ラーヤとの模擬戦
サンアの妹のラーヤと模擬戦をする事になった俺は、ニノから学校が貸し出している木剣を貰った。俺は軽く剣を振り、どのくらいの重さか確かめた。
「問題なしっと。それで、どうやって勝負を決めるんだ?」
俺は10メートルくらい離れた場所にいるラーヤに聞いた。
「なら、3回剣が体に当たったら負けにしましょう。」
「分かった。」
俺がそう言うとラーヤが構えをとったので、俺も構える。そしてサンアが前に出てきて宣言する。
「じゃあ僕が審判を務めるよ。それでは、始め!」
サンアが腕を振り下ろすと同時にラーヤが俺に向かって来た。俺はラーヤの剣撃を流しながら、どのように攻めてくるのか攻撃を見ていた。
ニノ以外の同年代の相手、それも天才と言われる程の相手だ。盗めるものは全て盗む。
俺に攻撃する気が無いと分かったのか、ラーヤは更に攻撃を苛烈にした。だがラーヤは俺の攻撃を崩せないと分かると距離をとって仕切り直した。
「貴方、私を倒す気があるの。それとも舐めているのかしら。」
ラーヤは誰から見てもイラついているようだった為、俺は弁明するように言った。
「いや、そんな気は無いです。それに俺は天才と言われているラーヤさんに敬意を持っていますよ。天才でも、努力をしなければ強くはなれない。ラーヤさんの剣撃を見て、どれだけ努力をしたのかが分かります。ですが、私は負ける訳にはいきませんので倒させてもらいますよ。」
「貴方、言うじゃない。ここからは私も本気を出すわ。」
そう言って、ラーヤは身体強化を発動させた。俺はラーヤの身体強化を見て、とても練度が高いことがわかった。そして、俺も、身体強化を発動させる。
最初に動いたのはラーヤだった。だが先程とは攻撃の仕方が違い、ステップを混ぜて攻撃をしてきている。
それも規則性がなく予測が難しい。これが中々に混乱する。俺は剣で流すだけではなく、避けることも入れる事になった。
俺はラーヤが使う技術に興奮していた。女性という身体でどうやって男に勝つかを考えたから思いついたものだろう。本当にこれだから戦いは楽しい。
「あら、いい顔になったじゃ無い。」
俺はラーヤに言われて始めて、笑っている事が分かった。そして、そのまま打ち合いが続く。俺はこのままなら負けるだろう。そうこのままなら。
俺は距離を取るためにわざとラーヤが持っている剣を狙った。そして、俺が始めて反撃したのに驚いたのだろう。避けることができずにラーヤは剣で攻撃を受けた。
その一瞬を稼げたなら充分。俺は更に身体強化を強くさせた。強くすればするほど魔力の消費量は大きくなるが、俺とニノは毎日魔力を空にして今では膨大な魔力量がある。
魔力量を増やすには魔力を使うのが1番だがそれを子供がやると魔力量の伸びが異常になる事が判明した。
そのおかげで俺の魔力量は母さんくらいだといえば分かるだろう。だから、このくらいの強化なら、一日中使い続ける事ができる。
それと魔力の限界量が俺とニノはまだ見えてこない。母さんの魔力量の限界に近づいてもだ。だから、子供の頃が魔力を増やすのに重要なのだろう。
「まだ、本気じゃなかったってわけね。」
冷や汗をかきながらラーヤが言った。ラーヤは多分、魔力を増やす訓練をあまりしていなかったのだろう。
それにニノと戦っている時に魔力を使いすぎたのもあるか。
だけど、ラーヤはそれがなんだと言うように、身体強化を更に強くさせた。持って後10分くらいか。
俺は考えた。勝つだけなら受けの姿勢のままでいればいいだろう。ただ、それじゃあ意味が無い。俺は強くなるためにラーヤに勝負を挑む。
「俺から行きます。」
そう言って俺はラーヤに勝負を挑んだ。そこからは打って弾いて打ち返すの攻防。いくつか体術を使える隙はあったが使わない事にしていた。
だってそうだろう。俺はラーヤから技術を盗むんだ。なら全てを出しきってもらいたい。
俺はまた、一段と剣速を上げてラーヤを追い詰めた。ただ、負けるもんかとそれでもラーヤはついてくる。そして、俺の剣速に追いついてくる。これは確かに天才と呼べるだろう。だが、ニノ程では無い。
そして、俺はラーヤの剣を弾いて、その隙に斬るように見せかけて、剣の持ち手で更にラーヤが持っている剣を弾いた。
するとラーヤの手から剣が抜けるように離れていき、隙だらけのラーヤの首に剣をおいた。
「ラーヤさんの負けでいいですか?それともしっかりと3発入れますか?」
限界に近かったラーヤは地面に倒れながら言った。
「私の負けだわ。それにしても最後の攻撃は予想外だったわ。」
「予想外をつかないと天才には勝てないので。それに土壇場で覚醒して、追いついてくるくらいの事は考えていましたよ。だから、絶対に勝つためにあのようにやったのです。」
「貴方にそう評価してもらえるのは嬉しいわね。ニノが褒めていたのが分かったわ。」
「ありがとうございます。」
俺が敬語を使って言うと、ラーヤが俺に指を差しながら言った。
「その敬語、辞めてちょうだい。私に勝ったのだから敬語は要らないわ。それにお兄様には敬語を使って無いようだし。」
これは、認められたって事でいいのか。まあ、敬語をやめるくらいは別にいいか。
「分かった。それといい勝負だった。」
そう言って俺はラーヤに手を差し出した。ラーヤは俺の差し出した手を取ると立ち上がる。
「こちらこそいい勝負だったわ。」
こうしてラーヤとの模擬戦が終わった。




