第6話 一驚 surprise
第6話です。
よろしくお願いします!
ルミアから案内されてBRKRs特殊作戦部隊の施設を巡る。
意外にも外は白のコンクリーなのに、中は自然感溢れる木製の床や壁でできていた。
「ここが食堂だ」
とルミアがドアを開ける。
中は軍の施設にしては小さく感じられたが、それでも下手なレストランぐらいの大きさとテーブルがあった。
「ここにはすべての施設を見て回ったら夕食を食べに戻ってくるからな。場所は覚えとけよ。作戦以外では基本的にここで飯を食べるから」
食堂奥の厨房からは白い湯気が上がり本日の夕食を作っているようだった。驚いた。ここからでも美味しい匂いが届き俺の食欲を増幅させる。あっダメだ。ここは長くいたら(食欲で)気がおかしくなりそうだ。早くルミアに他のところを案内してもらって急いでここに戻ってこよう。
「早く、次へ行こう」
「お、おう。今のお前目が光っててなんか獣みたいだぞ?」
ルミアが俺の顔を気味が悪そうに伺っていた。
☆ ☆ ☆ ☆
施設巡りもラストになり俺たちの宿舎兼部隊の部屋へと向かう。これまでに飛行場や浴場なども巡ってきた。どれもしっかりしていて実際に使うのが楽しみだが如何せん人が少ない気がした。
階段を上がり二階へと向かう。
「そういえばここに来てから他の軍人をほとんど見てない気がするんだが?」
ふと疑問に思ったことを尋ねる。
「今、他の部隊は全て出払っていてな。私たちの部隊の人間しかいないんだ」
(なるほどだから全然いないように見えたのか)
階段を上り部屋が並ぶ廊下を歩く。
しばらく歩いているとルミアが立ち止まり一つのドアの前に立った。
「ここだ。ここが私たちの部隊の部屋だ」
ドアの横に木でできた立て掛けがありそこには。
「BRKRsベータ隊」と書かれていた。
なるほど俺はBRKRs特殊作戦部隊のベータ隊所属ということか。
頭で何度か復唱して自分の所属部隊の名前を覚える。
それと同時にルミアがドアを開ける。
ルミアと俺と、後はどんなメンバーがいるんだろうか。
できれば接しやすい人たちが良いな。もし、ほんとにゴツゴツのザ・軍人の中の軍人みたいな厳しい人たちばっかりだったら......
期待と不安を胸に抱えながら開かれたドアの中に入る。
中には......
窓から夕暮れの日が差し込み木製の床がオレンジ色になり、部屋の奥の二つの片隅にはそれぞれベッドが一つ置いてありそのベッドの横には机が一つずつ配置されていた。
ドアから見て左側の隅のベッドと机にはおそらくルミアのものであろう小物が置いてありベッドの上の布団に少しシワが残っていた。
反対の右側にはほぼ新品同様の何も置かれていないベッドと机がありそっちが必然と俺の方なんだろうと分かる。
そこまで確認すると俺は部屋の中へと二歩三歩進みルミアよりも先頭に立ちもう一度部屋を今度は隅々まで観察する。
おかしい。二人分のベッドと机しかない。
俺が思っていた大勢の人たちのベッドが......無い
「な、なぁ。まさか俺たちベータ隊って......」
俺は不穏な顔をしながら振り返る。
「察しが良いな。私とお前の二人だけの部隊だ」
そう言ってルミアはニコッと笑みを浮かべる。
おいおいおい。二人だけの部隊って......これから生き残れるのか俺?
