第4話 徴兵 conscription
第4話です。
この前書きとか何書けばいいか分からない~!
どうぞお進みください(冷静)
「遅れてスマンな」
ルミアが笑顔を見せる。
「い、いつから居たんだ!?」
俺は立ち上がり目を点にさせながら尋ねる。
「ん? ちょっと前に来たところだよ。ここから覗いたらお前が耳をふさいでうずくまってるからな、ちょっと観察させてもらっ――」
「だったら早く声をかけてくれよ!」
恥ずかしさのあまり声をあげる。
「もちろんかけたさ、でもお前はずっと顔を上に上げようとしないしな。」
「......」
「お前......もしかして私が来ないと思って絶望してたのか?」
ルミアがニヤリと笑みを浮かべる。
はい、そうだよ......図星だよ!
◇ ◇ ◇ ◇
ルミアが来てからは早かった。
ルミアが看守を呼びに行き今度は看守と共に俺の元へとやって来た。
看守が扉についている十個近いの鍵を解錠させていく。
二度と開くことのないと思っていた重い扉が開かれる。
その扉の奥では
フフンとこちらを見つめるルミアと嫌そうな顔をした看守が待っていた。
「それじゃあ行くぞ」
ルミアが前、俺の後ろに看守がピッタリと付く形で長い長い廊下を進む。
周りの牢屋の中にはこちらを睨み付ける者、変なことをずっと呟いている者、そもそもこちらに興味を示そうとしない者などがおり、来たときと同じような阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
俺はそいつらを見てみぬふりをしてただルミアの後をついていった。
刑務所の地下を出ると所々にいる看守などの刑務所の人員から相変わらず嫌な目線を送られるが気にしない。しばらくすると小さい部屋へと案内される。おそらくここで正式に俺の身柄が刑務所からルミアのもとへと移されるのだろう。そしてこれで俺はルミアの......おっと、まだ気が早かったかな!
部屋の中に入る。中には長机が一つ、そして長机の長い辺の方に沿うかたちで椅子が何個か並べられていた。その他には何も置かれていない、殺風景な部屋だ。
ルミアが先に椅子に座り、その後ルミアの反対側に俺と看守が座った。
座ってまもなくルミアがさっそく口を開く。
「看守、さっそくだがこれらの書類にサインをお願いする。昨日のうちにここの所長と副所長のサインはもらっているからあとは証人として看守のサインが欲しいんだ」
そういうとルミアは看守に二枚の書類を差し出した。
「分かりました。」と看守はしぶしぶペンを取り出し二枚の書類にサインを書き始めた
俺は首を伸ばし書類にどんなことが書いているのかを確かめる
一枚目は......「釈放書」
まぁそうだろうな、俺はまだ犯罪者の身なわけだし、この書類は必要だ。
ルミアの言っていた通りすでにここの刑務所の所長と副所長のサインはもらっており、すでに書類には書かれていた。あとはこの刑務所内の誰か一人の署名が必要らしい。
「宝田 輝の釈放を認め、ここに名前がある三人を責任者とする」 大雑把に言えばこんなことが書いてある。
いやはや所長たちも書くのは嫌だっただろうね~。ようやく世間を騒がせ続けてた盗人を捕まえることができたのに、軍人の婚約者に選ばれたからって無条件で自分たちの刑務所から出すことになるなんてなぁ。
看守が釈放書に署名しているのを横目に内心ドキドキしながらもう一枚の書類の方へと視線を向ける。
そこには「婚姻届」と書かれた書類。
......ではなく。
「徴兵令」と書かれた書類があった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あまりのことに驚き俺は声を荒げて立ち上がる。
「なんだ? お前うるさいぞ。早く座れ」
ルミアがこちらを見て話す。いきなりのことにびっくりしたのか看守も署名している手を止めて俺のことを見上げる。
あ、看守さん意外と達筆なんですねぇ。
って今はちがう!
「ちょ、ちょちょ徴兵令ってなんだよ!?」
動揺のあまり声が裏返る。
「? 国民を軍隊に加入させるために書く書類だが? お前、それも知らんのか?」
「いや、知ってるよ......。じゃなくて! 俺、軍隊に行くのか!?」
「あぁ、話してなかったか? ここの国では別に軍が刑務所から兵を募っても構わないんだよ。それだけ今の軍には人手が足りないんだ。だからお前はこれから私の部隊に配属してもらい戦場を駆け回ってもらう」
「聞いてねぇよ!? 初耳だよ! てか、婚姻届じゃねぇのかよ」
最後の方はボソッと呟くが。
「婚姻届? 私は独身だがまだそんなこと考えてもないぞ」
ルミアにはしっかり聞こえてしまっていた。
「......」
おいおい、嘘だろ? こんなことってあるのかよ。
ルミアは最初から俺を軍へと配属させるために来てたのかよ。
一人で舞い上がってた俺がバカみてぇだ。
「それじゃあ昨日のメルは一体なにを......」
そう、今日は居ないが昨日、俺はメルに手を弄られたり何がしたいのか顔をじっくりと見られていた。
その後には俺のことを「絶対、大丈夫」とも話していた。
あの行動と言動はいったいなにをして......
「あぁ、メルか。あいつは私とは古い仲でな。なんでも人の手とか顔とか見ればおおよそだがそいつがどれだけ生に執着しているか見れるらしい。いろんなオーラとかも見れるとも言ってたな。あいつ曰く生に執着していればするほどそいつは長生きしやすいんだと」
ルミアが淡々と説明してくれる。
「じゃあ昨日の"絶対大丈夫"ってのは......」
「あぁ、それだけお前がそれだけ生に執着しているように見えたんだろう。期待してるぞ」
ルミアが少し口元を緩ませて話した。
「てか、軍人ってそうやって選ぶのか!? 他にも能力とかそういうのを重視してー」
そこまで言いかけたところでルミアに遮られる。
「確かに私とは違ってそっちを重視する者が軍人の中にはたくさんいる。だが、いくら腕が良くても死ぬやつはあっけなく死んでいく。だったら運のような不確定要素にも懸けるしかない」
「だから、そんな決め方をしてるのか?」
「あぁ、そうだ」
俺は愕然として椅子にもたれかかる。
(おいおい、ルミアは俺を軍に連れて行きたかっただけじゃねぇか。それなのに俺はー)
「お前、もしかして、」
ルミアがニヤリと笑う。
やめろ! それ以上言うな!
「私が婚約者を探してるとでも思ったのか? アハハハッ!!」
言った~! 言いやがった~!!
言い切ったルミアが声を大にしてひたすら笑う。
再び俺の図星をきれいに突いてくるルミア。
俺はもう顔を上げてはいられなかった。
はずかしさのあまり顔を下げ続ける俺、ひたすら笑い続けるルミア。
誰か、誰かこの状況を終わらせてくれ~!
「ゴホンッ」
顔を上げ声の主の方を見る。
「どうぞ、書類書き終わりました」
看守がルミアに書類を返す。
ルミアは笑うのを止め書類を受け取り確認する。
(か、看守~!!)
看守は頑張れよと訴えるような目で俺を見てきた。
俺は、初めてここの刑務所の看守に心の底から感謝した。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
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