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05 美少女たちの絡みは最高の癒し

 帰りのHRの号令と同時に俺はバックをつかみ、いつも授業を受けている教室から急いで飛び出し、琴葉のいるクラスへと向かう。


「よ、琴葉。予定通り行くぞ」

「あ、兄さんですか。了解しました。早速向かいましょう」


 いつも通りなら自分の教室で琴葉が下校の誘いをしてくるまで水門とだべっているが、今日は違う。そう、さっき言った通り予定があるのだ。


 放課後に何か勉強や係の仕事以外の予定があるってリア充になれたみたいで少しばかり気分が浮ついてしまう。


 そして俺たちは目的の場所へと歩き出す。



 コンコンと目の前の扉をノックし、俺は教室の中にいるであろう人物に呼びかける。


「おーい、月那いるか? 入るぞ」


 返事を待たずに少し乱雑に扉を開き、教室の中心に位置している席に座っている月那の元へと向かう。


「やあ、奏。ちゃんときてくれたんだね」

「まあな。ちゃんとお前の望み通り妹を連れてきてやったぞ」


 そう言って俺は琴葉の背中を軽くポンっと押して月那との距離を近づける。


 さて、今日の俺の仕事はここまでだ。

 あとは全て月那次第なのだが、こいつは何を言い出すかわからない部分があると昨日の一日で察したから、やるべきことを終えたところで不安は解消されない。


 そうして二人は自己紹介を始め出す。


「君が奏の妹ちゃんだね。私は朝霧月那。二人と同じ二年生だよ」

「私は椿琴葉です。兄さんの妹をやっています」


 なんだその役職みたいな言い方は?と突っ込みたくなったが今は二人の初顔合わせなので邪魔にならないように介入して突っ込むのはやめておいた。


 自己紹介が終わったかと思うと琴葉につづけて月那が口を開く。


「そんなことより琴葉ちゃん、その黒のロングヘアとっても綺麗だね!」

「そうでしょうか。私の髪なんかより月那さんの銀髪の方がよほど綺麗で素敵ですよ?」

「いやいや、琴葉ちゃんの方が綺麗だって〜。ほら、こんなにもサラサラなんだしさ」

「それは月那さんもでしょう?」


 そんな会話をしながら和気あいあいとした雰囲気でお互いの髪を触り合う二人。

 

 うん、なんというか、眼福だ。

 琴葉も月那に負けず劣らずの顔立ちの良さであるし、色白でスタイルもかなり整っているから兄の俺が言うのもなんだが美少女だと思う。


 実は以前、琴葉を探していたとき偶然、琴葉がクラスメイトと思われる男子から告白されているのを見たことがある。しっかりと断っていたが。

 やはり優等生で美人だとモテるというのが自然の摂理なのだろう。


 そんな美少女二人がお互いの体に触れながら、仲睦まじく戯れあっているのはそれはもう最高の癒しでしかない。


 一つ断っておくが、俺にそういった趣味はない。美少女同士の絡みというのは誰がどこからどう見ても素晴らしいものだ。

 そうだろう? 

 だからニヤついた少し気色の悪い顔で二人を見つめていても誰かに咎められるようなことではない。


「ちょっと聞きたいことがあるんですけど良いですか?」

「もちろん。なにを尋ねてもらっても構わないよ」

「それじゃあ……」


 月那と仲良さそうに会話していた琴葉が急に真剣な表情になり、そう月那に問うと、俺と月那の顔を交互に見つめる。

 俺たちを見つめる眼差しはどう見ても疑いの目だった。俺は何かまたやらかしてしまったのかと焦り始める。


 そして疑いの眼差しを俺たちに向けたまま琴葉は口を開く。


「ここにきた時から疑問だったんですが、兄さん、月那さんに会ったのは昨日が初めてだったんですよね?」

「そうだが……」

「それなのになぜお二人は苗字ではなく、下の名前で呼び合っているんですか?」


 そう言った琴葉の俺を見る目が昨日と同じくらい冷たい。


 これはやらかした。全くもって意識していなかったが、異性を下の名前で呼ぶというのは琴葉の地雷を踏むということになってしまうのか。

 やばいどうやって琴葉を納得させよう。


 そんな風に悩んでいると月那が琴葉に対して説明をし始める。


「あー、それは私がお願いしたことなんだ。だから奏は何も非はないよ」

「なぜそんなお願いをしたんですか?」

「その方が早く仲良くなれるからかな」


 ナイスだ、月那。ありがとう、俺のカバーをしてくれて。


 月那も琴葉の唯ならぬ気配を感じ取ったのだろう。

 だから咄嗟に理由を俺のせいではないことを踏まえて言ってくれたのだと思う。本当に感謝しかない。


 俺が月那の行動に謝意を心の中で表していると琴葉がまた月那に対して新たな疑問を投げかける。


「なんでそんなに兄さんと仲良くなりたいんですか?」


 冷静さを欠いているのか、いつもとは異なり少し子供っぽい口調になっている琴葉。

 それほどまでに俺が他の人と仲良くなるのが嫌なのだろうか。俺は誰と仲良くなったとしても琴葉を一人にさせるつもりはこれっぽっちもないのに。

 そんなことが頭によぎったが俺はそのこと言葉にはしない。これは月那に向けられた質問なのだから。


「私が奏と早く仲良くなりたい理由はね……」


 月那の答えを不安そうに顔を見つめながら待つ琴葉。

 またもや琴葉に不安そうな顔をさせてしまったことに俺は胸を痛めながらも二人を見守る。


「それはね、奏と琴葉ちゃんを我が部、月並み部に入部させて、みんなで最高な平凡に至るためだよ」

「へ?」


 月那は確かにそんなことを口にした。


 琴葉は月那の言葉に呆気に取られたようだったが、俺は違った。


『最高の平凡に至るため』

 

 そう言い張った月那の言葉が、俺の頭の中で何度も何度も繰り返し復唱されていた。

 

 



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