酒に酔うと碌な事が無い
俺はいつもの時間に起きて、外を見たが父さんはいなかった。だから父さんと母さんの寝室を覗いたが、母さんが寝ているだけで父さんはいなかった。
「もしかして、広場で寝たままなのか?」
俺は呆れた顔になりながらも、朝の鍛錬を開始し、いつものコースを走っている時、父さんが広場で寝ているかを確認する為に広場に走りに向かった。
広場に着くと机に突っ伏しながら寝ている大人達がいた。勿論その中に父さんもいる。
俺が呆れていると奥からレイさんが向かっているのを確認し、俺はレイさんに駆け寄りながら挨拶をした。
「レイさん、おはようございます。」
「おはよう、アレク。奇遇だね。」
「そうですね、レイさんは何か用事が?」
そう聞くとレイさんは困ったような顔をして言った。
「ああ、ダンがそのままここで寝てしまってね。その様子見だよ。まあ、気持ちよさそうに寝ていたけどね。」
レイさんは寝ているダンさんに指を差しながら言った。確かに気持ち良さそうに寝ている。
「本当ですね。そう言えばレイさんは昨日どこに泊まったんですか?」
「ああ、村長さんの家だよ。僕達は別に野宿でも良かったんだが、広いから使っていいと言われてね。」
こう言う謙虚なところがレイさんのいいところでもあるんだろう。そして、人に頼る事もできるし、自分の考えも持っている。まさにリーダーに相応しい。
「俺は、レイさんみたいな人になりたいですね。強いし、皆んなに頼りにされているしまさにリーダーって感じで。」
「はは、大袈裟だよ。僕はただ、何ができるかを考えているだけさ。それに、アレクも冒険者になるんだろう。なら、自分でなりたい冒険者を目指した方が僕よりも立派なリーダーになるんじゃないかな。」
確かに、人の猿真似だけでは高みを目指さないか。だけど、この人のような性格にはなりたいよな。
「なるほど、なら俺が冒険者になって成長したらどうなると思います?」
「そうだね、僕もそれほど長く人を見てきた訳では無いから何とも言えないけど。アレクは皆んなから慕われる強くて頼もしい先輩冒険者になるんじゃないかな。僕の主観だけどね。」
そう言ってレイさんは軽く笑った。
俺はレイさんに言われた事を考えると前世よりは立派に生きているのがわかる。だけどこれは未来の話し、俺が努力しなければこの未来は無くなる。
「レイさんの言葉で俺はより一層努力しようと思いました。」
「僕の言葉でそう思えたなら、先輩冒険者としては嬉しいね。それと走っているのが見えたから、鍛練の途中だったんだろう、邪魔して悪かったね。それと頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます。」
俺はそう言ってレイさんと別れ、家に戻った。そこからはいつもより、ハードに朝の鍛錬を母さんに呼ばれるまでしていた。
家に入るといつものように風呂に入って朝食の席に座っていると朝食を運びながら母さんが言った。
「アレク、今日の昼頃にニノちゃんと会うんでしょ?」
「そうだよ。」
「なら、その時家に連れて来なさい、ニノちゃんの魔力適性を見るから。」
属性適正値の事を一般的には魔力適正値と言う。
「あれ?俺、その話しした?」
俺は記憶を振り返ったがその事を話した記憶が無かった。俺が不思議に思っていると母さんが言った。
「アレイシアさんから聞いたのよ。それでお願いされたの。」
「分かった。昼頃にニノを連れてくるよ。」
俺がそう返事をすると母さんがとてもいい笑顔で言った。目は笑っていないが。
「ああ、それと昼にニノちゃんと会う時、ついでにジークを見て来てくれない。」
俺は母さんを見ると怒りのオーラを感じた。
「み、見て来たらどうするの?」
俺は震える声を隠しながら聞いた。隠せていたかは分からないが。
「家に帰るように言ってちょうだい。そしてちょっとお話しをするから一時間くらい遅れて来てね。」
俺は思った。これは本気で怒っていると。そして父さんは死んだなって。そして俺は今朝見た父さんの事を母さんに伝えるか迷っていたら母さんに気づかれた。
「アレク、何かあるの?あるなら話しなさい。」
俺はこの時、蛇に睨まれたカエルの気持ちが分かった気がする。そして、俺は今朝の父さんの事を話した。
「ふふふ。正直に話してくれてありがとうアレク。ふふふ、そう、酒に酔って朝まで寝てたのね。ふふふ。」
俺は食べ終えた朝食の皿を台所に持っていき、直ぐに外に逃げるように出た。
最近では朝は身体強化無しで鍛錬して、朝食後から昼食までを身体強化有りで鍛錬をしている。そして俺はこの後の父さんの末路を考えながら昼食まで鍛錬を続けた。




