勇者
冒険者達と別れた後、俺達は家に向かい到着すると、家の方から父さんが物理的に飛んで来た。
俺達は当たらないように避けると父さんは転がりながら木に当たり、動かなくなった。家の方を見ると母さんがまるで何事も無かったようにしている。
すると俺達に気がついた母さんが笑顔で言った。
「アレク、ニノちゃん家の中に入ってね。そこに転がっているのは無視していいから。それと少し準備があるから待っていてね。」
俺達は呆然としたが言われたとおりに家の中で待つ事にした。途中、ニノが『アレクのお母さんも私のお母さんと一緒』って言っていたからリガルドさんもアレイシアさんからの制裁を受けたのだろう。
家の中に入り、母さんに言われたとおりニノとリビングで待っていると、母さんが水晶玉みたいなものを持ってきた。
「遅くなってごめんなさいね。」
「いや、別に構わないけど母さんが手に持っている物は何?」
「これは、魔力適性を正確に解るための魔道具よ。今回はこれを使って魔力適性を見るわ。」
そう説明されたが俺は思い出した。俺の時ってそんな魔道具使って無くね。
俺が不思議に思っていることが顔に出ていたのか母さんが追加で説明してくれた。
「前のアレクの魔力適性を検査したのは私の光魔法で検査したのよ。それにこの魔道具を持ってくるのが面倒だったしね。だけど今回はアレイシアさんとリガルドくんの頼みだからしっかりと検査するのよ。」
そう母さんが言うと、ニノがお礼を言い、母さんが検査の準備が始めだした。それから、準備がひと段落したようだったから母さんに終わったか確認する。
「準備できたの?」
「できたわよ。それで最初はどちらから始める?」
「あれ、俺もやるの?」
「まあ、一応ね、出したんだから正確にアレクの魔力適性も計るわよ。」
「分かった。それでどうするニノ、俺からやるかニノからやるか。」
俺がそう聞くとニノは少し考えて、母さんに言った。
「アレク、くんからお願いします。」
ニノが俺の名前をくん付けで呼び慣れていないのが分かったのか母さんが微笑みながら言った。
「ニノちゃん、別にアレクのことは呼び捨てで構わないわよ。それに私的には仲良くして欲しいからね。」
俺は母さんの笑顔に何かあると思ったが気にしないことにした。それに俺も別に母さんの前だからと言ってくん付けなんてしなくていいと思ってるしな。
「俺も呼び捨ての方がいいな、ニノにくん付けされて少し距離を感じて寂しかったからな。」
俺が本音を言うと、母さんがニヤニヤしていて恥ずかしくなったが気にしないことにした。
「分かった、アレク。」
「おう、ニノ。」
少し、二人で見つめ合っているとなんだか恥ずかしくなり、話題を変えた。
「それで、俺が最初でいいんだっけ。」
「うん。」
「おし、なら俺からな。」
そうして母さんの前に移動すると母さんが小さな声で聞き取れなかったが何か言っていた。
「逃げたわね。」
「母さん?」
俺が声をかけると何事も無かったように笑顔になって言った。
「何でもないわ、それじゃアレクから始めるわね。さて、アレクは手を魔道具に当てて、魔力を送ってくれる?そして、私がいいと言うまで魔力を送り続けてね。」
俺は母さんに言われたとおりに魔力を送ると、母さんの手が光始めた。多分何かしらの魔法を発動させたのだろう。そしてその光がだんだんと大きくなり、俺の魔力が送られた水晶玉と混ざり始めた。
すると、青、赤、緑の三色の色が水晶玉に現れた。注意深く見るとそれらの色の大きさが少し違うことが分かった。
「綺麗。」
ニノの言う通り、とても綺麗に輝いている。これらの色が俺の魔力適性なんだろう。
「アレク、もう魔力を送らなくて良いわよ。」
「分かった。」
俺は母さんに言われたとおりに魔力を送るのを止めると、だんだんと色と光が小さくなり元に戻った。俺とニノが水晶玉の魔道具に気を取られているのが分かったのか母さんが言った。
「はいはい、魔道具に気を取られないの。それで、アレクの魔力適性なんだけど、アレクが1番得意なのは火属性のようね。そして次に得意なのが風で最後が水よ。まあ、全体的に適性が高いから、気にしなくて良いわね。それじゃ、ニノちゃんの魔力適性を見るわよ。」
もう少し余韻に浸らせてくれと思ったがニノの適性が気になる為、すぐにどいた。
「分かりました。」
俺がやったとおりにニノのがやろうとしたら、母さんが声をあげた。
「あっ、」
「何か、ありました?」
ニノが心配そうな顔をしている。
「ええっと、ニノちゃんは魔力を送ることは出来るの?できないと私の魔法だけで計ることになっちゃうんだけど大丈夫かしら。」
それを聞いてニノは安心したようだ。まあ、やろうとしてまったが掛かったら誰だって心配になるわな。
「大丈夫です。」
「そう、なら良かったわ。しっかりと見るから安心してね。」
そう母さんが言うと、魔力適性の検査が始まった。そして検査結果が出ようとした時、水晶玉がとても強く輝き出した。
その光に驚いたニノは魔力を送るのを忘れたようで段々と光が収まった。
俺とニノが驚きで固まっていると、母さんが唾を飲み込んでゆっくりと言った。
「…ニノちゃんは勇者かもしれない。」




