第10話 昼食 lunchtime
第10話です!
どうぞお進みください。
昼食を食べるために訓練を一旦やめて食堂へと向かっていた。
「どうだ? 言ったようにすれば当たるもんだろう?」
ルミアが歩きながら俺の方を見て話してくる。
確かにルミアに言われたようにして俺は初めて的に銃弾を当てることができた。
できたのだが...俺は、あのときのルミアが頭に残っていて今それどころではない。
あのときは深呼吸で落ち着かせることができたが、今はルミアのあの行動が頭に残っていてなんとも落ち着かない。
いくら俺がルミアの性格が苦手と言ってたとしても、あんな風に耳元で囁かれ、胸を背中に押しつけられてなんともならない男はいないだろう?
「あ、あぁそうだな」
「ん? どうした? 腹が減って調子がでないか?」
曖昧に返事をしたがどうやら様子がおかしいように見えてしまったらしい。くっそ! ルミアってほんとにこういうことには勘づきやすいんだな!
「おう! 腹が減っちまってよぉ! ハハ、ハハハ!」
「そ、そうか? まぁ、午後も訓練あるから十分に食べておけ」
少々強引だったが切り抜けることができた。セーフ、セーフ!
そんことしているうちに食堂へとたどり着いた。
(ほら! 飯を食べるんだ、余計なことは考えるな。今からは食のことについてだけ考えるんだ!)
そう自分に言い聞かせて本日の昼飯の献立を見る。
お、どうやら昼は食パンと牛乳とお好みでスープか。
俺はもちろんスープもつけるがな。
(てか食パンか、メルにしては簡素というか物足りないというか。まぁそんなときもあるか)
とか思いながら食堂に入る。
食堂には朝と同じように整備兵であろう人達が数人おり俺とルミアが入るなりこちらに視線を向けてきたかと思うとまた睨みつけてきたが気にせずメルから昼食を受け取りに行った。
「メル、昼食を取りにきたんだが......」
と言いかけたところでやめた。
「? どうかしましたか?」
メルが不思議そうに眺めてくる。
「メル、これは?」
俺はメルに尋ねた。
なんでかって? だってそれは。
厨房にいるメルと俺との間に「食パンにのせるメニュー」と書かれて色々なものが書かれている看板があったからだ。
「今日の昼食は食パンなのでここに書いてあるものを選んでいただけると私が作ってのせてあげます」
なんてことだ。とても楽しそうじゃないか!
俺はメニューに釘付けになった。
目玉焼き、ジャム、ハム......その他にも色々ある。なに!?二つ以上選んでも可だと!?
「これ、ほんとに何でもいいのか? 二つ以上乗せるのも?」
「はい、ここに書いてあるのなら何でも作ります」
俺は悩みに悩んだ末にベーシックな目玉焼きとベーコンの二種類をのせることにした。
「目玉焼きは完熟にしますか? 半熟にしますか?」
「え、そんなこともできるの?」
「はい、できます」
何を当たり前のことをみたいな表情をしてメルは答える。
うーん、素晴らしい対応ですわメル神。
「うーん、どっちも捨てがたいが......今回は完熟で頼む」
(次の食パンのときには半熟にして違いを楽しもう)
俺はそう心に決めた。
頼んでからしばらくすると厨房からメルが料理をしている音が聞こえてきた。聞いているだけで腹が満たされるわくわくするような音だ。
「お待たせしました」
数分すると頼んだ料理を持ったメルが厨房から出てきて俺に渡してくれた。
「おう! ありがとうな!」
俺はメルから昼食を受け取って再び同じテーブルへと座る。
少し待っているとルミアが昼食を持ってこちらへやって来た。
「おう、待たせたな」
ルミアが席に座る。
「早く食べようぜ。てかルミアの昼食すげぇな。」
俺はルミアの昼食に目線を移して話した。
ルミアのパンはたまごからレタスにトマト、さらにはバターだのヒレカツだの、のせれるものをとにかくのせたようなごちゃごちゃしたものだった。てか上が重すぎるせいでパンが潰れて見えねぇ。
