第11話 匍匐 creeping
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第11話です!
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昼食をとりルミアが先に待っているであろう訓練場へと急ぎ足で向かっていく。
やはりルミアが食堂から出ていくときの整備兵たちの目が気になる。
俺という元指名手配犯と同じ部隊で行動しているからだろうか?
ルミアは確かに俺を刑務所から出した張本人だが、俺と変わらず同じようなあんな目を向けられる筋合いはないだろう。
ああいう目を向けられるのは俺だけで良い。
ルミアは今まで軍に従事して1部隊の隊長を上から任せられるぐらいには実力があるのだからあんなことはされてほしくない。
そんなことを考えていたら訓練場にたどり着いたようだ。
中を覗く
ルミアがボルトアクションの銃を持って座っていた。
その銃をルミアがいじり照準を覗きまたいじり、照準を覗きを繰り返す。
照準を覗いているルミアの目はここではないどこか遠くを見ているようだ。
「よう、待たせたな」
俺は訓練場の中へと進んでいく。
声を聞いたルミアが立ち上がる。
「来たか。よし、訓練再開だ」
俺は頷いた。
☆ ☆ ☆ ☆
あれから3時間程経過した。
俺は今。
ルミアに背中に乗られながら地べたを這いずりまわっています。
なんでこうなったかって?
事の発端はほんの少し前――。
「だいぶ上達したじゃないか」
ルミアが俺が射撃した的を見ながら話してくる。
上出来。午前のときにはなかなか当たらなかったあの的にも弾が当たるようになり自分自身も成長を感じていた
「ほんとにお前は呑み込みが早くて助かるよ」
銃を持ったのは今日が初めてのはずなんだがな。こんなに早く慣れてしまうとは。
「全く、自分の才能が怖いぜ」
「ん? なんだ? なんか言ったか?」
おっと声に出ていていたか。聞かれていなくてよかった。
「とにかく、射撃の訓練はここまでだな。1日で的に当てれるんならまぁ良い方だろう」
ルミアからお褒めの言葉をいただく。やっぱり才能あるのはつらいわー。ハハハ。
「まぁ、私の時は2発目にはもう的に当たっていたがな」
......調子のってすいませんでした!
「次はそうだな......ほふくで進めるよう鍛えるか」
「おいおい、ここにきてほふく前進かよ」
銃を打つのから一転して地面に体をつけて進むだけなんて急にハードルが下がったなぁと思っていると。
「ほふくを侮っちゃいかんぞ? 敵に1番見つかりにくい姿勢だし銃撃もかわせる、私たちみたいな隠密で行動する隊では頻繁に行う姿勢でもある」
ルミアはそう言うが実際実感がわかない。
「そうなんだな」
と軽く受け流すが
「お前、ほんとに舐めてると痛い目見るぞ?」
と忠告された。
「は、ハハ。何を言ってんだk...」
「ほら、これ持って見ろ」
と、どこから出したのか円柱状の大きい黒い塊を両手でこちらに投げてきた。
「おわ! っと」
俺はその塊を抱きかかえようとしたが
「うわ! 重っ!!」
そのまま地面へと倒れてしまった。
「おい、いきなり投げんなよ。てか何キロあるんだこれ?」
俺の質問にルミアは口に手を当てて答える。
「そうだな、ざっと50、60キロぐらいか?」
「5、60!? おいおい、いくらなんでも重すぎだろ!?」
俺は抗議しようと声をあげたが
「そうか? 作戦にもよるがこのくらいの重さを背負って何キロも歩くことになる時だって出てくるぞ?」
とルミアは言い放つ。
ハッと察しが良いのか俺は感づく。
「まさか、これを背中に......」
「あぁ、ほふく前進してもらう」
ルミアはすごく良い笑顔でこちらを見てきた。
このドS女が~~~~!!
俺は心の中で叫んだ
☆ ☆ ☆ ☆
「ゼェハァ、ゼェハァ」
背中に重りをのせて砂の地面を這いずりまわってかれこれ何分だ?
もうたくさんの汗が溢れ出てきて砂を濡らしている。俺が通った砂場は色が変わり軌跡となっていた。
「もうへばったのか?」
ルミアが俺の顔を覗き込んでくる。
「い、いや。まだ......だっ!」
と意地で進もうとしたとき気を失いそうになった。
「さすがに一旦止めろ。水を飲め」
俺は素直に頷いてフラフラになりながら立ち上がりルミアからボトルを受け取って中の水を飲み始めた
みるみる喉の渇きが潤っていく。
身体に活気が蘇ってくるような感覚。
気がつくとボトルから液体が出てこなくなっていた。
「ありがとう。助かった」
空のボトルをルミアに返す。
「それで? 実際にやってみてどうだった?」
ルミアはニヤニヤした顔をして尋ねてくる。
「いやぁ~全然余裕だったぜ~」
精一杯余裕そうな態度をとるがまぁ効くわけもなく。
「はいはい、それじゃもう1回やるか?」
「すいません。せめて重りを軽くしてください。お願いします。」
俺は情けないがルミアにそう懇願した。ルミアに優しさがあると信じて。
「そう言われてもなぁ、今の手持ちはその重りだけだし......」
ルミアが俺の横に倒れている重りに目をやる。
あ、どうやら俺はまた苦行を強いられるんですね。
「あ、そうだ」
ルミアが何か閃いたように呟く。
「お、何か思い浮かんだか?」
俺は期待しながらルミアに聞く。
「良い重りがあるぞ?」
「何だ? 教えてくれ」
するとルミアは俺に近づき......
「はっ!」
俺を投げ飛ばした。
空中で回転して俺は地面へとうつ伏せになって倒れる。
「いってぇな。なにすんだy」
と起き上がろうとするとルミアが俺の背中に乗っかってきた。
「あの~ルミアさん?」
俺は背中に乗っかってあぐらをかいているルミアに話しかける。
「ほら、気にせず進め、私が重りだ」
うわ~やっぱりか~。
「いやいや、さすがに進めないって。早く降りてくれ」
俺は降りるよう促したが。
「なに!? お前、私が重いとでもいうのか!」
いや、違うそうじゃない。
「昼飯のときみたいにたくさん食べるには食べるがしっかり体重は40~50キロをキープしてるんだぞ! 最近少し腹が出てきた気がするが......」
最後は少し小さい声で聞こえたが、別に聞きたいことでもない。
「いや、そんなのどうでもいいから早く降りてくれ」
俺は改めて求めるが、言い方が悪かったんだろう。
「んな!? どうでもいい......だと...?」
俺の背中でルミアがプルプルと震える。
(あれ? これヤバイやつ?)
そう思ったのも時すでに遅し。
「このやろう!」
ルミアが俺の背中で立ち上がったかと思うとジャンプして俺の背中を踏みつけた。
「ぎゃ~~!! い"て"え"!!」
さらにルミアはあの重りを俺の方へと投げてきた
50、60キロの重りが俺の背中に勢いよく乗っかってくる。
「グェ!」
今日、俺は学んだ。ルミアに体重の話はしてはいけないと。
その後、夕食を食べに食堂へと向かったがボロボロになった俺を見てメルは心配そうな顔でご飯を大盛りにしてくれた。
「なにがあったかは分かりませんが、頑張ってくださいね」
ありがとうメル。俺はもう少し頑張ってみるよ。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
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