表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二人で目指す世界最強  作者: カラス
25/100

ゴブリン殲滅6

 ニノを泣かせてしまったらしい俺は今、とてもピンチな状態に陥っている。それは、リガルドさんに詰め寄られている事だ。


 事の経緯を話すと、俺がニノを泣かした事をシンシアさんに聞いたリガルドさんが目にも止まらぬ速さで俺の前に来ると俺を森の奥に攫い、今に至る。


「アレクくん、正直に話してくれよ。友人の息子をなくしたくないんだ。」


 そうリガルドさんは顔に笑顔を貼り付けている様に話す。その顔は笑っているが目が笑っていない。


 多分、正直に話さないと俺は殺されるだろう。ただ、ニノを泣かせたらしい俺は正直に話しても殺されるだろう。


 あれ?もしかして詰み。


 俺はどうにかしてこの状況を脱しようと頭を働かせたが何も思いつかなかった。


 なるほど、父さんの言った通りだった。実戦という事は命を落とす事があるという事、だけどこの世界での死がまさか友人の父親に殺されるとは、人生分からないものだな。


 なら、最後は潔く正直に話そう。


「実は…」


 そうして俺はさっきの出来事を全て話した。


 話し終わると腕を組んで話しを聞いていたリガルドさんが腕を広げるのが分かった。


 それを確認した俺はゆっくりと目を閉じた。するとリガルドさんに体を抱きしめられた。


「えっ?」


 俺は意味が分からなくて声が漏れた。俺は殺されると思っていたのに抱きしめられるってどう言う事?


 俺が混乱しているとリガルドさんが俺を抱きしめながら言った。


「うっ、うっ、こ、こんなにも、こんなにもニノの事を分かってくれているなんて。ありがとう、ありがとうアレクくん。」


 リガルドさんは俺を抱きしめながら泣いていたのだ。


「だ、大丈夫ですか!」


 そう俺が聞くとリガルドさんは謝りながら言った。


「すまない、みっともない所を見せた。」


「いえいえ、気にしないで下さい。それでどうして涙を?」


 確かこの世界では男が涙を流す事は恥という記憶がある。それなのに流したと言う事はそれ相応の理由があるのだろう。


 俺がリガルドさんに涙の理由を聞くと弱々しく話し始めた。


「この話しはアレクくんだからこそ聞いてほしい。私が騎士の時、とある任務でしくじってしまってね。その時に左腕が斬られてしまったんだ。」


 そう言うとリガルドさんは腕を捲ると左腕を取り外した。リガルドさんの左腕は義手だったのだ。それを見て何故リガルドさんが騎士を辞めたのかが分かった。


「私は絶望したよ、腕が無ければ本領を発揮できない。そして自分がとても腹立たしかった。私はこう思ったよ、腕を斬られたのは自分が未熟だからだと。だけど私は周りに救われたんだ。腕が無く、騎士の道が閉ざされても私のそばにいてくれた人がいた。」


 その人がリガルドさんの妻、もといニノの母さんか。


「そして私に子供が産まれたんだ。それがニノだ。私は自分の子供にこんな想いをさせてはいけないと思った。だけど、ニノが剣を振っているのを見て昔の血が騒いだのだろう、いつの間にかニノに剣を教えていた。最初はすぐに飽きると思っていたがニノは辞めなかった。私は恐怖したよ、自分の子供にも自分と同じ目に合わせてしまうかもしれないと、下手したらそれ以上も有り得ると。そして剣を教えるのを辞めたんだ。だがニノは1人で剣を振って鍛えていたんだ。それを見た私は覚悟を決め、ニノが死なない様に全力で剣を教えることにしたんだ。そうしたらニノは1人になっていた。それはそうだろう、ずっと庭で剣を教えていたのだから、だから広場に行かせたんだ。友達ができるだろうと思って。」


 なるほどね、多分リガルドさんがニノが1人なのを心配して広場で友達を作る為に行かせた時に、俺と会ったのか。


「するとどうだろう、ニノはアレクくんの話しをする様になった。本を一緒に読んだとかだ。だけど一番驚いたのはアレクくんがニノに勝ったという話しを聞いた時だった。それからはアレクくんの話しばかり、当時は複雑な気持ちを抱いたが娘が喜んでいるのを見てそんなものは消えた。そして今日、アレクくんと会って、ニノが友達として選ぶのが納得した。だからニノを泣かせたと聞いて怒りが湧いたんだ。だが、アレクくんの話しを聞いて、君なら、いや、君しかいないと思った。だからこそ、これからもニノのそばにいてくれ。」


 この思いがリガルドさんの親バカの原因か。大切な娘であり、自分の様な思いをさせない為、強くしたがその結果ニノが1人になってしまったことが。


 なら、俺が言う事は決まっている。


「リガルドさんに言われなくてもニノのそばにずっといますよ。そして絶対にニノをリガルドさんと同じ目に合わせません。」


 俺の言葉を聞いたリガルドさんは頭を下げて涙を流しながら言う。


「ありがとうアレクくん。」


 俺はいたたまれなくなった為、言う。


「頭を上げて下さい。それにリガルドさんは立派だと思います。自分の子供の為に出来ることを全てやったんですから。」


 ほんとにそうだ。前世の俺とリガルドさんを比べたら天と地の差があるだろう。


「そう言われると救われる。では、戻ろうか少し長話をしすぎたようだ。」


 そう言われ俺達は並んで歩き出す。俺はリガルドさんの話し聞けて少し仲良くなれたような気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