺達は入学式に向かった。入学式は学校の説明などであり、俺達が紹介されてサンアが代表者として挨拶をしていた。
入学式が終わって教室に戻ると教科書と制服が配られていた。何故か制服がぴったりだったのは不思議だが。
そして、全ての事が終わる頃にはもう昼を過ぎていた。ホームルームでは校長先生の話しがあって1組の全員が荷物を持って寮に帰るように言われただけであった。
そして、校長先生が教室から出ると、帰る準備を全員がし始めた。まあ、生徒の大半が来ていた使用人に荷物を持たせていたが。
俺とサンアのところにもサラさんが来てくれていた。ニノとラーヤのところも同じのようだ。そして、俺とニノが荷物も持ってもらうのを断るとサンアとラーヤも断った。
そして、俺達は寮へと向かった。




