力の恐怖と宣言
一階へと俺達が降りると母さんが、本を沢山机の上に置いていた。
「母さん、何をしようとしているの?」
母さんは俺達の存在に気が付いたのかこちらに振り返って俺の質問に答えてくれた。
「ニノちゃんが魔法を使えるために色々な本を外にある倉庫から持ってきたのよ。私が直接教えるのと一緒に、本を読んで魔法がどういうものかを学んでもらうためによ。それによってしっかりと自分の魔法を理解して貰ってから実践をするのよ。」
「なるほどね、それで準備は終わったの?」
「終わったわ。だから魔法がどのようなものか教えるわよ。」
この母さんの言葉で夜まで魔法について勉強する事になった。特に母さんは魔法の危険性については何度もニノに言っていた。
途中、父さんが家に帰って来たので今まで何をしていたのかと思ったら、どうやら広場の片付けや酒が入ったせいで壊したりした物を狩人の人達と修理したりしていたらしい。母さんが父さんに確認した話しを聞いたのだ。そして、そのまま父さんは寝室に向かった。
そのまま魔法の勉強は続き、夜9時に勉強は終わった。いつもはもう少し遅いがニノがいるから早く終わらせたのだろう。そして、俺がニノを家まで送る事になった。
外をニノと歩きながら、空が星によって綺麗に輝いている中、俺はニノに今日はどうだったかを聞いた。
「魔法を使うのが怖いと思った。」
俺はニノの答えに一瞬固まった。だってそうだろう、ニノは自分が強くなれるどんな事でもする。そのニノが魔法を使うのが怖いと言ったのだ。驚かない方が難しい。
俺は何故魔法を使うのが怖いと思ったのかを聞いた。すると帰って来たのは意外にも優しい理由だった。
「魔法が失敗してアレクに怪我をさせたら怖い。私は魔法の危険性をしっかりと分かってなかった。だから、アレクのお母さんに言われて怖くなった。」
確かにその可能性もある。それも勇者が使う魔法だから難易度が最初から高い、失敗する可能性の方が高いだろう。その事も含めてニノは怖くなったのだろう。
俺が黙って考えているのを見たニノは言った。
「離れないで。」
俺がニノを見ると瞳が揺れていた。その顔を見て俺は思った。
俺はバカかと、ニノをまた泣かせるつもりかと。
考えればわかる、頭の回転が早いニノの事だ。相手の事を傷つけてしまうかもしれない自分。そんな存在に近寄りたいとは思わないのが普通だ。
だから思ったのだろう俺がニノを怖がって離れて行ってしまう姿を。
俺だってそうだ、もし俺の力を恐れて親しい人が周りから誰もいなくなってしまう事を考えたら俺だって恐ろしい。
だから俺が言う事は一つだけだ。
「離れる訳が無いだろう。」
「本当?」
ニノは瞳はまだ揺れている。俺が場を流そうとした嘘だと思ったのだろう。
「本当だって、ニノなら俺が嘘をついているか分かるだろう。それにニノから離れたら俺は一人ぼっちだぞ。ただでさえこの村には俺達と同年代の人がいないんだから余計にな。それに、俺はニノの事を好敵手だと思っている。だからそのニノを超えないと世界最強になれないからな、それなのに離れるなんて愚考はしねぇよ。そして近くにいてニノの技術を全て盗み、ずっと勝ってみせるさ。」
俺はニノに向かって挑戦的な言葉をぶつけた。そして俺と約束した世界最強になると言う目標をニノも思い出したようだ。
「うん、うん。アレクは私から離れない、だって好敵手だから。」
そこでニノは一息つき俺に向かって言った。
「私は本気のアレクに勝てていない。だからもう負けない。本気のアレクに勝って世界最強を目指す。」
ニノの宣言に俺も感化され、宣言した。
「そうか、なら俺も言おう。ニノは俺の好敵手、そしてニノに勝って世界最強を目指す。」
こうして、俺はニノにニノは俺に挑戦状を叩きつけ、そしてどちらともなく笑い合う。
俺はニノの笑顔を見て、涙を流さなくて良かったとそう思えた。
「ニノ、俺はお前から離れない絶対にな。だから心配するな。」
「心配はして無い。私もアレクから絶対離れない。」
そして二人で並んで歩き始める。