◇ ◇ ◇ ◇
俺たちはそれぞれのベッドに座り込み、少し遠いが向かい合って話をする。夕焼けでまだ明るいばずなのに俺は少し暗い雰囲気を放っている。
「率直に聞くが、二人で大丈夫なのか? ベテラン一人はいるが残りの一人はなんの経験もないペーペーなんだぞ?」
俺は自分のことを指差して話す。
「それについては問題ないぞ? そもそもこのBRKRs特殊作戦部隊、やっぱり長いな、壊し屋でいいか?」
「おう」
「それで、この壊し屋には三つ部隊があってな、アルファ隊、チャーリー隊、そして私たちのベータ隊だ。それぞれ今はアルファが三人、チャーリーが五人で構成されていてなまぁ任務が任務だから少ない方がやりやすいんだ」
任務...確か敵の基地に潜入、強襲をして敵の兵器とかを壊すんだったよな。
「確かに、少ない方が良いだろう。けれどこれはさすがに少なすぎないか?」
そういくら少数の方がいいとはいえ少なすぎるのだ。
「そういうのも分かる。が、上は前線兵士の数が足りないと嘆いていてな、現状、徴兵されたやつらのほぼ全てが前線にまわされて後は補給とかにまわされている。それだけ敵の攻撃も強くなっているということだな」
「だから、私みたいな壊し屋の各隊長はそれぞれで人員の補給をしないといけないんだ。でも町には若者なんてほとんど徴兵で残ってない。だからお前みたいな犯罪者とかにも声をかけて集めないといけないんだ」
とルミアは俺の方をビシッと指を差してきた。
なんてことだ、連合国の中でも一番大きいこの国でもついに国家総動員みたいな風潮になりつつあるのか。ほんとにこんな戦争いつまで続くんだよ......
でもようやく理解ができた。徴兵によって少なくなってしまった国民。そこにルミアのような探し方をしているならなかなか集まらないのも当然だろう。
「それに、こんな人数でもしっかりと戦果は出せている。現にこの前も三人のアルファ隊が東側の大国の軍の基地を一つ潰してきて今は帰還の途中だし、チャーリー隊も新たな指令を受けて潜入しに行っているところだ」
この施設に来てから他の軍人を見てなかったのはそのせいだったのか。
「後は気になることはあるか? なければ改めてこれからよろしくな」
ルミアがベッドから立ち上がり俺に手を差し出して尋ねてくる。夕焼けによってルミアのからだがオレンジ色に染まる。
話を聞いていてかなり驚いた。俺たちの部隊がルミアと俺の二人のみ。これからが不安でないと言えば正直嘘になる。それでも俺はあそこから出させてもらった。乗りかかるどころかもう乗ってしまった船だ。
「あぁ、大丈夫だ。これからよろしくな」
俺も立ち上がり差し出されたその手を握る。握った手と手が夕焼けに染められて輝いて見えた。
◇ ◇ ◇ ◇
その後、俺たちは夕食を食べるために食堂へと向かっていた。
食堂に近づくにつれていい匂いが俺の鼻へと侵入してくる。こんないい匂いを嗅ぐのはいつぶりだろうか。そもそもこんな匂いを嗅ぐのは生まれて初めてかもしれない。
腹が減ってるとはいえ匂いだけでここまでになるとは......
(くっそ、ルミアを置いてでも今すぐにでも食べたい!)
こんな子供みたいなことを考えるとは。
ルミアと並んで最後の曲がり角を曲がる。
さぁ食堂へと着いた!
ドアの前の看板には「今日の献立 ご飯 味噌汁 焼き魚 煮物」と書かれていた。すごい! まともだ! いかに今までがひどかったのか分かる。
ドアを開けて入っていく。
どうやらプレートを持っていき作った人からレーンで直接受けとっていくらしい。
プレートを両手で持ち料理を受け取りにレーンに沿ってルミアの後を追う。
「いつもありがとうな。」とルミアが料理を受け取ったときに軽く感謝をしていた。
俺もこれからここで生活するわけだから元犯罪者とはいえ第一印象は良くしないとな。
意気込んだ矢先、「はい、どうぞ。」とごはんを受け取ったときに聞き覚えのある声がした。
ふと、顔を見上げると。
長い青い髪をまとめて白い割烹着姿をしたメルが次に渡す味噌汁を持って首をかしげていた。
「え、メ...ル...?」
「ん? そうだぞ、ここでの食事は全てメルが作ってるんだ」
「!? そうなの!?」
ほんとに今日は驚くことばっかりだ。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
良ければ感想、評価、ブックマーク等よろしくお願いします!