ゴブリン殲滅8
父さんとグレンさんは俺たちが返事をすると一瞬にして洞窟前まで行き、見張りのゴブリンを殲滅した。
あまりの速さに驚いているとリガルドさんが俺の背中を軽く叩く。
「アレクくん、驚いている暇は無いぞ、大空達はもう行ったようだ。」
そう言われて周りを見るとレイさん達がすでにいなくなっていて、ニノと目が合った。
「アレク、行こう。」
「了解。」
俺の言葉が合図となり俺達3人は洞窟に向かった。
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洞窟に入ると周りがゴブリンの死体だらけだ。
「凄い。」
「そうだな、父さん達は真っ直ぐキングに向かったから、これはレイさん達がやったんだろう。それに切り口がとても綺麗だ。」
「確かに、これほどの騎士は中々いないだろう。なのに何故冒険者に?」
リガルドさんが不思議そうに言う、確かにレイさんなら安定した収入の騎士になれると思うけど、だけど人それぞれだからな、その例がニノだ。
俺がニノを見ると俺の視線を感じたのかニノが振り返る。
「何?」
「いや、なんでも。それより、先に進みましょう。」
俺はニノを誤魔化しながらリガルドさんに話しかけ、進む。すると少し先に2本の分かれ道が有り、右側の道からゴブリンが出てくるのが分かった。
「リガルドさんどうしますか?」
「殲滅だ。そして、右の道を進む、ジーク達は左に向かったようだからな。」
そう言うとリガルドさんは剣を抜いた。ゴブリン達は俺達に気付いたのかこちらに近づいてくる。
「分かりました。」
「アレクくん、分かったでいい。私もアレクと呼び捨てにしよう。」
そう言うとリガルドさんは一息置いて続けて言う。
「ここからは殺し合いだ、そして私達は仲間となる。敬称は不要だ。」
その刹那、目の前にいたゴブリン達は首を切られており、そこには美しい剣を振るうリガルドさんがいた。
俺は目が吸い寄せられるような感覚に陥ったがニノに声をかけられ直ぐに正気に戻る。
「ここはゴブリンの巣。油断は禁物。」
「そうだな、ここからは全力で戦おう。」
俺達2人はリガルドさんの元に向かって右側の道へと進んでいく。
少し進むとゴブリンの集団が前から走ってきた。どうやら侵入者がいる事には気付いているみたいだ。
「私がやる。」
ニノはそう言うとゴブリンの集団に向かった。そしてニノの前にゴブリン達が来ると動きが止まり、バラバラになる。
今の一瞬で8連撃の攻撃が繰り出されていたのが分かった。
「ほう。」
今の連撃を見たリガルドさんが目を細めてニノを見ている。ゴブリンを殲滅したニノは俺の所に来ると言った。
「次はアレクの番。」
「分かったよ。それとその次も俺に戦わせてくれないか、俺は経験が少ないからさ。」
俺は生き物を殺す事に慣れるために、沢山のゴブリンを殺す事を決意した。
「分かったアレク、ニノは休みだ。」
「うん。」
俺は本当に譲ってくれるとは思って無かったから確認のためにもう一度ニノに聞いた。
「本当にいいのか。」
「アレクのお願いだから。」
「ありがとうなニノ。ならこの機会を活かすとするよ。」
その後、道なりに進むと何回かゴブリン達と遭遇したが難なく倒せた。だけど奥に進むごとに不意打ちなどをされるようになった。どうやらこの洞窟にいるゴブリン達には知性があるようで、リガルドさんも驚いていた。
「リガルドさん、ゴブリンってあんなに頭が働くんですか。」
「ゴブリンはハイ以上なら知性があるのは知っているのだが、ここのゴブリン達は全てのゴブリンが知性を有しているようだ。」
「異常?」
「異常だ。そうなるとジーク達が心配だな。」
