ゴブリン殲滅戦3
集会みたいなものが終わりニノと俺は父さん達がいる所へ向かった。
そこに向かうとグレンさんが父さんに頭を下げて何かを必死にお願いしている様だ。
周りにはユークさんと冒険者のレイさん、シンシアさん、ジャックさん、ダンさんとリガルドさんがいる。
俺は近くにいたリガルドさんに何をしているのか話しを聞く事にした。
「リガルドさん、グレンさんは何をしているんですか。」
「アレクくんか、実はジークに模擬戦をしてもらおうとグレンくんが頭を下げているんだ。」
「それで、父さんは何と。」
「この後、直ぐにゴブリン殲滅に行くから無理だと言って断ったんだが、それでもお願いしますとグレンくんが聞かなかった。」
「それでこんな状態と。」
「そうだ。」
なるほど、まあグレンさんは長年会えなかった師匠にあったものだから、またいなくなると思っての行動だろうな。
周りの人達も苦笑いしてるな。それにしてもレイさんがユークさんの言葉を信じたのはどうしてだろうか。
気になったので俺はレイさんの元に行った。ニノはリガルドさんに絡まれて身動きが取れない様だ。
「すみませんレイさん。聞きたいことがあるのですが。」
俺がそう言うとレイさんが俺の視線に合わせて聞いてきた。
「君は、誰かな?」
「すみません、アレクと言います。」
俺は簡潔に自己紹介をする。
「アレクくんか、それで聞きたい事とは何だい。」
「ユークさんに質問した時、何で疑わなかったんですか?」
「それはね、Aランク冒険者のジークって言ったら冒険者の中で有名だし、第三騎士団長さんの方も異例の早さで出世した事で有名だからね。それに2人が仲がいいと知ってる人は少ないんだよ。だからこの村で揃って2人の名前を出した時点で本物だと分かったんだ。」
「そうなんですか。」
これを一瞬で頭の中で考えて答えを導き出したのか、この人はもしかして凄い人なのでは。
俺がレイさんを見ていると俺の視線に気付いたのか不思議そうにしている。
「僕の顔に何かついているかい?」
「い、いえレイさんは凄い人だと感心してたんです。」
「そんな事ないと思うけど。」
そう言い、レイさんは頬をかく。するとレイさんの肩に手を置いて話に入り込むようにしてシンシアさんが言う。
「レイは凄いんだよ。君、よく分かってるね。」
集会の時のシンシアさんは清楚な感じだったけどどうやら元気系らしい。こっちが素なんだろう。
「シンシア、少し、落ち着け。」
そうレイさんは言いながらシンシアさんの手を肩からどかした。
「シンシアさんでいいですか。」
「シンシアお姉さんって呼んでもいいよ。」
「えっ、あっ、はい。」
いきなりの事で混乱して適当な返信になってしまった。
「シンシア、アレクくんが困っているだろ。すまないね。」
そう笑いながらレイさんは言う。
「いえ、いきなりのことで混乱しただけですので。」
本当、いきなりお姉さん呼びを要求するとは驚きだ。
「それにしてもアレクくん、君は随分と大人びているね。敬語もできているし。」
そうレイさんが言うと2人で俺の事を見てくる。
「そんな事、有りませんよ。あるとしても、それは両親の教育が良かったのだと思います。」
2人はそんなものかと思ったのだろう。
「そう言えばここにいるって事はお父さんもゴブリン殲滅に行くのかい。」
良かった、何とか話しをそらせた。それにしても8歳児ってこれくらい話せるイメージがあるんだけど違うのかだろうか。ニノもこれくらいは話せるし。
「はい、そうですよ。」
「それなら、途中までは一緒になるだろうから挨拶でもしようかと思うのだけれどどの人かな。」
どの人?ああ、そうかレイさん達は俺の父さんが誰か分からないのか。
「父さんなら、直ぐそこに。」
そう言い俺は父さんに指差す。そこにはまだ頭を下げられている父さんがいた。
「「えっ!」」
俺がそう言うと2人はとても驚いたようだ。そして俺をまじまじと見る2人。
「た、確かによく見れば顔の作りが似ている。」
「言われて見ればよく似てるよ。」
そう言いシンシアさんはうんうんと頷く。
「まあ、今はお取り込み中みたいだから挨拶は後でいいと思いますよ。」
「そうする事にするよ。でも驚いたな、アレクくんがジークさんの子供とは。」
「私も驚いたよ。アレクくん、アレクくんがジークさんの子供ならリリアさんもいるの。」
「母さんはここにはいません、家にいますよ。」
「そうなんだ少し残念。」
「どうしてですか。」
「私、リリアさんに憧れているんだ。リリアさんは二つ名が先行するけど、回復魔法も一流なのよ。」
「二つ名?」
「あれ、知らないの?破壊の王ジークと破壊の魔女リリアって言う二つ名があるんだよ。」
冒険者って二つ名がつくのか。
「冒険者って二つ名がつくんですか?」
俺がそう聞くとレイさんが答えてくれた。
「誰でもと言う訳じゃないかな。偉業を成し遂げたりしたらギルドから公式に二つ名が贈られるんだよ。まあ、贈られると言っても冒険者達に呼ばれているものをそのまま使うだけなんだけどね。」
「そうなんですか。なら、2人には二つ名ってあるんですか。」
俺がそう聞くとレイさんは複雑な顔をして、シンシアさんは待ってましたと言うんばかりの顔をした。
「私には無いけど、レイにはあるんだよ!」
やっぱりレイさんにはあるんだ。近くに来た瞬間にレイさんは只者では無い雰囲気があったからな。
「どんな二つ名ですか。」
「青の千騎士レイ。」
シンプルにレイさんに似合っていると思うんだけどレイさんは何で複雑そうな顔をするんだろ。
「レイさんに似合っていてカッコいいですね。」
「そうでしょ、レイはダンジョンブレイクの時に一騎当千の活躍をしてその二つ名を貰ったの。」
ダンジョンブレイクとはダンジョンから魔物が溢れ出す現象のことだ。
「それは凄いですね。」
「まあ、沢山の冒険者がいたからこそ、全力で戦えたんだけどね。」
レイさんは謙遜しながら言った。
「ダンジョンブレイクが起こった街ではレイは英雄みたいなものね。」
まあ普通に人当たりが良さそうなレイさんだから英雄みたいにもてはやされるか。
「その時レイさんはランク何でしたか。」
「ランクDだったね。そのおかげで今はランクBなんだよ。」
一騎当千の活躍をしてランクBなのか。ならランクAの父さん達は凄いのか。
「パーティはいつから組みましたか。」
「私とレイは最初からでその後ジャックとダンと組んだわ。」
「そうなんですか。他にも聞かせてください。」
俺がそう聞くとレイさんが言う。
「いいけど、熱心に聞くね。冒険者の話しは面白いかい。」
「面白いですね。それに、友達が冒険者に憧れているので。」
俺がそう言うと2人はにこやかに笑った。
「なら、沢山話すよ。」




