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06 部員は美少女二人と俺一人

不定期になってしまっていますが、これから投稿ペースを早めますので、ブクマ、評価などなどよろしくお願いしますm(*_ _)m

「奏と琴葉ちゃんを我が月並み部に入部させて、最高な平凡に至るためだよ」

「へ?」


 呆気に取られたのか気の抜けた声をもらす琴葉。『最高な平凡』という独特な言い回しに混乱しているのだろう。

 俺も月那がした発言の真意は正確には把握し切れていないと思う。

 

 だが、その言葉によって俺の中の何かが支配されてしまった。何が支配されたのかを言葉で表すことは俺にはかなわなかったが、何故支配されたのかは容易に口にすることができた。


 それは俺が心の底から望んでいたことだからだ。


「つまりそれはどういうことですか? そもそも月並み部とはどういうことを中心に活動する部活なんですか?」


 当然の疑問を琴葉は月那にぶつける。


 月並み部がどういう活動をするのか、ふんわりとは聞いたが、理解が追いついていなかったので俺も再度、月那の口から説明を聞きたい。


 この部活の目的を知って、もう気持ちは入部する方向へと傾き始めているが、何をするのかを正確に提示してもらわないと月那の誘いを受け入れる訳にはいかない。

 

「んと、基本的にはこの教室に来る人たちの悩みをして、その呪縛から解き放ってあげるって感じかな」

「ここにくるやつは全員、悩みを抱えているんだよな?」

「うん、そうだよ。それはもちろん君達も例外ではないよ」


 本当にそんなことがあるのだろうか。


 その疑問を口にしてもどうせまたはぐらかされるのだろう。

 あの時は能力があるだのないだの適当なことを言って理由については誤魔化されたが、これだけ何回も断言するのだ。嘘を言っているつもりはないことくらいは嫌でも伝わってくる。


「なんでそんなこと言い切れるんですか?」

「聞いても意味ないぞ。どうせはぐらかされるんだからな」 


 俺は時間の無駄遣いをしないためにもそんなふうに琴葉を諭す。


「ひっどいな〜、もう。それじゃあ、人でなしみたいじゃないか。まあ理由についてはまだ詳しく言うつもりはないけどさ」


 やはり月那は俺たちが一番知りたいことは教えてくれない。


 まあでも今はそれでいい。もう俺は腹を括ったから。

 あとは琴葉についてだが、本人は今の話を聞いてどのようなことを考えているのだろうか。


「昨日の分を含めて大体把握したよ俺は。分かった、月並み部に入部しよう」


 衝撃的だったのだろうか。俺の方を見て目を丸くする月那。


「なんだよ、誘ったのはそっちだろう?」

「いやー、まさかこんなにも早く決めてくれるとは思わなくて」


 月那は長期戦になることを見越していたのだろうか。

 俺は意外かどうかはわからないが、物事は主観だけですぐに即決するタイプだからな。


「それで、琴葉どうするんだ?」

「もちろん、兄さんが入部するなら私も入部します。兄さんあるところに私あり、ですから」


 優柔不断そうに見える琴葉だが、今回は俺に続いて即決してくれたみたいだ。理由が少し不純ではあるが。


 でもまあ、そんなことは別にどうでも良い。

 正直、琴葉がいないと月那と俺だけの空間ができてしまい、かなりグダリそうだからな。


「奏〜、君、愛されてるね〜」

「うっさいわ。ほっとけ」

「そんな照れなくてもいいのに〜」


 こういうところがこいつは本当にめんどくさい。

 でも、不思議と水門の時と同じように心から嫌という感情は湧き出でこない。どちらにしろ、めんどくさくてうざったいのは変わりないけどな。


「よし! それじゃあ二人が正式に月並み部に入ってくれたということで、今週末みんなでどこか出かけようか!」

「は?」


 急に調子外れなことを言い出す月那。


「なんで急にそう言うことになるんだよ」

「だからー、昨日も言ったじゃん! 親交を深めたいからだよ、二人と」


 ああ、確かに昨日そんなこと言っていたな。ていうか、それで俺たちは名前で呼び合っているんだった。


 それより、こいつ俺ら『二人』と親交を深めたいと言ったな。

 それはつまり、琴葉にも悩みがあってそれを聞き出したいということか。さっき俺たちも例外ではないって言われたからな。


 でも、だとしたら琴葉の悩みって一体どんなことなのだろうか。


 月那がここに呼んだ時点で何か悩みを抱えているのだろうと思ってはいたが、改めて考えてみると全く見当もつかない。


 俺たちはいわゆる特殊な家庭環境であるから、多少の悩みは山ほどあるだろう。家事やその他諸々、俺の代わりにこなしてくれているからな。


 それならここに来なければならないほどの悩みって?

 もしかして、昔のことと何か関係があるのだろうか。


 それを琴葉に聞く勇気は、今の俺にはまだなかった。


「分かりました。それならショッピングセンターにでも行きませんか。ある程度のものはなんでも揃っていますし、文房具をちょうど買いに行こうと思ってたので」

「お、いいね。じゃあそれに決まりだね!」


 まあ無難で、お金の消費もそれなりに抑えが効く場所でちょうどいいだろう。


 本当に琴葉がいてくれてよかった。琴葉がいなかったら俺と月那の二人だけで外出することになっていただろうし。


 もし、そうなっていたら月那にどこに連れていかれるかも分からんからな。

 やっぱり部活には冷静沈着なまとめ役ってのが必須だ。


「んー、それじゃあ、日も傾いてきたしそろそろ帰ろうか」


 月那のそんな発言で俺は窓のほうに目を向ける。

 そこでようやく俺は西の空が赤く染まっていることに気がつく。もう、学校内の人気も少なくなっていた。


「ん、そうだな。帰るか琴葉」

「ええ、わかりました。では月那さん、また今度」

「うん、二人ともまた週末にねー!」

「おう、じゃあな」


 そう言って俺たちは教室を出て行こうとすると、月那に慌てて呼び止められる。


「あ、ごめん。二人ともメールアドレスだけ教えてもらっても良いかな。週末の予定も考えないといけないし」

「あーメアドか。部活に入った以上、連絡を取り合えないのも不便だしな。交換しとくか」

「私も全然大丈夫ですよ」

「良かった〜。ありがとう、二人とも」


 そうして俺の携帯電話に初めて琴葉以外での女子のメアドが登録された。

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