鍛錬の場所
寮が違うのでニノとラーヤと別れた俺達は自室に戻って寝る準備をしていた。
「ふぅ。全て終わったな。」
「すまない、アレクに全てをやらせてしまって。」
そう謝るサンア。サンアは貴族だから布団を組み立てることができなかったのだ。そのため、俺が2つとも布団を組み立てることになった。
「仕方ないから気にするな。それに就寝時間になって後は寝るだけだったせいでサラさんは使用人の寮に帰ってしまったからな。」
「僕も、自立できていると思っていたんだけどね。まだまだ、頼りっぱなしのようだ。」
サンアはそうため息を吐きながら言った。確かにサンアはある程度の事はできている。それとサンアの話しによると何もかも全て使用人に任せている貴族もいるのだとか。
「ならいつか教えてやるよ。今日はすぐに寝なきゃいけなかったから全て俺がやったけどな。」
「それはありがたい。」
そうして、俺達はそれぞれの布団に入って寝ようとした。俺は布団に入りながら明日の予定を考えているとサンアに話しかけられる。
「アレクは明日の自由時間はどうするつもりだい。」
「そう言うサンアはどうするつもりだよ。」
「僕は、予習の意味も込めて魔法の勉強でもしているよ。中には冒険者登録をしに行ってってお金を稼ぐ子もいるらしいけどね。」
「えっ、ちょっと待て。冒険者登録をする奴がいるって本当か?」
俺はサンアが言った冒険者登録の事を聞こうとした。あまりにも軽く言っていたので、少し思考が停止したが、もし登録できるのならしておきたい。それにニノが喜ぶしな。
「本当だよ。この学校に通うにはお金がいるからね。そのために冒険者登録をするらしいね。」
「なあ、冒険者登録は成人からだと聞いていたんだが今の俺達の年齢でもできるのか。」
俺が確認したいのはそこなのだ。父さんと母さんに成人の15歳じゃないとできないと言われていたからな。
「できると聞いているよ。一般的には自分で責任を取れる成人からしか登録できないけど、学生は登録できるんだ。学生は身元が分かっているからね。何か問題を起こした時に責任はその親に行くから学生でも登録できるんだ。」
「そうなのか、教えてくれてありがとうな。これで明日の放課後の自由時間にやることが決まった。」
「アレクは冒険者登録をするつもりなのかい?お金がないなら貸してあげてもいいよ。」
そんな心配をサンアにされた。まあ、心配半分と勧誘が半分だと言う顔をしているが、でも100%の善意よりは信用できる。
「お金は全然大丈夫だ。それと隙あれば勧誘してくるな。」
「バレてしまったね。表情には自信があったんだけどな、今思えばばアレクは僕の感情とかを的確に理解していたよね。なんでだい?」
「サンアは表情を作っているだろう。相手に伝わりやすくするためにな、だけどサンアが初めて俺を勧誘してきた時に違和感を感じてな、その時は真剣だからだと気にしていなかったが、流石に2回目で違和感の正体が分かったよ。表情と感情が一致していないってことがな。それと、雰囲気が勧誘している時だけ変わっていたしな。だから、俺はサンアの感情を読み取るようにしただけだ。まあ、1番の理由はニノだけどな。」
「1番最後の理由が大半のように感じるけどね。まあ、話してくれて理由は分かったよ。それとアレクがより非常識だとね。」
「非常識は余計だ。それと明日は忙しくなりそうだから俺はもう寝るぞ。」
「分かったよ。おやすみ。」
そうして俺達は眠りについた。
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いつもの鍛錬をする時間に起きた俺はどうしようかと思った。今の時間は朝の4時、隣を見るとサンアはまだ寝ていた。
そして、鍛錬をしようとしたがこの時間帯は訓練室が空いていないのだ。だけど、この時間に起きて何もしないのは落ち着かないので、何処かで鍛錬が出来ないか探すことにした。
俺は持ってきていた木剣を持って部屋から出て寮から出ようとしたら、この寮の責任者に呼び止められた。
何故俺がこの人が寮の責任者だと知っているのかと言うと、偶然他の職員から寮長と呼ばれていたのを聞いていたからだ。
「君、何処に行こうとしているんですか。」
この寮の責任者は女性で黒髪で前世の日本人のような感じだ。そして、俺を睨んで見てくる寮の責任者。ただ、俺は別にやましい気持ちなどはないので堂々と答えた。
