11 やってきた週末
更新が遅くなってしまい申し訳ありません!! 言い訳にはなりますが定期試験があったもので……。でも、これからは夏季休暇に入ったりと書く時間も増えると思いますので、どうか読んでいただけたら幸いです……!
水門も加わることとなった月並み部は週末みんなでショッピングセンターに遊びに行くことになっていた。
琴葉に水門が入部したことを伝えると『まあそうなると思ってました』とあっさり流されてしまった。
さすが琴葉。環境適応能力が高い。
そして集合時間などは結局、月那が決めたものが俺たち3人へとメールで一斉に送信された。
そのメールの内容は簡潔に『土曜日、朝十時に集合』とだけが書かれていた。
俺宛のメールがそうであっただけだから他の人__特に琴葉に送られた文面はきっと全然違うんだろうな。
そんな些細なこと別に気にしているわけではないが、なんとなくそう思った。
そして土曜日の朝、起床した俺と琴葉は余裕を持って目的地に向かえるように準備を早めに終わらせ、8時半ごろに家を出た。
「ショッピンングセンターに着いたけど……結局、どこに行けば良いんだ? この施設かなり広いぞ」
「え、兄さん、メールちゃんと見たんですか? 集合場所はバス停の近くのあの緑が生い茂っている広場って書いてましたよ」
「あれ、そうだったっけ」
俺は慌てて携帯電話を確認する。しかし何度送られてきた月那からのメールを見返しても、集合場所についての記載はない。
「いや、そんなこと書かれてないぞ。俺に来たメールには」
「そうなんですか? 私のはこんな感じでしたけど」
俺は琴葉が手に掲げているスマホの画面を覗き込む。
そこには俺に来たメールとほとんど差異はない文章が連ねられていたが、確実に異なる点が一つあった。
琴葉に来ていたメールにはこう書かれていたのだ。『土曜日、朝十時にバス停前の広場に集合』と。
「あれ、琴葉のにはちゃんと書かれているな。なんでだ?」
「私たちは兄妹で一つ屋根の下で共に生活していますから、片方送れば十分だと思ったんじゃないですか」
「でも、それなら俺にわざわざあんなメールを送る必要はないだろう」
「んん、確かにそうですね」
ここまでくると本当に書かれていなかったわけがわからん。月那は一体何がしたかったんだろうか。
「あれ、兄さん、そのメールまだ続いていませんか?」
「え?」
頭にクエスチョンマークを浮かべながらも自分のスマホを確認すると、月那から送られてきたメールの画面は下の方にスクロールが可能となっていた。
そして二、三秒スクロールしたところで画面は停止した。そこに映し出された文章にはただ一言、『場所はバス停前の広場』と書かれていた。
「なんだこれ。なんか特別な意図でもあんのかな」
「うーん、いくら考えても分かりそうにないですねそれは。月那さんがきた時に直接聞いてみましょう」
「そうだな」
俺たちは月那に対して疑問を抱きつつも指定場所の広場へと足を進めた。
_________________
広場についた俺たちは辺り一面を見渡していた。
このショッピングモールに併設された広場はかなり景観が良いものとなっている。
自然豊かで、手入れされた低木が綺麗に整列されており、広場を囲むように花壇が設置され、そこには色とりどりの花たちが咲き誇っている。
それに加えて、広場の中心には大きめの噴水などもあり、そこにいる人々からこの広場が近隣住民の憩いの場であることが窺える。
そんな壮麗な場所で見慣れた格好をしているやつが一人。
コンタクトをつけるくらい目の悪い俺でも遠目でわかる人物。
そう、それは月那__ではなく、水門である。
「おーい! 二人ともこっちだー!」
こちらに気づいたのか、水門は大きく手を振りながら俺たちに向かって発声する。
水門には羞恥心など存在しないらしい。この時間帯は朝早すぎない昼前でちょうどいい時間なので広場の利用者もたくさんいる。
その中でこれだけ大声を出している水門には呆れるどころかもはや、尊敬の念を抱くレベルだ。
少し怪訝な顔になりながらも俺たちは水戸のいる噴水のほうに向かう。
「お前、ちょっとは周りを考えてから行動しろよ」
「は? 何がだ?」
俺は流石にさっきの行動は非常識だと水門に注意するものの、水門は何にも理解していない様子でこちらのことを見ている。
さすがは常軌を逸した天才的な究極のバカだな。お前の生まれた世界では太陽は西からのぼってんのかよ、とつっこみたくなる。
「そんなことより今はお前だけか? 月那のやつは?」
「んー俺はまだ見てないな。まだ来てないんじゃね?」