「どうだ! これが具材全のせバーガーだ」
とルミアが子供のような誇ったような顔を見せる。
「いや、バーガーじゃないし、それに色々混ざりすぎて不味いんじゃないか?」
「いや、慣れれば意外といけるぞ。それに入ったらみんな同じだろう? だったら食べるだけ食べた方が良いじゃないか」
「これが一回目じゃないのか......。それに、慣れればって最初は合わなかったんじゃねーか。もっと言えば、食べればみんなおんなじってセリフ、料理が下手なやつがよくしゃべるフレーズだぞ。メルも大変だろうなルミアのためにこんなに作んないといけないんだし」
ダメだ突っ込みが疲れる。誰か助けて~。
「その人の言うとおり、パンのときのルミアの料理は作るのに凄い苦労する」
噂をしていたらご本人の登場だ。メルが自分の昼食を持ってルミアの隣の席に座った。
「そんなこと言うなよ~、一回お前らも試してみろ。絶対はまるから」
「「いや、絶対にない」」
俺とメルが口を揃えて言い放つ。
「それじゃあ、いただきまーす!」
「はい、どうぞ」
メルの返しを聞いてから俺は目の前に手を合わせてパンにかぶりついた。
「うん、まだ食べた回数は少ないけど相変わらずうまい!!」
こんなに美味しい目玉焼きとか食べたことない。しっかりと黄身が要望したとおりの完熟となっており、身が引き締まっている、さらに白身も含めてベーコンとも全体的に味がよく絡んでいてほんとにうまい! ベーコンはともかく目玉焼きってこんなに美味く作れるもんなんだなぁと感心する。
。
「やっぱりそう言ってもらえて嬉しい」
メルが昨日と同じように微笑む。
そういうメルは昼食はどんなのだろうと覗いてみる。
メルの食パンはレタスにトマトなど野菜を主にのせてそこにドレッシングをかけたまさにベジタブルな感じだった。
(当たり前だけど全然ルミアよりはマシだわ)
と心で思った。
「メルって案外ベジタリアンなのか?」
俺はメルの食パンを横目で見つつ尋ねる。
「そうですね。魚も肉も大事ですができることなら野菜多めで食べたいです」
魚も肉も大事という言葉でしっかりとバランスよく栄養をとることの重要さが分かっているようだ。
(どこぞのルミアとは違って、な)
と視線をルミアに移すともうすでに皿は空になっておりあの"全のせバーガー"は姿を消していた。
「いや、食うの早いな!」
「お前たちが食べるのが遅いんだよ」
ルミアはつまようじを取り出し口に入れながら話した。
ルミアの腹がどんななのか見てみたいわ。あんなにでかいのをものの一瞬でたいらげたなんて。
「よし、私は先に訓練場に戻ってるぞ。お前も早く食べて訓練の続きだ」
ルミアは立ち上がりそう告げると後片付けをして食堂を出ていった。
少し気になったのは周りの整備兵たちがルミアの方を睨んでいたことだ。
俺みたいな元犯罪者と行動を共にしているからルミアも変な目で見られているのかもしれない。
俺の......せいで......
やめよう。こんな暗い気持ちだと午後からの訓練に支障をきたすからな。
俺は引き続き昼食を食べ進める。
俺とメルが食べ終わったのはほとんど同時だった。
「「ごちそうさまでした」」
「ふふ、お粗末さまでした」
「それじゃ、俺も訓練に戻るわ」
俺は席から立ち上がりメルに話す。
「片付けは私がやりますのでそのまま訓練場に行ってください」
「おう、ありがとな」
「頑張ってくださいね。夕食も作って待ってますから」
メルはそう言って励ましてくれた。
「よっしゃ~! 美味しい飯のため頑張ってくるわ!」
俺は腕を回しながら食堂を出ていった。
少し元気が空回りすぎるかもしれないがさっきの暗い雰囲気よりはマシだろう。
俺は訓練場へと戻って行った。
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