「鍛錬をする場所を探していました。」
この寮の責任者、もとい寮長は俺の目を見ると嘘ではないと分かったのか睨むのをやめてくれた。
「嘘は無いようですね。ただ、この時間帯は学校に入ってはいけないためこの先に進んではいけません。だから鍛錬をするならこの寮の中庭でしてください。中庭までの道は初日に配られる資料を見ればわかる、と言いたい所ですがまだ貰っていないのでしょう?」
なんで、俺が資料を貰って無いと分かったんだこの人は、制服とかを着ていないからわからないと思うのだけれど。まあ、聞いて見ればいいか。
「はい、貰っていません。ところでどうして俺が貰っていないと分かったのですか。」
「それは単純なことです。まず、君が制服を着ていないこと。部屋を出る時には制服を着なくてはいけませんから。次に私が君を見た事がないからです。私は2、3年生を全て覚えていますから。」
「凄いですね、この寮にいる2、3年生を全て覚えているなんて、それと制服を着ていないのはすみません。」
「気にしなくていいですよ、君は知らなかったのですから。それとこれが地図です。」
そう言い寮長は服の胸の内側から地図を取り出して俺にくれた。俺はお礼を言って早めに鍛錬に向かおうと思ったが寮長に自己紹介をしていない事を思い出した。
「ありがとうございます。それと俺の名前はアレクと言います。これから3年間よろしくお願いします。」
「アレクくんですね。こちらこそよろしくお願いします。私のことはロカ寮長と呼んでください。それでは鍛錬を頑張ってください。」
そう言われて俺は地図を見ながら中庭に向かうと数人が鍛練をしていた。
そして真ん中に巨大な噴水が有り、端の方にベンチがあった。俺が鍛錬を始めようとすると、その数人が俺の事を一瞬見たがすぐに自分の鍛錬に戻っていく。
いつものように走ろうかと思ったが、流石に周りの人に迷惑がかかると思い、狭い範囲でできる事だけにした。
そして、食堂が開く30分前に俺は鍛錬を終えた。食堂は7時半から8時半まで開いている。そのため、俺は7時に鍛錬を終わらせた。周りを見ると他の人達もこの時間に終わらせるようだ。
そして、俺は自室に帰るとサラさんに起こされているサンアがいた。
「サラさん、おはようございます。」
俺が挨拶をすると、俺に気づいたサラさんもとても綺麗なお辞儀をしながら挨拶を返してくれた。
「アレク様、おはようございます。」
「サラさんはサンアを起こしておいてください。一緒に食堂に向かうので、それと自分は鍛錬してきて汗だくのため、お風呂に入ります。そのため俺の鞄をお風呂場の前に置いといてもらえませんか。」
「かしこまりました。ごゆっくりしてください。」
そうして俺は風呂に入って汗を流し、風呂から出るとしっかりと鞄が置いてあった。俺は中から自分の服を取り出して着替える。俺が着ていた服は後で洗うため風呂にあったバケツの中に入れておいた。
俺が風呂から上がるとサンアはもう起きていて、準備は万全のようだ。
「やっとお風呂から上がったかい。待ちくたびれてしまったよ。」
そうやれやれと首を振るサンア。俺は多少イラッとしたが気にしないことにした。
「さっきまで寝ていたのに言うじゃないか。まあ、いいか、さっさと食堂に行こうぜ。」
そうして俺達は食堂に行き、朝食をとって、また、この部屋に戻って来た。
「朝食も普通に美味しかったな。」
「そうだね。それに量もしっかりとあって、栄養素が高いものばかりでとても健康的だったよ。」
そんな事を話しながら会話がひと段落すると俺はちょうどいいと思い言った。
「それじゃ、9時までには教室に向かわないとな。それと掲示板に組みが書いてあって、サンアと俺は同じだったぞ、それとニノとラーヤもだ。」
「いつ確認したんだい?」
「俺が朝の鍛錬に向かった時だ。その時にはもう張り出されていてな。それを見ただけだ。」
「アレクも朝の鍛錬をしていたんだね。ラーヤも朝の鍛錬をしているから驚きだよ。それで僕たちは何組なんだい?」
「見たら1組だったぞ。だから、入学式で全校生徒の前に立つことになったのは確定だな。」
「そうだね。それで1組の教室にはいつ向かうんだい?僕は8時半には着いていたいんだけどね。」
俺はそうサンアに提案されたが特に時間はいつでも問題は無かったため8時半にすることにした。
「その時間でいいぞ。」
こうして、俺とサンアは8時半に教室に移動することになった。




