第2話 邂逅 chance meeting
前書きとか何書けばいいか分からん!
それでは2話です。どうぞお進みください。
投獄されてからおそらく一週間がたった。
おそらくというのはここには太陽の光すらも射し込まない地下でさらにその中の窓もない部屋にいるからである。
ここの刑務所の飯にも慣れたくないが、ある程度慣れてきてしまった。
(はぁ、まさか捕まる前よりも比較的生活できてるのが残念だ)
この前も思ったがここでは捕まることを考えなくて良い...もう捕まっているからな、何かに怯えながら寝なくても良いってことだ。
飯もしっかり一日二食は出てるみたいだしな。
相変わらずメニューは変わらんが......
まぁなんにせよこんな生活が良いと思ってしまう自分がいることが怖い。
さらに、こんな閉鎖された空間にいるというのも精神的にもつらい。
発狂してしまうのも時間の問題だろうな。
両手を頭に回して簡易的な枕をつくり寝転がる。
「外に出てえなぁ」
叶うはずのないことをボソっと呟く。
外は今、どうなっているんだろうか?
父と母を間接的にも奪ったあの醜い戦争はいつ終わりをむかえるのだろうか?
分かるはずもない、もう見ることの出来ない外の景色をただただ思いはせることしか俺にはできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
聞きなれない足音が聞こえた。
思わず目を透視もできないのに扉の方へ向ける。
逃亡生活のおかげか聴覚だけには自信があった。
(看守以外に誰かいるのか?)
看守の履いている靴は決まりがあり靴の中に何か入っているようなコツンコツンという足音なのだが、今はその足音と同じようなリズムで何も入っていない革の靴のザッザッザッという足音がする。
三人だ、コツンコツンという看守の足音の他にザッザッザッという足音が二人分聞こえる。
(なんだ? 新入りか? 看守さまは大忙しだねぇ)
外の様子が見れない俺にはどんな奴かは分からない。
しばらくすると声が聞こえてきた。
「――う......ち―う......―がう」
なんだ? 女性か? 女の声が聞こえた。
「なんだ~、今回は収穫はなしか~?」
もう一人別の女性の声が聞こえた。なぜか男勝りのような口調で。
「看守~、全然いないぞ?」
「...」
看守の口をつぐんだような声がした。
(なんだ? こいつら牢屋に入れられに来たわけじゃないのか?)
そのまま足音はついに俺の牢屋の扉の目の前に来た。
「ん? なんだ? この個室は?」
男勝りの女性が疑問を口にする。
「はっ! 昨今、巷を騒がせていた盗人の牢屋になります」
看守が改まって答える。
(そうでーす、ここで一生を暮らす俺専用のオーダーメイドの個室でーす)
気がおかしくなりつつあったのだろう。開きなおってそんなことを思ってしまった。
すると扉の小窓を開けこちらの様子を覗く女の姿が写った。
赤い瞳に銀髪、髪はきれいに結ばれていてそれに軍帽のようなものをかぶっている。
「へぇ~まだ若いがお前か、この国を含め色んなところで盗みを働いていたっていう大泥棒は」
興味ありげにこちらを見てくる。
こちらはただただ睨むことしかできなかった。
「よし、最後だ。メル、こいつを見てくれ」
「うん、分かった」
すると今度は扉の小窓から黄色い瞳に長い青い髪をしたメルとかいう女がこちらを覗いてきた。
なぜか分からないがメルからは神秘的な雰囲気を感じた。
すると
「手を出して」
扉をはさんで目の前にいるメルは言った。
思わずキョトンとしていると。
「分からない? 手を出して?」
再び催促された。
「お、おう?」
俺は促されるまま扉の小窓から自分の手を伸ばした。
するとなれたような手付き俺の手の手のひらを指でいじくりまわした。少々くすぐったい。
「ん、大丈夫、次に顔を見せてくれる?」
俺は手をその小窓から引っ込めると。
「こうか?」
と少し足を後ろに引き小さい小窓から自分の顔の全体がそのメルとかいう女に見えるようにした。
メルは少し頷いた素振りを見せて俺の顔をじっと見てくる。
(いや、地味に恥ずかしいな)
そんなことを思っていると突然。
「ルミア、ようやく見つけた。この人は絶対大丈夫」
? 大丈夫ってなんだ? なんのことを言っているんだ?
「え? え? 何が大丈ー」
今の言葉の意味を聞こうとすると。
「よし、今回はお前にするか。てかお前しかいない訳だしな。」
ルミアとか言われてた銀髪の軍帽をかぶった女が俺の言葉を叩ききる。
「もう聞いてたと思うが私はルミア、それでこっちがメルだ。これからよろしくな。」
ルミアが自分、その後に隣のメルについて軽く自己紹介する。
「お、おう、俺は――」
「宝田 輝、連合国内の色んな国々で盗みを働きまくった悪党だろ? 噂は嫌でも耳に入ってくる」
俺が自己紹介しようとするとあちらから俺のことを話された。まぁそれぐらい世間で俺は盗人として有名なんだろうな。
「合ってるよ。ところで――」
「待ってください! こいつはようやく捕まえた犯罪者ですよ!」
今度はさっきまで黙っていた看守が俺の言葉を叩ききる。
いや俺にもしゃべらせろ。
「いくらこの国の法令で決められているからってそれは...」
看守がそこまで言ったところでルミアが胸の階級? を表す紋章のようなものを見せながら話す。
「口の聞き方を直した方がいいぞ看守、まぁ私はそんじょそこらの奴らと違ってあまり気にはしないがな。安心しろ、こいつは私がしっかり"面倒"を見るからな」
「はっ! 失礼しました」
看守は丁寧に答えた。
(このルミアってやつなんなんだ? 来たときもそうだったがここの刑務所の看守が敬意を払うぐらいだぞ?)
そう、ここはこの国有数のばかでかい刑務所だ。
さらに言えばこの刑務所の地下は指名手配で捕まるような輩が入るような場所だ。
(胸の紋章を見せていたあたりやはり軍人なのか?)
小窓からルミアの胸の紋章を見るが軍なんかに興味がない俺にはさっぱり分からない。
(それでもあの看守をあの態度にさせるということは相当階級が上なのか?)
結局さっぱり分からない俺はそう結論づけた。
「それじゃ今日はここまでだ。明日にでも書類を持ってくる。行くぞメル」
「うん、分かった」
そうこうしている内に二人が立ち去っていく。
このままじゃ何も分からないまま、俺が何も知らないまま事が進んでしまう。
「おい! お前らは結局なんなんだよ!」
この狭い部屋の中俺は可能な限り叫んだ。
「お前をここから出してやれる唯一の人物...かな?」
ルミアはこちらに振りかえりわずかに微笑んだ。
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