なんで発案者が一番遅いんだよとは思ったが、まだ時間はあるのでそのことについて言及するのは野暮だと思い、口には出さなかった。余計なことを言わない俺、えらい。
謎に自己肯定感を上げたところでなんとなく思っていたことを水門に問いかける。
「お前、意外とくるの早いんだな。てっきり、遅刻してくると思ってたわ」
「まあ、俺は自他ともに認めるスーパー優等生君だからな!」
「そうだな、はいはい」
「相変わらずの平常運転だなー。もっと何か言ってくれよー」
「めんどくさい、うざい、きもい、くさい」
「もっとってそういうことじゃねえよ! てか、めんどくさいとかはわかるけど、くさいは本当にただの悪口じゃねえか!」
水戸とは会話はやはり疲れる。心底、面倒臭い。俺の言うことを理解しているのなら、さっさと改善してほしいものだ。
「そう言ってても結局付き合ってくれるよな奏は」
少しの沈黙のあと、水戸がそんなことをほざいた。
「ねえねえ、琴葉ちゃん。君の兄さんって結構ツンデレ?」
「そうです。兄さんはツンデレで結構可愛いんです」
なぜか自信ありげに胸高らかに兄をツンデレと称す琴葉。
うん。この年頃になって妹に可愛いと言われるのはなんだか落ち着かない。
ていうか、男として兄としてもちょっと恥ずかしい思いになる。しかも、ツンデレて。
普通、男に使う言葉じゃないぞそれ。男がツンデレとかただ痛いだけで需要などないだろう。
そして俺はため息をついた。
その瞬間、後ろから何かが覆いかぶさってきた。
「わっ! みんなおはよう」
急に後ろから飛びかかってきたのは、まだ唯一約束の場所に姿を見せていない人物である月那だった。
「なんだよ、後ろから飛び掛かってくんな鬱陶しい」
「あれ、あんまり驚かないんだね。なんかがっかりだ」
しょうもないことを自分から仕掛けておいて後悔するなんてこれこそ自業自得というものだろう。
というか驚かされたことより、今現在密着している体の方に意識が強制的に向けられることの方がよほど問題なのだが。
体全体の柔らかさや、月那の体温が直に伝わってきて無性に落ち着かない。
特に月那の体の多分一番柔らかいと思われる部分が直に押しつけられているのがヤバい。本能的にヤバい。
「あの、月那さん。いつまで兄さんにくっついているんですか」
「ああ、そうだね。ごめんね、奏」
そう言って月那は俺の体から離れる。
「いや、まあ別に良いんだが……」
「ん? 何が別に良いんですか兄さん」
ちょっとさっきに比べて琴葉の表情が黒みを帯びてきている気がする。なんか分からんけど怖い。
「ねえ、月那ちゃん。あの二人ってなんか兄妹にしてはあれだよね」
「うん。私もあれだなと思ってた。あと、月那ちゃんって呼ぶのやめってもらってもいいかな」
「え、まだそこ問題だったんだ」
「お前ら何こそこそ話してるんだ?」
「いや、別に?」
「そんな大したことじゃないから、気にしなくていいよ」
内緒話でもするかのように話している二人の間に俺は割って入る。しかし、二人の両方に適当にあしらわれてしまった。
あんな感じで言われると余計に話の内容について気になるんだが……まあいいか。
「じゃあ、みんな揃ったことだし早く遊びに行こうぜ!」
「そうだね! じゃあどこに行こうか?」
「やっぱ、最初は体動かす遊びでしょ! よし、ボーリング行こうぜ!」
「お! いいねいいね。行こう行こう!」
「そうと決まれば出発だー!」
「おー!」
「お、おい、ちょっと待て、俺たちの意見は__」
その場の勢いで目的を決めた挙句、目的地へと向かい出す水門と月那。
どうやら、俺たちにはじめから発言権はなかったようだ。てかあの二人、出会って間もないはずなのに波長合いすぎだろ。テンション高い系の人たちのことは本当によく分からん。
「兄さん、あきらめて私たちも二人の後をついていきましょう」
「ああ、そうだな。ほんとにあいつらってやつは……」
「兄さんの隣を位置取らせてくれた二人には感謝ですね……」
「ん? なんか言ったか? 琴葉」
「いえ、別に何も」
なんか今日は一段とあしらわれる回数が多い気がする。厄日なのだろうか。それだったら早く帰りたいもんだな。
一緒に魂も漏れてしまいそうなほど大きなため息をついてから、俺は琴葉と一緒にあいつらの跡を辿っていった。
あ、そういえばメールについて月那に聞くのを忘れていた。もういいか、そんなどうでも良いことは。それより目の前のことだけ考えよう。
そして、俺はまたもや大きくため息を吐いた。
更新頻度上げろや、という人は良ければブクマと評価の方をよろしくお願いします! かなり創作のモチベに繋がるので……ポチッとして欲しいです。




