ゴブリン殲滅7
俺とリガルドさんが父さん達の所へ向かうと、冒険者達は自分達の荷物を確認していた。あと少しで洞窟だから最終チェックをしているのだろう。
すると俺達を確認した父さんが言った。
「アレク、リガルドに絞められ無かったのか。てっきりニノちゃんを泣かした罰として絞められると思ってたんだが。」
そう父さんはなんでも無い様に言う。おかしいな?父さんは母さんに俺を見ている様に言われたはずなんだが。
するとリガルドさんが俺の頭に手を軽く置いて父さんに言った。
「こんないい子にそんな事はしないさ。」
すると俺とリガルドさんを見た父さんは首を捻る。
「お前なんかあったのか。アレクにやけに優しいじゃねえか。」
「私はただアレクくんを認めただけだ。」
「そうか、なら隊列を組み直せ、もう冒険者達の準備は終わった様だしな。」
「了解だ。」
「分かった。」
リガルドさんと俺は父さんに言われた通りに隊列に並ぼうとして隊列の場所に向かうとニノがいた。
俺はまだ怒っているだろうと思ったが、この後すぐに戦闘だからこのままじゃまずいと思って謝った。
謝るのはニノを怒らせてしまったのは勘違いさせてしまった俺の責任でもあるからな。
「ニノ、怒っているだろうけどすまなかった。」
俺は頭を下げてもう一度謝った。すると少しの間を置きニノが一言話す。
「別に怒ってない。」
ニノのその声は少し上擦って聞こえた。どうしたのかと思い顔を上げると少し頬を赤く染めたニノがいた。
その顔を見た瞬間、俺の口からポロッと本音が出た。
「…可愛い。」
「っ!」
俺の言葉を聞いたニノは頬を真っ赤に染め、手の甲を口に当てて隠した。
それを見た俺は自分が言った言葉を思い出し、自分も恥ずかしくなった。俺は少し動揺していたのだと思う。変なことを口走ってしまった。
「いや、違くて、いや可愛いのは本当だけど、俺が言いたかったのはこう言う事じゃなくて…」
俺がテンパってるとリガルドさんが助けてくれた。
「ニノ、アレクくんはニノを怒らせてしまったと思って謝っているんだ。」
するとニノは驚いた顔をして俺を見た。頬はまだ赤いが。
「ニノ、そうなんだよ、だからちゃんと謝りたかったんだ。褒めたつもりが余計に怒らせたから、だからすまなかった。」
俺は深く頭を下げた、よく考えてみると怒っている時にいきなり褒められたら誤魔化されている気がするもんな。ニノが余計に怒るのも仕方ない。
それに実際、そんな思いがあったから褒めたんだが、ニノはその思いに気がついたのだろう。
俺はどんな目に合っても覚悟はできている。するとニノの手が俺の肩をトントンと叩いた。俺はどうしたのかと顔を上げるとニノと目があった。
「私は本当に怒ってない、あれはただの八つ当たり、だった。だからアレクが謝らなくていい。謝るのは私の方。」
「ニノは謝らなくていいって、空回りした俺の責任もあるからさ。」
本当、ニノが怒っていると勘違いした俺って馬鹿だな。八つ当たりって俺が冒険者のシンシアさんと仲が良くて嫉妬したんだな。ニノは冒険者が好きだから。
「そんな事ない、全部私のせい。」
その顔は無表情だが、とても落ち込んでいる事は幼馴染の俺には分かる。このまま押し問答を繰り返しても意味が無い。
「そうだな、ニノせいだな。」
そう言うとニノは悲しそうな顔をする。ニノのそんな顔は見たくないな。
「だけど、全部じゃない。だから俺も謝ろう。ごめんなニノ。」
だが俺の言葉を聞いてニノは泣いてしまった。だが泣きながらもニノは俺に謝った。
「ア、アレク、私もごめん。」
多分、安心して泣いてしまったんだろう。
俺は泣き顔を見られるのは恥ずかしいかと思い、そっとニノを抱きしめた。
それから数分でニノは泣き止む。
「落ち着いたかニノ。」
「大丈夫。」
「そうか、なら列に並ぼう。」
「うん。」
俺はニノの手を掴んで立ち上がらせてそのまま手を繋いで列に向かった。リガルドさんは俺達の後ろについてきている。ただ、何か葛藤している様だ。多分、俺とニノが手を繋いでいる事に対してだろう。
でも泣くのは体力を結構使うから、ニノが列に着くまでは親バカは我慢してほしい。手を今のニノから離したら多分、崩れるだろう。
そして、列だがニノが泣いたのを何事かと父さんと冒険者達が来ようとしている中でシンシアさんは気を利かせて遠くに離してくれた様だ。
列に着くと生暖かい視線とニヤニヤとしている視線を感じる。どこの世界でもこんな感じなんだと思った。
俺はまだ葛藤しているリガルドさんに目を向けて言った。
「リガルドさんニノをお願いします。」
リガルドさんは直ぐに葛藤を辞めて頷いた。すると俺の話しを聞いたニノが聞いてきた。
「どこに行くの。」
「ああ、父さんに少し用があってね。」
「そう。」
ニノの声に元気が無かったが気のせいかな。多分、泣いたのを俺に見られたんだから気恥ずかしいだろう。
俺はニノの手を離して父さんの方へ向かった。その周りには冒険者達もいる。俺は歩きながら少し強く言った。
「父さん、列を作って行こう。すぐそこなんでしょ。レイさん達とグレンさんも。」
「分かった、分かった。だからそうトゲトゲすんな。」
「分かったよ、アレク。」
「了解しましたっす。」
そう言うと流石は冒険者、切り替えが早い。わずか数秒で列を作った。
さっきの列と違うのは前にグレンさんと父さんと俺がいる事だ。
「列を作れたな、なら行くぞ。」
父さんの声により俺達は洞窟へと向かい始める。洞窟へと進む道すがら父さんがニヤニヤしながら聞いてきた。
「それで、アレクどうしてあんな事になったんだ。」
「それ、俺も聞きたいっす。」
とグレンさんも聞いてきた。グレンさんは父さんの息子だからと俺に敬語で話しかけてくる。
「俺もだ。」
「ダンさんもですか。」
俺はちらりと後ろを見ると困った顔で笑っているレイさんと、周りを警戒しているジャックさん、そして何故か後ろでニノと話しているシンシアさん。
俺は面倒だと思いながらも話さないと余計に面倒になりそうだと思って、事の経緯から話し始めた。
その話をすると何故か皆から呆れた顔をされたが意味が分からなかった。
そして、とうとうゴブリンがいる洞窟から約100メートルのところまで来た。俺達は今、森の茂みに隠れながら作戦の最終確認をしている。
「さて、ここからは殺し合いだ。そして1匹も逃すな。」
父さんがそう言うと冒険者達は真剣な顔つきになった。
「よし、まずは俺とグレンが一気にキングの所まで行く、その後を大空達が軽く処理をしながら俺達について来い、なるべく早くな。そして最後が1匹も逃がさない様に狩り尽くせ。作戦は以上だ。」
『了解!』
この場にいる全員の言葉が重なった。




