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すべてが見えなくなってしまいそうな君へ  作者: 常坂
プロローグ
1/21

崩れた平凡

 メガネを掛けている人やコンタクトレンズを着用している人の中でこう考えたことがある人はいないだろうか。



(このまま視力が下がり続けたら、いつかは何もみえなくなってしまうのではないか?)



 視力の低下は本当に怖い。


 視力が低下すると今まで鮮明にうつっていたであろう世界の輪郭がぼやけていき、段々と感覚すらも不安定になって、自分が今ここに在ること自体が不合理だと思えてくる。


 そういった状況から脱するためにメガネやコンタクトレンズといった矯正器具が存在するのだと思う。


 この考え方が全くもって分からない、間違っていると思う人もいるだろう。だが、それでいい。むしろ、その方が何倍もいい。視力が低下した状況でも、以前と変わらぬ状態で在り続けていることができているということなのだから。


 俺には、それができなかった。


 小学五年生のある日、担任の先生が黒板に書いている文字が読めなくなった。それは突然だった。いや、もっと前からだったのかもしれない。


 そして俺はその日のうちに人生で初めて眼科を受診した。そこで視力検査を行い、翌日メガネを母親に買ってもらった。

  

 驚きだった。メガネを掛けた途端、一瞬にして世界が変貌を遂げた。


 黒板に書かれた文字も遠くの建造物も廊下にある小さなしみでさえも見えるようになった。

 このときに俺は、安心感が自分を包み込めてくれたような気がした。


 それから俺は中学校へ進学し、メガネからコンタクトレンズへとパートナーを変えてみることにした。少しばかり違和感はあったが、何も問題はなかった。


 いつも通りの生活。朝六時に起床して、学校へ登校し、面白くもないなんともない授業を受け、気まぐれで寄り道しつつ帰宅し、ご飯や風呂、課題を済ませて寝る。

 おかしなことなんて一つもない、ありふれた日々。



 __そう、おかしなことなんて何もなかったはずなんだ。



 __平凡でつまらない最高の日々を送っていたはずなんだ。





 それなのに、中学二年生のある日、俺は突然として一部の人間の姿が視界にうつらなくなってしまった。



 



 

初投稿です。これから連載をつづけていけたらなと思っています。至らない点は多々あると思いますが、暖かい目で見ていただけると幸いです笑

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