確かにこの異常事態でのキングはかなり強いかもしれない。下手したら全滅もあり得る。
「急いで行こう。」
「そうですね。」
「うん。」
俺達は軽く走りながら奥へと進んだ。すると開けた場所にでる。そこはドーム型になっており、壁は少し光っている。
「リガルドさんここは。」
「多分だが、ゴブリン達の訓練場だろう。周りに棍棒が置いてある事と地面の削れぐわいからの推測でしかないが。」
「なら、ゴブリン達はどこに?」
「ジーク達の所に向かったのか、それとも不意打ちをするために隠れているか、どちらかだろう。」
そうリガルドさんが言い、ドームの中に入った瞬間、天井から沢山のゴブリンが降ってきた。
「散会!」
そうリガルドさんが言うと俺達は今いた場所から離れた。
天井から落ちてきたゴブリンの中に5体だけ明らかに強さが違う奴がいる。
「リガルドさん、明らかに強いのが5匹いる!」
「それはハイゴブリンだ!アレクとニノは合流しろ。」
「分かった。アレク!」
リガルドさんの指示に従い、俺達は合流しようとしたら俺の横で剣を振りかぶっているハイゴブリンがいた。
俺は直ぐに神経強化を発動させて、ハイゴブリンの攻撃に合わせるようにして、攻撃を受け流す。
攻撃を受け流されたハイゴブリンは無防備な状態、そこを受け流した時に下がった剣をそのままハイゴブリンの首に向けて切る。
するとハイゴブリンが吹き飛び壁にぶつかった。首を切った時に首から骨が折れる音が響いたから多分死んでいるだろう。
だけどそのおかげで分かった事がある。神経強化を使っている俺が俺と同程度の身体強化しか使っていない相手に攻撃するとダメージが入ることが。
それと、もっと強化をすれば首を斬れるかも知れない事が分かったのはでかい。
俺がハイゴブリンをやった事に驚いたのか、ゴブリン達は1匹も動かない。だけどその隙を見逃すリガルドさんとニノじゃない。
どうやら、リガルドさんの方には3匹のハイゴブリンが、ニノの方には俺と同じ1匹が向かっていたようだ。
「ニノ!全力で身体強化を発動させろ!」
俺は1ランク上のニノの身体強化とハイゴブリンの身体強化はどの用になるのかやってみてもらう事にした。
ニノは俺の指示通りに動いてくれて、ハイゴブリンの首を跳ね飛ばした。
そう、跳ね飛ばしたんだ。
だから、ランクが上の身体強化からの攻撃はダメージが入る事が分かった。
一方リガルドさんは普通に身体強化を発動させて普通に首を切っていた。
身体強化は質によってダメージが入る事も分かった。
身体強化は結構奥が深いらしい。色々と試したいけど今はゴブリンの殲滅中だから切り替えないと。
「ここにいるゴブリンは全て殺すんだ。」
「分かりました。」
「分かった。」
そこからはただの虐殺だった。数が多いが俺達の敵ではなかったからだ。
「最後の一匹っと。」
俺は最後の一匹を切り捨てた。どのゴブリンも逃げる事はなく全てのゴブリンが俺達に戦いを挑んできた。
「終わったか。」
「うん。」
「そうですね。」
「なら、体力はまだあるか?あるなら進もうと思っている。」
「余裕。」
「俺も大丈夫です。」
俺がそう言うとリガルドさんはため息を吐きながら言った。
「アレク、敬語になっているぞ。それと何回か敬語だったが癖なのか?」
言われてみれば、確かに俺は敬語を使っていた。多分前世で目上の人を敬うのが抜けていないんだろう。
「はい、多分癖ですね。直した方がいいですか。」
「いや、直さなくていい。敬語の方が何かと都合がいいだろう。」
確かに、敬語だったら無用なトラブルは起きないだろう。
「そうですか、ならこのままにします。」
こうして俺達は少しのハプニングがあったが父さん達の元へと急いで進んだ。




