転生
(なんだここ)
そう思い周りを見渡してみるとそこは暗闇だった。
そこに一筋の光が暗闇の奥で光った。その光は徐々に消えていく。
(まて、消えないでくれ)
その光に向かって走ったら全身が光に包まれ浮遊感があった。
少し目を開ける事ができるのが分かり、そして体が動く事も分かった。そうして目を少し開けると目の前にとても綺麗な女性と筋肉の塊みたいな男がいる。
女性は赤い髪で、男が茶色の髪だ。
「アレクちゃんママですよ。」
女性は俺の手を優しく握りそう言った。反射的に女性の手を握ると。
「貴方!見て!アレクちゃんがアレクちゃんが手を握ったわ。」
その女性はとても喜び俺を持ち上げた。そして父親と思われる男性に俺を預けた。
「さすが、俺の子供だ!なんて可愛いんだ!」
そう言い髭を擦り付けてきた。とてもじょりじょりしていてとても不快だ、それに痛い。やめろと言おうとしたが声が出ない。
「う〜う!」
しゃ、喋れないだと。そうして俺は自身の体を確認すると、自分の体がとても小さい事が分かった。
(俺は赤ん坊に転生したのか!)
転生したと分かって少しパニックに陥いる。
「お、おっと。暴れるな危ないだろ。」
「貴方、私にアレクを渡して。髭を擦り付けたから嫌がられたのよ。」
父親と思われる人物は母親に俺を譲った。
「そ、そうなのか。」
父親は少し寂しそうにしていた。
「はーいアレクちゃんご飯ですよ。」
母親は胸を出してきた。どうしよう、罪悪感がとてもやばい。俺は今赤ちゃんでも流石にまずいだろ。
「どうしたの?アレクちゃん飲まないの。前まではしっかりと飲んでいたのに。」
どういう事だ。俺はアレクの体を乗っ取ったのか、?それなら前までと違った行動をしたら違うやつだと思われて捨てられるかもしれない。その可能性は低いがあり得ないとも言えない。それなら覚悟を決めろよ俺!
「あっ、しっかりと飲んだわ。」
「沢山飲めよ。」
飲み終わった後、俺は精神的に疲れていた。
とても疲れた。あれを毎日やるのか。俺は駄目になるかもしれない。そう考えていたらとても眠くなってきた。
(ま、まぶたが落ちる)
「あら、眠ったわ。」
「そうだな、しっかりと眠らせよう。そして、立派な子供に育てよう。」
こうして俺の異世界生活が始まった。
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次の日になった。
さて、これからどうするか。異世界に来たのは分かったが、どう生きていけばいいのか考えなければ。
まず、自分が転生者っていう事は、言わない方が良さそうだな。もし転生者がこの世界で異端なら、ばれたらすぐに殺されるかもしれない、だから俺は転生者という事を隠す必要がある。
それにアレクの体を奪ってしまったのだから、罪を償うという意味でしっかりと生きなければならない。
そして肝心の前世だがあまり覚えていないんだよな。自分の名前も死んだ理由もわからないし。最後の前世の記憶は机に酒が転がっていたことから多分20歳は超えていたはずだ。
そう悩んでいたら尿意が来た。
トイレに行かなくちゃ。そう思い立とうとしたが立てなかった。そうか、赤ん坊だから筋肉が発達していないのか。そこで一考したらまずい事に気がついた。
(あれ、これもしかして俺トイレに行けない?)
周りを見たら籠の中に入れられてここから出れない事に気がついた。
やばい漏れる。我慢しようとしたら我慢があまり出来ない事が分かった。そうか、俺の体は今赤ん坊だから我慢が出来ないのか。筋肉も発達していないからな。
こうなったら仕方がない両親を泣いて呼ぶしかないか。
「う、うぇーん。」
「どうしたのアレクちゃん。」
そう言い母が走ってきた。この体は赤ん坊だからか簡単に泣く事ができた。
「あら、おしっこなのね。しっかりと呼んでくれて偉いわね〜」
そうして母は俺のパンツを取り替える。
「また何かあったら呼ぶのよ。」
そう言い母は部屋を出て行った。とても恥ずかしい思いをしたがこれが毎日続くのか。そう思うと自然と遠い目になった。それにしてもうちの母は天然なのだろうか?赤ん坊が言葉なんて分かる訳ないのに。
そんな事を考えていたら、とても眠くなってきた。やはり赤ん坊の体だとエネルギー消費が激しいなのだろうか?そう考えながら眠りについた。
そして昼過ぎ目が覚めると母が俺を見ていた。
「あら、起こしちゃったかしら、起きたならご飯にしましょう。」
そう言いご飯になった。
ご飯を終えてから周りをよく見て見ると机がありその上に本があった。その本に興味を持った俺が指を差すと母が持って来てくれた。
「あら、この本に興味があるの?」
「あう。」
そう返事をして気づいた。これ返事したら不味くないか、俺が言葉がわかるのがばれてしまうと思ったが平気だった。
「そうなのね、なら私が読んであげましょう。」
どうやら言葉が通じる事は気付かなかったようだ。これからも気をつけなくては。本の内容は王道な冒険譚だった。勇者が悪いドラゴンから姫を助けるみたいなやつだ。
「キャキャ!」
怪しまれないように絵を見て楽しそうにしている子どもになりきる。母が本を読み終わると急に眠気がきた。
「あら、おねむなのね。いいわおやすみアレクちゃん。」
そうして母は俺のおでこにキスをして部屋を出て行き、俺は眠りについた。