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10 騒々しい新入部員

遅れてすみません.....! 平日は忙しいので投稿ペースが下がってしまいますが、どうかこれからもよろしくお願いしますm(*_ _)m

「起立、気をつけ、礼。ありがとうございました」

「「ありがとうございました」」

「よし、気をつけて帰れよお前ら」


 少し雑に挨拶を済ませて教室を出ていく皇先生。

 

 やっと今日一日が終わった。とは言ってもこれからすぐにとある場所に向かわないといけないのだが。


「よし、奏。お前らの部室に案内してくれ」

「はいはい、わかったよ。ほんとめんどくさいし、嫌だわ」

「なんでだよー」

「お前を連れてったらどうせ、ロクなことにならないの目に見えてるからな」

「俺をキングボ○ビー的扱いをするなよ!」


 大声で否定する水門。


 お前をあの教室に連れていって月那と会ったら、確実にめんどくさい未来が待っているに決まっている。

 俺の人生の中でダントツ月那と水門が絡みがダルい人間ツートップだからな。サンプル数が少なすぎる点に関しては目を瞑っていただきたい。


 もうこうなった以上、こいつに付き合うしかないよな。


 俺は重い腰をあげてバックを肩に回し、水門に声をかける。


「ほら、行くならさっさと行くぞ」

「お、やっとその気になったか! そんじゃ、よろしくなっ!」

 

 そう言って水門は俺の肩を後ろから少し強めに叩いて、ニカっと笑う。

 はあ……こいつは本当に人を憂鬱にさせるという点に関しては天才的だな、マジで。


 俺はため息をつきながら水門を連れて、あの教室へと足を進める。



__________________



「へー。ここが月並み部の部室か。ただの教室だな」

「そりゃそうだわ」


 こいつは月並み部の教室に何を期待していたのだろうか。

 月並み部は変な名前の部活動だからって何か特別なことがあるわけではない。物理的にはな。


 さっきは軽いノリで言ったがこいつをここに連れてくるのは本当に嫌だった。

 どうせロクなことにならないからと言うのはもちろんある。

 

 だが、そんなこと気にならないくらいある一つの理由が俺の頭を支配していた。


 こいつは俺に誘われてではなく、自分からここに来たいと言った。本人はただ俺の部活に興味を示しただけなのかもしれないが、もうさすがに理解が追いついてきた。


 けど、判断を下すにはまだ早い。

 あいつが、月那が言ったことの証拠は俺という存在以外まだ確認仕切れていないからな。


 それに普段のこいつからそんな素振りを見たことはないし、何より琴葉と違って月那から直々に呼ばれたわけではない。

 だから、この場ですぐに決めつけるわけにはいかないよな。


 心の中で一つ、踏ん切りをつけて俺は教室の扉を開く。



「やあ、二人とも。よく来たね」


 毎度のように教室の真ん中で席に座ってこちらに声をかける月那。

 あの出迎え方に何の意味があるのだろうか。まあどうせ、ただ格好つけたいだけなんだろうが。


「お! 月那ちゃんいるじゃん。初めましてー同じクラスの水門ですー」

「あ、どうも。朝霧月那です。その月那ちゃんって呼び方嫌だからやめてもらっても良いかな」

「え、奏は月那って呼んでるのに?」

「それはそれ。これはこれです」

「そんな……じゃあ、俺も月那って呼んでいい?」

「それもちょっと嫌かな」

「なんでなんだーー!」


 なぜか水門を冷たくあしらう月那。

 やはり水門の天才的なあの面倒臭さがもう見た目から滲み出ているんだな。しかもあの月那をあそこまで言わせるほどとは、本当に素晴らしいな。うん、スバラシイ。


「じゃあもう、呼び方は後でいいや。早速だけど、この部活って何? 月並み部って?」


 切り替えの速さは著しいなほんと。まあ、そこ以外評価できるところはほとんどない気がするけどな。


「んーとまずね、ここは悩みを抱えている人たちが集まる場所なんだ」


 その言葉に続き、以前俺と琴葉に説明したことと同一の内容を水門に語る月那。

 その間、水門は黙って話を聞きながらも途中から目を輝かせていた。


 あの顔は絶対何か良からぬことを考えている顔だな。

 こうなると予期していたとしても実際にその状況下に置かれると段違いのダルさを感じる。


「ふむふむ。大体、理解した。んー、細かいことはよくわかんなかったけど面白そうなことをしてるってことだな!」


 細かいことどころかほとんど何にも理解していないの聴こえるのは俺の錯覚なのだろうか。

 せめて同級生の話を聞くときくらい記憶の水槽に蓋をしといて欲しいものだ。


 見るからにワクワクしている水門は超絶楽しそうに言った。


「よし決めた、俺も月並み部に入部する‼︎」

「は?」


 水門の突拍子もない発言に俺は頭の上にクエスチョンマークが浮かんできた。

 ほんとこいつはノリだけで生きているな。そんなんでよくこの高校に入ってこれたもんだ。


 俺たちが通っているこの県立園原(そのはら)高校は県内にある学校の中じゃ私立を除くと県下一の学力を誇る高校だ。偏差値も軽く70は超えるし、毎年難関大合格者も多数輩出している。


 だからいつも水門を見ていると思う。こいつはどうやって入学したのだろうかと

 。見下しているわけではないが、普段の様子を見ている限り思い当たる節が全くないからな。


 まあ、そんなことはどうでもいいか。


「そしたら水門くんも週末一緒に遊びに行こうか」

「お! マジで! 行く行く、絶対に行く!」


 月那はなぜ水門の入部をあっさり認めているのだろうか。

 そのことが気になり、俺は月那に耳打ちをする。


「水門の入部、そんな簡単に認めても良いのか? 言っとくがかなりめんどくさいぞこいつは」

「それはちょっと嫌だけど、仕方ないじゃないか。水門くんはこの教室に自分から来たんだから。部活に誘う方が手っ取り早いでしょ」


 そうだった失念していた。水門は自分からこの場所に来たいと言ったんだった。


 水門は月那の説明を聞いて自分がその対象者であるかどうかについては認識しているのだろうか。

 いや、認識できているはずないか、水門のことだし。


「何二人でコソコソしてんだよ?」

「いや、なんでもない」


 危ない、本人に聞かれるところだった。


「そんじゃあ、週末みんなで遊ぶ前に俺ら男子二人で今から行くか!」

「は? なんでそうなるんだよ」


 こいつの発言には本当に脈絡と言うものが存在しない。


 なんで今から水門と二人で行かないといけないんだよ。週末行くって話をしたばかりだろうが。


「週末の予行練習だよ! 女子と関わりがなかったお前には必須だろ!」

「や、やめろ、引っ張るな」

「行くって決めたから行くんだよ! じゃあ月那ちゃん、また遊ぶ時に!」

「あ、うん。あと、その呼び方はさっきやめてって……」

「た、助けてくれ! 月那! 俺は行きたくないんだ!」

「あー、まあ、頑張って、奏。ファイト」


 そして俺は暴走した機関車のような水門にその後、ずっと連れ回された。

 生気をなくして家に帰つく頃にはもうすでに21時を回っていた。


 ついでに琴葉に死ぬほど説教をくらった。もう色々と勘弁してほしい……。

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