ニノのセンス2
ニノに身体強化を教える事になった俺は、さっそくどう教えればいいのかわからなかった。
だって、そうだろう。俺も今日父さんから習っただけだからだ。あんなにカッコつけたのに詳しく無くて教えられないとかただの恥ずかしい奴になってしまう。とにかく、何か考えないと。
そこで俺は閃いた。
「ニノ、身体強化をするには魔力が必要なんだ。だから少ないと一瞬で強化が解けてしまう。だから魔力を増やす訓練をしないといけない。」
「それなら平気。私はいつも生活魔法を使って魔力を空にしている。」
「そ、そうなんだー。」
やばい、ニノも俺みたいに魔力を空にして魔力を増やしているとは思わなかった。
だけどよく考えてみると当たり前だと気がついた。だってこの村には井戸はあるけど井戸の水を家に運んでいる人は見た事が無い。
だから誰でも生活魔法が使えると言う事。即ち冒険者に憧れているニノが魔力量の増やし方をどこかで知ったとしたらそれを利用しない手はない。
「どうしたの?」
くっ!ニノが純粋な瞳で俺を見てくる。だけど、そこで俺は閃いた。そう言えば魔力を放出するのはできても体を魔力で包み込むのは難しいのでは。俺は母さんと魔法の勉強をしていたから簡単にできたのだと思う。
まあ、父さんは俺が一発で身体強化をできた事を疑問に思わなかったようだが。物は試しだ。
「ニノ、生活魔法を使う時魔力を放出するだろう。それを魔法にしないで、体を包み込む様にしてくれ。」
「こう?」
そう言ったニノは体を魔力で覆っていた。だけど、その魔力は波上になっていてとても不安定だった。
「いちようできている様だけど、なんか不安定だ。もう少し安定させる事はできないか。」
「やってみる。」
そう言ったニノは目を閉じて集中し始めた。それを見守っていた俺は、驚きを隠せなかった。何故ならニノの魔力の波が静まっていくのだから。
「どう。」
「ニノ、お前、凄すぎるだろ。」
俺は、凄いと言う言葉しか出てこなかった。だってそうだろう。俺は母さんから魔法を教わっていたからスムーズにできただけで、生活魔法しか知らないニノが集中するだけでできてしまうのだ。
こんな天才を前にしたら、前の俺なら諦めていただろう。だけど、今の俺は逆にこの天才を超えてみたいと思うのだ。
「そう、だけどアレク程じゃ無い。」
そう言ったニノは集中を解くと魔力がまた不安定になった。そのままニノが続けて言う。
「これじゃ使えたとは言えない。」
「そんな事無いと思うが。」
事実そうだと思う。魔力が不安定でもある程度形は出来ていたし、普通に身体強化できていただろう。
「いや、アレクの身体強化よりは未熟だった。」
「それは、そうだろう。魔力を理解していないと上手く出来ないのは当たり前だ。第一、俺に体術で勝てる様になって魔法まで負けたら俺の立つ瀬がない。」
「それは、ごめん。」
「はあ、別に良いよ。俺に体術で勝ったのはニノの実力だし俺の努力不足でもあるからな。それに魔法では負けていないし。」
まあ、このままの勢いで魔法まで成長されたらたまったもんじゃないけど。
「アレク、ありがと。」
俺は、ニノの礼を聞こえない振りをした。
「それじゃ、身体強化の訓練やるぞ。」
「うん。」
それから俺はニノに身体強化のコツを教えながら数時間が経過する。
「それじゃ、ニノやってみろ。」
「分かった。」
そう言いニノは魔力を体に纏わせた。その魔力は波が少し立っているが身体強化は十分過ぎるものだった。
「おお、成功だぞニノ。」
「む。」
「どうした、ニノ?」
「波が立ってる。」
「そんなの誤差だ誤差。」
「気になる。アレク、身体強化してみて。」
「いいけど俺の身体強化をみてどうするんだ。」
俺はニノに言われて身体強化を発動させるとニノはじっくりと俺を見る。
「やっぱりアレクの身体強化は波が全く無い。」
「波が気になるのか。一応言うが俺の身体強化に波が無いのは俺が5年くらい魔法を学んでいたからだ。だからと言って今から訓練しても時間が掛かりずきる。よって戦闘訓練でよりよくすればいい。そのうち波が立たなくなるだろう。」
「分かった。なら、戦おう。」
そう言ったニノはとても上機嫌だった。因みに表情はほぼ動いてない。
「残念だけど、時間切れだ。」
そう今は太陽が沈もうとしている時間帯なのだ。
「む。なら仕方ない。明日戦おう。」
最近俺は、ニノが戦闘狂なのではと思っている。初めの印象は無口の本好きな女の子と思っていたのにな。
「ああ、分かったよ。それじゃ、広場まで行こうぜ。」
こうしてニノに身体強化を教える事が終わった。




