番外編01 家族
予告していた通りの番外編です! このお話は06から07の間くらいの内容となってます。07に完全につながってますしね。本編ではありませんが是非楽しんでいってください!
兄に連れられてきた場所で朝霧月那さんと仲良くなり、月並み部というイマイチ何をしているのか分からない部活動に参加することになった私__椿琴葉は交換した連絡先を用いて月那さんと通話でいわゆる女子トークを繰り広げていた。
『それでどうなの? 琴葉ちゃん、やっぱり可愛いからモテるでしょ!』
「別にそんなことないと思いますよ」
『えー……でもでも、学級委員をやるくらい優等生で成績も良くて運動もできて顔もスタイルもいい。私が男の子だったら絶対に一目惚れしてると思うよ』
「それを言うなら月那さんの方が美人でとても男性からモテそうですけど……どうなんですか?」
そう、月那さんはとてつもなく美人で全てが整っていて綺麗。私が見たことある女性の中で圧倒的だと思う。それは芸能人やアイドルを含めたとしても。
だから学校中の男性からモテ囃されていてもおかしくない。というかそれが優勝劣敗、自然の摂理な気がする。
私としては月那さんはモテていてほしい。あわよくばイケメンな彼氏さんとか作っていてほしい。
なぜかって? そんなの決まってます。
兄さんが月那さんを下の名前で呼んでいるからです。
どのような理由があれど、あの女性が苦手な兄さんが女性のことを親しい呼び方で呼んでいるというのは事実なんです。
これは妹として本当に緊急を要する事です。非常事態です。エマージェンシーです。
『んー……私は特にそういった話はないかな。ごめんね?』
「あ、そうなんですね」
私は少しだけ肩を落とす。
「でも意外ですね。月那さんにそういう話があまりないというのは」
『んーまあ私授業に出ていないし、みんなと関わりないからね。だからじゃないかな』
「え、そうなんですか? それはどういった理由で……?」
『……ごめんね。それは答えられないかな』
「……そうなんですね。こちらこそ配慮に欠けた質問をしてしまってすみません」
二人の間に沈黙が流れるように会話が数秒間ピタっと止まった。
『……でさ! 話戻すようで悪いけど、琴葉ちゃんはああ言ってたけど告白されたことはあるんじゃない?』
「まあ……一応、ありますね」
『おお! ……でも今の琴葉ちゃんを見てる感じからして、振ったんだよね?』
「そうですね。きっちり断させていただきました」
『さっきのお返し__ってわけじゃないけど理由を聞いてみても良いかな?」
「お断りした理由は全く関わりのない相手だったということですかね。それと……」
私が告白をされたのは高校に入学してすぐのことだった。
告白してきたのは体が逞しくて、比較的顔立ちが整っている同じクラスの男子生徒。
初めて告げられた好きの言葉。
緊張で体を震わせながらも真っ直ぐに突き出された手。
その時、普通ならば喜ぶ場面なのかもしれないが私は全くもって嬉しさなど感じなかった。
さっき言った通り相手がほぼほぼ他人だったというのもあるだろう。
けれど一番の要因は私の心がこの人との関係を望んでいないと強く拒んだことだ。
もし仮にこの人と付き合うことになったら__ということを想像しようとすると『この人は違う』と訴えるように頭と胸がすごく痛むのだ。
その理由は私自身もなぜかは判らない。
私に好きな人がいたならば何も考えずともその人がいるからということで納得できるが生憎、私には異性として好きな相手なんて__
うん、あまり深く考えるのはやめよう。考えすぎると同一性が確立できなくなってしまいそう。
『それと……兄さん……かな?』
「……‼︎」
『どうやら当たりみたいだね』
「だって、その人に告白されたことよりも兄さんとお話する方が何倍も嬉しい気持ちになるんですもん……」
『おーおー! いやー琴葉ちゃん可愛い! お兄ちゃん想いの琴葉ちゃん可愛すぎるよ!』
「や、やめてください、月那さん」
『あはは、ごめんごめん。でもやっぱり琴葉ちゃんってお兄ちゃんが大好きなんだね』
「だ、大好きというか……家族で兄妹なんですから当たり前じゃないですか……」
月那さんのせいで顔が真っ赤になってしまう。
『いいねー。兄妹……か。家族……家族ね。……まあそこが君の問題点なんだけどね』
「え? 何か言いましたか? 声が小さくてあまり聞き取れなかったんですが……」
『あー、いや、うん。別になんでもないよ! 気にしないで!』
「は、はあ……」
月那さんは何か焦った様子で返事をする。
何か大事な秘密でも声に出してしまったんでしょうか。
月那さんは謎が多い人ですからね。私たちに言えない秘密の一つや二つ……いや、千個くらいあっても不思議じゃないですね。
そんなことを考えていると自室の扉の向こうから声をかけられた。
「琴葉、ちょっといいか?」
兄さんの声だ。
『お、奏がきたんだね。それなら私はここら辺でいなくなろうかな。兄妹水入らずだろうしね』
「わかりました。今日は本当に色々とありがとうございました月那さん」
『こちらこそありがとね。それじゃあまた』
「ええ、また」
そうして小一時間続いていた通話が終わる。
通話を終えた後、自分の顔を両手で叩いて気持ちを切り替えた私は扉の目の前にいるであろう兄さんにあたかもぼーっと何もしていなかったかのように返事をしたのだった。
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